シー・シェパードが南極海での2017年の妨害行為断念を発表も、マスコミは「テロ等準備罪の設立」を断念理由から外して報じる
反捕鯨団体『シー・シェパード』が「南極海で日本が行っている調査捕鯨への妨害行為を2017年は断念する」と発表したことを BBC が伝えています。
恨み節が混じった声明文ですが、このニュースを伝えるマスコミが「テロ等準備罪の施行」に言及していることにほとんど触れていないことは少し異様と言えるでしょう。
1:シー・シェパードが発表した声明文
シー・シェパードは「クジラ戦争は続く」という題名の声明文を発表しています。自らの活動実績を誇り、さらなる寄付を募る目的があると考えられます。
実績はシー・シェパードの支持者らが誇らしげに語ると思われるため、ここでは妨害行為を断念した理由が言及されている部分を抜き出すことにしましょう。
- 日本はシー・シェパードの船舶の動きを衛星を使い、リアルタイムに監視している
→ 物理的なギャップは埋められず、日本の軍事技術に太刀打ちすることはできない - 今年、日本はシー・シェパードの戦術を封じるために『テロ等準備罪』を成立させた
- 日本の捕鯨船は政府からの援助を受け、日本政府は経済大国としての影響力を行使している
- 我々の活動資金は限られている上、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカから敵視されている
4項目に分類できるのですが、『テロ等準備罪』の項目以外は昨年の状況と同じであることが注目点です。
2:『テロ等準備罪』で “シー・シェパードの協力者” が前科者になる
シー・シェパードが妨害活動を断念する理由になったのは「活動資金が底を突きかけている」からだと考えられます。『テロ等準備罪』がなかった昨年までは資金提供をしたところで、リスクはゼロでした。
しかし、現在は違います。日本では『テロ等準備罪』が成立し、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)にも加わりました。
つまり、アメリカの裁判所で「海賊行為」と認定されるような妨害行為を行う組織に資金提供をしてしまうと、TOC 条約に基づき、“国際犯罪組織に資金提供をした個人・団体” として相応の罰を受けることが現実になったのです。
これまでシー・シェパードを支援してきた個人・団体は速やかに距離をとることでしょう。法律は「遡り適用がされないこと」が一般的であり、シー・シェパードのスポンサーにはまだ火の粉を振り払う “最後のチャンス” が残されているからです。
3:犯罪人の身柄引き渡し協定もあり、下手に動けないという事情もある
国際手配をされているポール・ワトソン容疑者はフランスにいます。これまでは身柄引き渡し協定がない状況でしたので、身柄が日本の当局に引き渡される可能性はありませんでした。
しかし、TOC 条約に日本も加盟したことで、今後の妨害活動によっては「逮捕状に基づく身柄の引き渡し」が強く要望されることになるでしょう。
その際、「国際組織犯罪防止条約(TOC条約)に基づき、ポール・ワトソン容疑者の身柄引き渡しを〇〇国政府に要求する」と日本政府が述べるとシー・シェパードのイメージは非常に悪くなるでしょう。加えて、当該国には「他国からテロ行為を働いた人物として名指しされる人物を匿うのか」との批判が出ることは容易に想像できます。
昨今、ヨーロッパではテロに非常にナーバスになっています。この状況下で “余計な火種” を抱えることは歓迎されないでしょう。ポール・ワトソン容疑者には派手に動くと自らの首を締める結果が待っている訳です。
日本国内では『テロ等準備罪』の設立に反対する個人・団体がいましたが、彼らはシー・シェパードのような違法行為を行う団体の活動を支持していたのでしょう。法案が成立したところで、法令やコンプライアンスを遵守する企業で働くほとんどの一般人には大きな変化は起きていないはずです。
『テロ等準備罪』の施行にシー・シェパードが恨み節を述べるのですから、『テロ等準備罪』による逮捕第1号は「日本国内で活動するシー・シェパード関係者」なのかもしれません。
違法行為に手を染める活動家は法律に基づき、粛々と逮捕・起訴を行うべきです。それによって、治安が保たれるのですから世間からの理解も得られることでしょう。日本への嫌がらせが1つ減ったということは『テロ等準備罪』を成立させた意味があったと言えるでしょうか。