「大義が分からない」と主張したところで、現実に起きた問題への対策を怠る免罪符にはならない

 衆議院に “解散の風” が突然吹き始めたことに対し、東京都の小池知事が「大義が分からない」と批判的なコメントを述べたと NHK が伝えています。

 国政復帰への野心が見え隠れする小池都知事にとっては総選挙で自分たちが “1回休み” となるのは不満なのでしょう。ですが、まずは自らの立場で結果を残さなければなりません。築地市場の移転問題を混乱させた責任者が逃げ出すことは決して許されることはではないのです。

 

 東京都の小池知事は、都内で記者団に対し、「何を目的に解散・総選挙をするのか大義がわからず、国民に何を問いかけていくのか私にはわかりにくい。多くのみなさんがそう思うのではないか」と述べました。

 そのうえで、みずからに近い若狭勝衆議院議員が目指す新党について、「しがらみのない政治や大きく改革するというメッセージが伝わればいい。改革ということでは国政と都政とで連携していかないと意味がなく、そういう方々は応援していきたい」と述べ、若狭氏が新党を結成した場合、候補者を支援していく考えを示しました。

 

 どのタイミングで衆議院を解散するかは総理大臣の専権事項です。むしろ、“大義がない” 状況で総選挙が行われるのであれば、野党は歓迎すべきことでしょう。それだけ勝てるチャンスが大きくなるからです。

 衆議院解散に文句を言っているのは、自分たちが負けた時の言い訳を今から述べているようではそもそも話にならないのです。

 

1:都知事としての仕事で結果を速やかに残すべき

 小池都知事の仕事ぶりは “スピード感” があるように見えます。しかし、実際には何も行っておらず、業務遂行のスピードはありません。

 築地市場の移転問題では “何かをやっている” と感じるでしょう。ですが、現実には都知事(と諮問機関)が移転問題を引っ掻き回し、結局は元のプランに戻るという時間の浪費だけが起きているのです。

 物事が動いているように見えるのですから、スピード感はあるように映ります。そのように感じる有権者もいるでしょう。ただ、何も結果を残していないのです。

 移転時期を知事が独断で遅らせた結果、損失は1兆円規模に膨らむことが確実になりました。この状況で、都政に取り組むのではなく、国政に注文を付けている時点で問題と言えるでしょう。

 

2:小池・国政新党のアキレス腱は選挙資金がないこと

 早くも不満を口にしている小池都知事ですが、それには理由があります。それは腹心の若狭衆院議員らが立ち上げる予定の新党が選挙資金を持っていないことです。

 解散風が吹くや否や、共産党は寄付を呼びかけました。『小池・国政新党』も同じ状況と言えるでしょう。

画像:共産党の機関紙『赤旗』のツイート

 つまり、選挙区や比例区で候補を擁立するための供託金を用意する必要があるのです。かなりのまとまった額を準備できなければ、政党として存在感を発揮することはできません。

 資金を立候補希望者に用意させるという方法もありますが、これでは『大阪維新の会』が設立時に問題となった “政治家として質の悪すぎる人物” が混ざるリスクがあります。この点に対し、どう折り合いを付けるかがポイントになるでしょう。

 

3:「大義がない」とどれだけ叫んでも、解散なら総選挙。北のミサイルも同じ

 安倍首相が衆議院の解散に踏み切る意向を固めたとマスコミが伝えたことに対し、「大義がない」と野党やメディアが批判を始めています。

 しかし、これはすべてブーメランになって自分たちに返ってくる可能性があるのです。この点を見落としていることは致命的と言えるでしょう。

 総理が衆議院の解散を決定すれば、総選挙が行われます。「大義がない」と主張すれば、総選挙を阻止できる訳ではないのです。これと同じことは北朝鮮情勢にも言えます。

 日本が「大義がない」と主張すれば、北朝鮮はミサイル発射や核開発を止めるでしょうか。「日本の主張する “大義” など我々(=北朝鮮)の知ったことではない」と一蹴されることでしょう。

 つまり、必要となるのは現実に起きる可能性のある問題への対応策を持っているかが評価基準となるのです。衆院解散なら総選挙の準備ができていたか、北朝鮮情勢なら国防・安全保証の準備ができていたかが問われるのです。

 

 「大義がない、分からない」、「国民に理解されるのか」という主張は政治家が準備を怠ってきた際の免罪符にはならないのです。このことを理解していなければなりません。

 国政復帰への野心を隠そうとしない小池都知事の場合、このような見解を示すことは論外です。政治家は結果責任で評価されるのですから、結果を出すための準備は常にしておく必要があるのです。それでなくとも、東京都が抱える問題を解決に向けて迅速に動いていないのですから、都知事としての資質を問われるべきものでしょう。

 政治は結果で評価されることを念頭に置き、「大義がない」などと安易に口にすべきではありません。本当に大義がないのであれば、オウンゴールで得をするのは自分たちだということを知っておく必要があると言えるのではないでしょうか。