中国が韓国への団体旅行を禁止したことは “有言実行” である

 「中国が韓国への団体旅行を禁止したことは THAAD を配備することへの報復か」と朝日新聞が報じています。

 報復なのですが、特に驚きではないでしょう。なぜなら、過去に「THAAD を韓国に配備すれば、両国関係は一瞬で破壊される」と恫喝していたからです。つまり、中国は “有言実行” をしたに過ぎないのです。

 

 中国の国家旅遊局が2日、北京市内の旅行会社に3月15日以降の韓国への団体旅行を中止するよう口頭で指示を出していたことが旅行業界関係者の話で分かった。中国は、韓国が配備を計画している米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD〈サード〉)に強く反対しており、韓国のロッテグループが土地提供に同意したことへの報復措置とみられる。

 (中略)

 共産党機関紙・人民日報系の国際紙「環球時報」は28日の社説で「頭から血を流させるだけでなく、内臓を傷つけろ」と訴え、旅行業から韓流ドラマ、サムスンの携帯電話や現代自動車まで「全面制裁」を主張していた。

 

 朝日新聞は中国と韓国の両方に配慮する傾向があるため、このニュースはどちらにも肩入れしていない極めてニュートラルな内容となっています。

 中国の強硬な姿勢に驚きと持ったニュアンスで伝える記事になっていますが、これは十分に想定できたことです。なぜなら、中国の目線では「韓国はすでに “属国” という立場にある国」であり、THAAD 配備に反対する中国の立場を蔑ろにすることは決して許されないからです。

 

1:天安門で中国から厚遇を受けた韓国

 「韓国が中国に忠誠を誓った」と判断されたのはパク・クネ大統領が北京を訪問し、シー・ジンピン(習近平)総書記やプーチン大統領と並んだ写真に収まった2015年9月です。

画像:シー・ジンピン(習近平)総書記から手厚い歓迎を受けたパク・クネ大統領

 これにより、韓国は “レッドチーム” の一員と見なされるようになり、中国もそう判断しました。韓国メディアは「アメリカと中国の等距離外交が成功した」と自画自賛していましたが、実態は “コウモリ外交” であり、天秤にかけた両国から “踏み絵” を迫られる結果に陥ったのです。

 

2:駐韓中国大使が2016年2月に「THAAD を配備するな」と警告している

 中国が韓国を自分たちの味方であるかの “踏み絵” を2016年2月の時点で示しています。聯合ニュースが次のように報じているからです。

 韓国の外交部は24日午後、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍への配備問題について、韓中関係が破壊されるとの発言をした邱国洪・駐韓中国大使を呼び、抗議の意を示した。

 邱大使は23日、韓国最大野党、共に民主党の金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員会代表と会談し、THAADの在韓米軍への配備について、「中国は強く反対する」として、「(両国関係が)一瞬にして一つの問題により破壊されかねない」と述べた。

 「THAAD の配備を撤回し、中国の味方であることを示せ」と要求し、「配備した場合、両国関係は一瞬で破壊される」と脅しているのです。

 「北朝鮮からのミサイル攻撃に対処するため」と説明されたところで北京に照準を当てられる可能性があり、能力が高い兵器である以上、中国がナーバスなることは当然です。中国に忠誠を誓っているなら、それを態度・政策で示せと韓国は迫られている状況なのです。

 

3:中国の韓国に対する締め付け策は見習うだけの価値はある

 中国の韓国に対する報復は「大人気ない」と見る人もいるかもしれません。しかし、効果絶大であることは見落としてはならないと言えるでしょう。

 “報復” に出るのであれば、効果がなければ意味がないからです。日本も韓国に対して締め付ける必要がある場合は中国の動きを参考にし、アレンジをすべきと言えるでしょう。

  • 韓国へ行く観光客数を減らす
  • 韓流ドラマ・映画などの放映ハードルを上げる
  • ビザ申請を義務付け、人的交流の流れを弱める
  • 韓国への輸出審査および韓国からの輸入審査を厳格に行う

 上記のことを中国は “嫌がらせ” として行っており、日本も真似る必要がある時は躊躇なく決断を下す必要があります。

 

 韓国への観光客を減らすのは外務省が「渡航情報の危険度を上げること」が効果的です。朝鮮戦争は休戦中なだけであり、渡航の危険はないと判断する方がおかしいと言えるでしょう。

 次に、韓流芸能人が日本市場でコンサートなど興行をする際に発給するビザ申請を厳格にすることです。ビザがなければ、外国人が日本国内で経済活動をすることはできません。「韓国からの出稼ぎ犯罪者が問題となっており、甘い審査はできない」と理由付けすることで制約を科す働きとなるでしょう。

 また、輸出入についても、厳格に審査を行うことは “報復” としての意味合いを持ちます。商品にケチが付くのではなく、商品の納入に遅れが生じる訳ですから、ビジネスとして損害が発生します。「韓国との取引は損失が生じるから割に合わない」と考える企業が増え、取引を敬遠する企業の数が増えるだけでも “報復” として機能していることになるのです。

 

 日本ですら、上述の件については堂々と “報復的な措置” を踏み切ることができるのです。独裁的な色合いが強い中国政府はもっと強行的な手段を採ることも可能であることを忘れてはなりません。

 しかし、中国に恫喝されている韓国に救いの手を差し出す必要性はありません

 なぜなら、韓国はアメリカと中国を天秤にかける二股外交をしており、どちらの国のメンツを立てるのかは韓国が決めることだからです。中国を取るなら、「中国に忠誠を誓った韓国」と日本は二国関係を構築しなければならないのです。

 「韓国が困っているから、日本が助けてあげよう」という甘い考えは日本の国益にならなかったことを思い出さなければなりません。韓国は立派な一人前の国家なのですから、特別対応をする必要はなく、日本とは異なる価値観を持つ隣国の1つとして対等な両国関係を構築するために対応する必要があると言えるでしょう。