ペッパー、採算取れず赤字で債務超過300億円

 ヒト型ロボット『ペッパー』を開発・販売しているソフトバンク・ロボティクスが業績不振で300億円の債務超過になっていると日経新聞が報じています。

 ソフトバンクは開発企業を買収した立場ですが、売り上げが伸びず、大幅な赤字を計上したことは痛手と言えるでしょう。自社開発が根付いている企業ではないだけに撤退に踏み切る方が現実的にあると思われます。

 

1:債務超過314億円、価値は80億円の減少

 ソフトバンクが公表している2017年3月期の有価証券報告書(PDF)に記載されている「ソフトバンク・ロボティクス」についての項目には以下のものが存在します。

 7 ソフトバンクロボティクス㈱は債務超過会社であり、2017年3月末時点で債務超過額は31,420百万円です。同社は当社から販売支援及び資金援助を受けています。


 (注10) ソフトバンクロボティクス㈱の事業計画を見直した結果、回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、関連する資産の帳簿価額を使用価値3,471百万円まで減額しました。

 

 『ペッパー』の開発・販売を行うのはソフトバンクの子会社である「ソフトバンク・ロボティクス」です。2017年3月の時点でん債務超過は314億2000万円であり、資産の減損消失として80億5100万円を計上し、使用価値は34億7100万円になったと報告されている状況なのです。

 かなり厳しい状況と言えるでしょう。

 

2:販売で苦戦

 新製品の研究・開発で費用がかかるのは当然のこと。それを商品として販売し、売り上げを伸ばすことが業績を安定させるには不可欠です。ただ、『ペッパー』の場合は伸び悩んでいることは明確です。

 業績は開示していないが、東京商工リサーチによると16年3月期の売上高は22億円、最終損益は117億円の赤字。赤字額は前の期の23億円から拡大した。

 タッチパネルで済むプロセスに『ペッパー』を導入するメリットはありません。端末に20万円をかけるより、タッチパネルの端末を設置する方がリーズナブルだからです。また、ネット上で手続きできることについても『ペッパー』からの恩恵は少ないことでしょう。

 「マイクロオフィス社の Office 製品で登場していた “イルカのアシスタント” を有料でも欲しいか」という視点で販売戦略を考える必要があると思われます。

 

3:開発実績がないソフトバンクには苦難が待ち受けている

 ソフトバンクは「法人向けの販売数を伸ばす」、「アプリ、コンテンツなど周辺ビジネスで稼ぐ」としていますが、販売数が伸び悩んでいるなら、根本的な解決策にはなりません。

 「『ペッパー』の購入は費用対効果に見合う」というアピールポイントがなければ、新たに購入する法人は出てこないと思われます。企業のニーズに合致させるためには個別のカスタマイズが不可欠ですが、そこまで面倒を見ないでしょう。

 そうなると、バイトを雇った方が安上がりとなる可能性が高く、『ペッパー』を購入する根拠を見出せなくなるのです。

 また、ソフトバンクは研究・開発費に資金を費やしておらず、完成品を持つ企業を買収してきたケースがほとんどです。本業の携帯電話会社での R&D をケチる企業がロボット開発に資金をつぎ込むとは非常に考えにくいことであり、根本的な方針転換が求められていると言えるのではないでしょうか。