フィリピンで “ISを支持する武装勢力” との戦闘が終結、今後は治安維持と復興が課題に

 NHK によりますと、フィリピン南部のミンダナオ島で続いてきたフィリピン政府とISを支持するイスラム武装勢力との戦闘が終結したとのことです。

 フィリピン政府が完全制圧を宣言したこともあり、事態は転換点を迎えたと言えるでしょう。今後は「治安維持」と「戦災からの復興」に重点が置かれることになるはずです。

 

 フィリピン南部ミンダナオ島の都市マラウィでは、ことし5月以降、政府軍がISを支持する地元のイスラム武装勢力の大規模な掃討作戦に乗り出し、今月に入って、現地のイスラム過激派組織の最高幹部らを殺害するなど、攻勢を強めていました。

 5か月間にわたる戦闘について、フィリピンのロレンザーナ国防相は23日、武装勢力側を完全に制圧したとして終結を宣言しました。

 これによって、フィリピンでISを支持するイスラム武装勢力の1つがほぼ壊滅しましたが、ミンダナオ島にはほかにもISに忠誠を誓う武装グループが複数存在し、軍は今後も掃討作戦を進めていくことにしています。

 

 

1:“ISを支持するイスラム武装勢力” の残党に対する掃討作戦が最優先課題

 戦闘は終息宣言を出した政府側の勝利で終わりました。親ISのイスラム武装勢力には戦闘を続ける体力は現時点で失っていると言えるはずです。

 そのため、“ISを支持するイスラム武装勢力” の残党やシンパに対する掃討作戦に比重を移すことが求められることとなります。

 この部分を放置すると、IS支持を明確にする集団が勢力を復活させることを容認することに直結します。したがって、掃討作戦を最優先課題に位置づける必要がありますし、厳戒令の発令が続くことは止むを得ないことなのです。

 

2:「戦災の復興」において、現地のイスラム教徒と歩調を合わせられるか

 難しいのは「復興」の方です。なぜなら、複数の課題が横たわっているため、復興の方向性を決めるだけでも困難が伴うと考えられるからです。

  1. 戦闘で被災したマラウィの街を復興するための予算を確保
  2. イスラム系住民による自治政府設立に向けた道筋の策定
  3. 治安維持活動の継続

 復興予算は「過激派が再び台頭することを防ぐため」という名目で先進国に呼びかければ、インフラを整えるために必要な額は提供してくれる可能性があると言えるでしょう。

 ただ、フィリピン政府は “国内最大のイスラム武装組織” である『モロ・イスラム戦線』と「イスラム系住民を中心に自治政府を設立する」ことで合意しています。こちらの公約も実行に移す必要があるため、方向性を一致させ、上手く政権運営および経済発展をさせるという難しいミッションがあるのです。

 この点は未知数で見通しも立っていないことから、今後の行方に注目する必要があると言えるでしょう。

 

3:厳戒令が解除されるのは治安情勢が十分に安定してからである

 一部の人権団体は「厳戒令が発令され続けていること」を懸念する声明を出すことでしょう。しかし、戦闘が行われていた地域で厳戒令が出ることは当然ですし、終結した後もしばらくは継続されるものです。

 例えば、フランスではテロが起きた際に頻繁に厳戒令が出されています。数ヶ月から半年単位で発令されたままになっていることもあるのですが、人権団体は「市民への弾圧につながる」とフランス政府の対応に苦言を呈しているでしょうか。していなければ、政治的なパフォーマンスに過ぎないと言えるでしょう。

 もし、「厳戒令に頼らず、良好な治安情勢を維持できる」と主張するのであれば、「自分たちに実証させてくれ」と立候補すれば良いのです。

 戦火に巻き込まれるリスクがほぼゼロの安全地帯から “市民への弾圧” を懸念したところで、現地住民や当事者は誰も相手にしないことでしょう。行動し、そして結果で示すことができなければ支持が広がることはないと自覚しなければなりません。

 

 日本政府は南の隣国であるフィリピン政府に何らかの形で支援の手を差し伸べる必要があると言えるでしょう。マスコミは「どういった支援が両国間にとってのベストであるか」を取材を通して報じる必要があると言えるのではないでしょうか。