“なくてもいい国” である韓国に駐在大使を急いで戻す必要性はない

 パク・クネ大統領が弾劾裁判により罷免されました。

 毎日新聞や朝日新聞は社説で「駐韓大使を任地に戻し、情報収集や新政府とのパイプ作りに当てるべき」と主張していますが、意味のないことでしょう。

 なぜなら、「韓国は “なくてもいい国” である」という意見が世論であるからです。興味深いのはこの主張が日本だけでなく、中国も同様であるという点です。

 

1:内政問題を理由に駐韓大使帰任を求める朝日新聞

 韓国の法律で定められた手続きを経て、パク・クネ大統領は罷免されました。絶対権力を持つ大統領が弾劾されたのは「韓国の民意」が生んだ結果と言えるでしょう。

 ただ、韓国の内政が混乱したタイミングに合わせ、朝日新聞は12日付の社説で次のように主張しています。

 

 日本政府は、いわゆる少女像が釜山の日本総領事館前に設置されたことの対抗措置として、2カ月以上も駐韓大使らを一時帰国させている。だが、韓国ではこれから政治論議が一気に活発化する。大使らを早く任地に戻し、新政権ができるまでの情報収集や対話のパイプづくりに万全を期すべきである。

 「慰安婦像を設置したこと」への対抗措置であるにも関わらず、韓国の内政が混乱していることを理由に韓国の懸念事項を日本政府が解消すべきと訴えているのです。なぜ、日韓両国で合意した事項を守っていない韓国の国内事情に合わせ、日本が譲歩しなければならないのでしょうか。

 

2:朝日新聞の主張に同調する毎日新聞

 毎日新聞も3月11日付の社説で同じように主張しています。

 重要な隣国が激動に見舞われている中、日本の長嶺安政駐韓大使は現場に不在である。慰安婦問題を象徴する少女像の問題で政府が一時帰国させたものだが、ソウルに帰任させる時期ではないか。

 韓国側が自らの責務を果たしていない状況で日本側が歩み寄る必要はありません。また、「駐韓大使が任地にいなくて、日本側に不都合な点が生じているのか」という点を考える必要があります

 問題があるなら、韓国側の代弁者となっている朝日新聞や毎日新聞は具体例を言及し、駐韓大使の早期帰任を求めるでしょう。しかし、具体例を全く示せておらず、世間からは「駐韓大使は任地にいなくても問題ない」と見なされているのです。

 

3:韓国の内政問題で困るのは韓国だけである

 韓国の内政問題で困るのは韓国だけです。日本や中国ではありません。しかし、内政を理由に外交の合意事項を覆そうとすれば、怒りを買うことになります。韓国は THAAD 配備問題で中国の怒りを招き、慰安婦像問題で日本に喧嘩を売ったのです。

 その証拠に、環球時報は2月28日付の社説で韓国のことを次のように切り捨てています。

 它与中国没有陆地边界,既没先进技术也没对我们很重要的资源,对中国的发展来说,它是个“可有可无的国家”。


 (和訳:韓国は中国と陸地で国境を接している訳ではない。我々や中国の経済発展にとって必要な先端技術を持ってはおらず、重要な資源も存在しない。韓国は “なくても何ら困らない国” なのだ。)

 これは環球時報の主張ですが、『中国』を『日本』と入れ替えても論理は成り立つと言えるでしょう。「韓国に配慮を示す必要はない」と世論の多数派が考えた根拠になっていると考えられるからです。

 

4:「韓国に報復するのは大人気ない」と中国に言えないマスコミに存在価値はない

 韓国に寄り添う傾向が強いマスコミは「韓国に対抗措置を採ることは大人気ない」と自制を日本政府に求めています。この意見を示すのであれば、韓国に報復措置を実施している中国にも同じことを述べなければなりません。

 なぜなら、3月2日付の社説で環球時報は韓国に対し、「“良心的中国人” に期待するな」と釘を刺しているのです。

 制裁乐天和韩国已经成为中国社会的主流意见,然而也有一部分人持不同看法,出现这种情况显然是正常的。中国早已是多元社会,几乎围绕每一件大事已难形成高度统一的看法。不过中国社会业已形成对韩制裁的集体决心,关于这一点韩方完全不必再存什么侥幸。


 (和訳:ロッテグループと韓国に制裁を加えることは主流派の意見である。一部は異なる意見を持つが、これは普通のことだ。中国は多様性を持つ社会であり、1つの出来事に対し、単一の見解を持つことなどあり得ないからだ。

 しかし、中国社会は韓国に対し、制裁を科すということで合意に達している。つまり、この問題において韓国が望む意見が入る余地は残されていないのである。)

 日頃から “中国の見解・意見” を伝聞しているマスコミは中国政府の準公式見解である上記の論説も伝えるべきでしょう。世論の多数派が「韓国を甘やかすな」と考え、政府の厳しい対応を支持していることは日本も中国も同じだからです。

 日本政府が韓国に対抗措置を採ることが大人気ないなら、中国の対応も十分に大人気ないことです。それを紙面上で堂々と主張できないのであれば、マスコミの存在価値はないと言えるでしょう。

 

5:駐韓大使の仕事を過大評価するな

 マスコミの一部が「駐韓日本大使の早期帰任」を求めるのは自分たちの仕事が欲しいからでしょう。現地で日本大使が不在であれば、ニュースのネタがなくなってしまうからです。

 “情報収集” のためと主張したところで、外国大使に国の機密事項を漏洩すれば、罰せられることが普通です。オフレコで情報を得たとしても、真偽を確認することが必須であり、裏取りをすることが不可欠です。そのため、「日本大使に語った情報」にどれだけ価値があるかがすべてと言えるでしょう。

 駐韓日本大使がする仕事は駐日韓国大使がする仕事と大差はないのです。

 情報収集であれば、駐日韓国大使に情報を提供させれば済む話です。情報の出所が韓国であることに変わりがないのですから、駐韓日本大使が現地に滞在する必要性はないと言えるでしょう。

 「新政府とのパイプ作り」を主張したところで、反日政権であることに変わりないのです。大使がいた時は『良好な関係』だったのでしょうか。この問いに YES と答え、根拠も提示できないのであれば、世論は対抗措置を採った政権の対応を維持すべきと考えるはずです。

 “なくても何ら問題ない国” である韓国に譲歩する必要もなければ、便宜を図る必要もないのです。そのことを見誤り続ける限り、マスコミの信頼度が回復することはないと言えるのではないでしょうか。