「大洗研究開発センターでの作業員被曝報道」はマスコミが裏付け確認を怠ったデマ報道の典型例だ

 茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで、「燃料保管容器から放射性物質が飛散し、複数の作業員が被曝した」と報じられたニュースはマスコミの裏付け確認が非常に疎かになっていることを示した事例と言えるでしょう。

 なぜなら、被曝したと報じられた5人の肺からプルトニウムは検出されなかった続報で伝えられたからです。確認作業を怠り、速報だけを根拠に社説で批判記事を書いたマスコミこそ、報道体制を見直さなければなりません。

 

 朝日新聞は8日付の社説で「想定外ではすなまい」と猛烈に批難し、毎日新聞は9日付の社説で「安全管理がずさんすぎる」と批判しています。

画像:朝日新聞の社説(6月8日付)

 

 「肺から2万2千ベクレルのプルトニウムが検出された」、「内部被曝としては国内で過去最悪のケース」と報じていますが、これが事実とは異なっていたのです。

 第一報だけを鵜呑みにし、裏付け確認という当たり前のプロセスが十分だったのか疑わしいところです。被曝報道を大々的に報じた左派系メディアこそ、記事の作成プロセスを徹底的に検証する必要があると言えるでしょう。

 

「公式発表を基にした誤報なら、責任を負わなくてない」と過信しているのではないか

 問題なのは「肺から2万2千ベクレルのプルトニウムが検出された」という誤報であることが確認された記事がメディアの中で残されたままになっていることでしょう。

 公式発表の中にあった情報を伝えただけですから、第一報に含まれる内容として適切です。しかし、検査施設が整った環境で再検査が実施されることは確実であり、“確定情報” ではないのです。

 交通事故など現場で行われた簡易検査が正確な診察結果と必ずしも一致する訳ではありません。

 「新たな事実」が追加情報としてアップデートされる可能性が現実にはあるのです。過去に伝えた記事の中で誤りが発覚すれば、速やかに訂正することが最低限の責務です。その認識がマスコミには欠如しているのではないでしょうか。

 

裏付けが不十分な状況で社説を使って批判するほど恥ずかしいことはない

 どのようなテーマの記事であっても、内容の取り扱いには最大限の注意が必要です。マスコミの裏付け作業が甘すぎたとの疑念を抱かざるを得ません。

 通常、専門家に事故が起きた際の対応プロセスの確認を行い、記者会見など追加情報が発表される場において「適切な事故対応が行われたか」の取材を行うはずです。“反原発” のキャンペーンに使える事故が起きたことで、勇み足をしたのではないでしょうか。

 情報を扱うメディアとして、正確性を欠く内容を世に送ることで生じる損害に対する認識が甘すぎます。メディア自身が記事を配信する際のプロセスに問題がないかを再点検しなければなりません。

 

マスコミ発表より、当事者の公式発表の方が有用だ

 発表内容にマスコミが角度を付け加えた記事より、公式リリースの方が有益だと言えるでしょう。今回の報道であれば、日本原子力研究開発機構の公式発表です。

 添付資料付きで発表されているのですから、記者の主観が入り込んだ記事より、有益な情報が含まれていることは一目瞭然です。専門用語が含まれていると、内容を理解することのハードルが上がりますが、基本的な専門用語についてはネットで検索をすることで解説しているサイトを見つけられるはずです。

 あまりに専門的すぎる用語は公式発表で使えませんし、使ったとしても注釈付きとするよう広報が管理していると想定できるからです。

 

 一部の大手マスコミは「ベクレルが過去最大」と騒ぎ、事実確認を蔑ろにしてまで不安を煽り、誤った情報を放置したままになっているのです。これではマスコミに対する信用度は落ちて当然と言えるでしょう。

 日本原子力研究開発機構は「初期測定の方法が適切に行われていたのか?」を確認し、問題があれば測定方法を見直す必要があります

 マスコミは “初期測定は正しく行われた” との前提で第一報を書くことに問題はありませんが、「設備の整った施設での二次検査の結果が発表されるのはいつか?」という視点が抜け落ちていたことを猛省しなければなりません。

 とは言え、反省すらできないことがマスコミの性質なのです。過去の栄光にすがりつくだけなのですから、当事者が発表された公式情報を基に、同業他社で働くプロの見解をネット上で集め、整理する習慣を身につける必要があると言えるのではないでしょうか。