厚労省が「難民受け入れ施設内での感染症発生」を想定した対策を検討し始めたことは評価されるべき

 難民が保護された施設で感染症が発生するというケースがヨーロッパで発生しています。

 これは国ごとに衛生管理が異なるため、知らずに感染症のキャリアになるケースがあるからです。NHK によりますと、朝鮮半島で有事が起きた際に発生した難民による感染症の拡大を防ぐための対策を厚生労働省が検討が始めたとのことです。

 この動きは評価されるべきと言えるでしょう。

 

 北朝鮮が核・ミサイル開発を進める中、厚生労働省は、万が一有事が起きて大量の難民が日本にやってきた場合に、保護した施設などで感染症が発生するおそれがあるとして、専門家による研究班を初めて立ち上げ、対策を検討することになりました。

 (中略)

 研究班は感染症に詳しい医師や保健所の職員などがメンバーとなり、北朝鮮から数万人の難民が日本にやって来るという想定で、受け入れ施設で実施すべき予防接種の種類や、あらかじめ準備すべき医薬品や医療機器の量などを検討します。

 

 感染症の蔓延を防ぐには『予防』が最も効果的と言えるでしょう。しかし、効果的なものにするためには事前の想定が不可欠です。

 準備ができていない状況では防げる感染症も防げなくなってしまうのです。どのぐらいの医薬品や機器が必要になるかを見積もり、予算を出しておくことは重要であると言えるはずです。

 

1:日本では当たり前の予防接種をしていない人が難民として大量に押し寄せる

 厚労省が対策を検討し始めたのは「難民受け入れ施設で実施すべき予防接種の種類や事前に準備すべき医薬品や医療機器の量」です。

 これは国ごとに予防接種を実施する項目が異なっていることが想定されるため、日本国内では蔓延していない感染症の病原菌を難民が持ち込むリスクが考えられるからです。そのため、受け入れ早期の段階で必要となる予防接種を実施する必要があるのです。

 「数万人がやって来た」と仮定し、その場合に必要となる医薬品や医療機器の量を事前に概算しておくことは重要なことだと言えるでしょう。

 

2:必要となる医薬品および機器の量を算出すれば、予算も明らかになる

 日本国内に難民が起因する感染症が蔓延することを防ぐために必要となる医薬品・医療機器の量を求めることができれば、そのために必要となる予算も明らかになります。

 “難民受け入れ派” は無条件に難民を受け入れることを主張していますが、実際には予算や人的資源を費やすことが必須なのです。受け入れ施設で感染症が蔓延することを防ぐためにどれだけのコストが必要になるかを透明化しておくことは重要です。

 なぜなら、「難民受け入れの初期コスト」が明確になるからです。「難民は受け入れるべきだ」と主張するのであれば、そのために必要となる予算を世間一般に説明した上で “お願い” することが筋と言えるでしょう。

 キレイゴトでは通用しない現実が存在しているのです。

 

3:医薬品および医療機器は備蓄しておき、期限を迎える前に途上国に無償譲渡すべきだ

 朝鮮半島情勢で難民が発生することが現実に起こり得ることと考えると、感染症対策に必要となる医薬品と医療機器は備蓄しておくべきと言えるでしょう。

 数万人と想定される難民全員分を備蓄しておく必要はありません。医薬品メーカーが増産することで賄えますので、半分程度は備蓄しておきたいところです。

 ただ、医薬品にも使用期限があるため、使用期限を迎えた医薬品はゴミとなってしまいます。この点を踏まえて備蓄量をコントロールする必要があるでしょう。

 対策としては「感染症の予防接種に利用する医薬品は使用期限を迎える1年前に途上国に譲渡する」ことが効果的でしょう。四半期に1度ほどのペースで、医薬品を必要としている国に格安または無償で譲渡し、日本国内で備蓄している分を入れ替え続けるべきなのです。

 そうすることで途上国の衛生状態を向上させることに寄与できますし、両国間関係も良好になることが期待できます。厚労省の検討報告を踏まえ、適切な運用体系の構築まで議論が進んで欲しい案件と言えるのではないでしょうか。