アメリカ・トランプ政権が法人税率を 21% に引き下げ、経済が上向くかが注目点である

 アメリカのトランプ政権が法人税率を大幅に引き下げる法案を成立させたと NHK が伝えています。

 減税政策であることから、政府の財政赤字が拡大するとの指摘があります。ただ、「予算支出を削減する」という手段が政権側には残されているため、アメリカ経済にどういった影響が現れるかが注目点と言えるでしょう。

 

 トランプ大統領がレーガン政権以来およそ30年ぶりの大規模な税制改革と訴える法案には、法人税率を今の35%から21%に引き下げることや、個人の所得税の最高税率を39.6%から37%に引き下げること、それに医療保険制度、いわゆるオバマケアを一部見直すことなどが盛り込まれています。

 法案は20日、上下両院で賛成多数で可決され、トランプ大統領の署名を経て成立することになりました。

 

 企業や給与所得を得ている労働者は「トランプ政権が成立させた減税政策」の恩恵を享受することになるでしょう。

 「儲けすぎ」との批判を受けるリスクを緩和するために、ウェルス・ファーゴや AT&T は還元策に乗り出しています。こうしたプラスの動きと財政面での懸念というマイナス面がアメリカ経済にどのような影響を与えるのかが注目点となるはずです。

 

1:懸念される財政赤字は予算支出のカットが対策となるだろう

 法人税率の引き下げに反対や懸念を表明する主な理由は「財政赤字の拡大」です。支出分が同じで税収分が減少すれば、赤字額が大きくなることから懸念する声が出ているのです。

 「予算が足りないのであれば、支出を断念する」という発想がないから、そうした考えに行くつくのでしょう。予算として1度でも成立すると、カットすることは実質的に不可能になる “聖域化” が行われていることが財政赤字を拡大する原因になっている可能性が高いと考えられるからです。

 例えば、軍事費です。

 アメリカは「アメリカを除く世界各国の全軍事費」を上回る軍事費を計上しています。世界中に軍隊を駐留していることが理由の1つですが、他国が軍事費用をアメリカに負担させているという現状もあるのです。

 NATO では GDP 比 2% の軍事費を負担するルールですが、ドイツを筆頭にほとんどの国が本来の負担額を拠出することに難色を示していたのです。こうした “アメリカにとって割に合わない支出” に厳しい対応が採られることで「支出分の削減」が進むことになるでしょう。

 

2:“行き過ぎた社会保障” も削減対象となり、批判への反論も用意されている

 また、“行き過ぎた社会保障” にもメスが入れられることになるでしょう。具体的には「不法滞在者をドリーマーと呼び、擁護する地方行政への補助金削減」という形で現れることが予想されます。

 この動きには「人道的に問題がある」とリベラル界隈から批判が起きると思われます。

 しかし、「法人税や所得税の税率が引き下げられているのだから、支持者が減税にとって得た恩恵分から負担すれば良い」との反論を招くことになるでしょう。

 この反論を受けてしまうと、リベラルは再反論できないのではないでしょうか。「減税分をどう使うか」は個人の自由です。これを「ドリーマーたちの支援に回せ」と強制することは多様性を重んじるリベラル本来の姿勢とは相反するものになってしまうからです。

 

3:増税に踏み切ると有権者の怒りを買うというオマケ付き

 減税に踏み切ったのであれば、「支出の見直し」をセットで行うべきです。そうしなければ、税収の減少分がそのまま財政赤字として積み重なることになるからです。

 財政赤字が拡大し、増税へと舵を切る。この判断をした政党は有権者から怒りを買うことでしょう。また、「増税するのであれば、社会的弱者への配慮が必要だ」と主張し、補助金などの支援を行政に要求する左派が騒ぐことも想定されるため、結果的に社会全体の負担が大きくなるという問題点もあるのです。

 企業の経営環境が良くなれば、収益性が増しますし、仕事も増えるでしょう。これは雇用が増えることにも深く関係していますし、給与という点でも労働者に恩恵が現れることを意味しています。

 アメリカという “特殊な超大国” が舵を切った法人税率の引き下げという減税政策が経済にどういった影響をもたらすかを分析し、日本の経済政策に反映させる必要があると言えるのではないでしょうか。