『一般入札偏重主義』が年金支給漏れや情報漏洩が生じる要因になっているのではないか

 日本年金機構からデータ入力を委託された『SAY 企画』が中国の業者に再委託をするという問題が起きたと NHK が報じています。

 問題を起こした会社の姿勢が最も批判されるべきですが、価格に重きを置いた『一般競争入札』の弊害が現れた事件とも言えるでしょう。「安物買いの銭失い」という事態に陥っている可能性があるため、委託先の選定方法を見直す必要があると言えるはずです。

 

 日本年金機構からデータ入力を委託された東京の会社が、契約に違反して、およそ500万人分の情報を中国の業者に渡し入力を任せていた問題。20日午後会見した日本年金機構は、1月上旬に事態を把握したものの契約を見直さず、委託を続けていたことを明らかにしました。

 公的年金をめぐっては、日本年金機構からデータ入力を委託された東京の情報処理会社が、契約に違反して、およそ500万人分の情報を中国の業者に渡して入力を任せていたうえに、この会社がデータの入力を怠ったため、先月、本来よりも少ない額の年金しか受け取れないケースが相次ぎました。

 「再委託を行わない」という契約に違反した点についてのペナルティーを科す必要があると言えるでしょう。

 「最初から(中国などに)再委託をする気だったのではないか」という視点での調査を行って欲しいところですが、捜査権を持たない日本年金機構には難しいと思われます。ただ、現状を放置することは問題であり、対策を講じる必要があると言えるはずです。

 

1:競争入札では「要求水準に達しない業者でも落札が可能」という問題点がある

 行政が発注する仕事は『一般競争入札』で受注先が決定します。

 「公平さを保つ」という点で現実的な決定方式ですが、問題がない訳ではありません。1番の問題は「業務を行う上で要求水準に達していない業者が落札できてしまう」ということでしょう。

 入札資格を持っていれば、「落札後に他企業への丸投げ」ができてしまうのです。年金情報の登録業務では「中国企業に再委託」という形が採られていたことが明るみに出ました。

 おそらく、同様の行為に手を染めている企業は他にも存在するでしょう。『下請けいじめ』にもなる構造ですから、入札条件などを見直す必要があるはずです。

 

2:「随意契約にすると、談合容疑をかけられる」というジレンマ

 受注した企業が別会社に “丸投げ” をすることを防ぐには「入札への参加資格を制限する」などの対策が既に講じられているでしょう。

 ただ、『参加資格』の定義が適切に行われていなければ、問題が生じることになります。「特定の企業に落札させる目的」で『参加資格』が設定されることは談合に該当するからです。

 また、『参加資格』を満たす受注企業が下請けや外注を利用するのであれば、ピンハネをしたことと同じです。それから、“実際に業務を行う企業” が直接入札に参加できるような制度設計に変更し、運用した方が良い入札制度だと言えるはずです。

 現状では、リニア新幹線の建設工事で受注能力を持つゼネコンが情報交換をしたことを理由に談合容疑で逮捕が行われる状況であり、現行制度そのものを見直す必要がある時期に来ていると考えれるからです。

 

 『競争入札』に依存しすぎると、年金情報の漏洩が問題となったように “安かろう悪かろう” の企業が落札するリスクがあります。その結果、「安物買いの銭失い」となるのですから、値段だけで決めるべきではないと言えるでしょう。

 逆に、任意の条件を設定すると発注主が意図的に落札業者を選定できるため、不正の温床が生まれることになります。こちらも大きな問題です。

 “入札を募る事業を行う上で企業に求められる必要な条件” を上手く定義することが現実的な解決策となるでしょう。『有効な先行指標』はない状況なのですから、『先行指標』を設けるために科研費を使った研究で国民のために成果を示す学者が現れるべきだと言えるのではないでしょうか。