暴力団に捜査情報をリークしても、中日新聞上層部の責任が一切問われないマスコミの身勝手さ

 「マスコミが知った情報はすべて公開される」

 この認識を持った上でメディア対応をしなければならない現実が突きつけられました。NHK によりますと、中日新聞の記者が暴力団に警察発表の広報文を流していたとのことです。

 “悪質度” が極めて高いスキャンダルなのですが、同業他社が批判の声をあげていないことは「重篤」と言えるでしょう。

 

 中日新聞によりますと、愛知県警察本部の担当だった30代の男性記者は、暴力団が関係した事件で警察が報道各社に発表した広報文をスマートフォンで撮影し、2年ほど前に取材で知り合った55歳の元組員に複数回にわたって無料通信アプリの「LINE」を使って渡していたということです。

 元組員はことし1月、名古屋市内の喫茶店でプロ野球 中日ドラゴンズの私設応援団に言いがかりをつけて団長などを辞めさせたとして、逮捕、起訴されていますが、記者は事件当日、この店にいたということです。

 渡した広報文は、いずれも別の事件のものでしたが容疑者の名前や住所のほか容疑の概要なども書かれていて、記者は会社に対し、「暴力団取材などの糸口にするためだった」と説明したということです。

 中日新聞記者の行為は懲戒に値するものです。しかし、そうした声を同業他社のマスコミが出ていないことも問題と言えるでしょう。

 明らかに「大きな不祥事」なのですが、他のメディアも同様の行為をしているという自覚を持っているのか沈静化に勤めている有様です。

 

「『容疑の概要』を “容疑者の仲間” が知ること」の意味を新聞記者は知らないのか

 まず、「警察発表の広報文」を暴力団に渡す正当な理由はありません。事件記事を書くために「警察発表の広報文」が不可欠であっても、それを第三者に渡す理由がないからです。

 広報文に書かれた内容を知りたいのは “容疑者の仲間” でしょう。

 なぜなら、一般報道された内容よりも『容疑の概要』を詳しく知ることができれば、証拠隠滅や口裏合わせが容易になるからです。

 中日新聞の記者は「警察発表の広報文」を渡す見返りとして、記事を書くための “ネタ” を(元組員から)得ていたのでしょう。

 この行為は『暴力団密接関係者』と疑われる理由になり得るものです。暴力団の維持・運営に関与している訳ですから、コンプライアンス上の大問題と言えるでしょう。

 

テレ朝の女性記者が「取材で得た情報を第三者に漏洩したこと」よりも問題

 マスコミが業界として “終わっている” 理由は「取材で得た情報を第三者に漏洩する」という『業界の信用を傷つける行為』を批判しないからです。

 民間企業や省庁に対しては厳しい論調で批判するマスコミですが、同業者の不祥事には見て見ぬ振りをしているのです。各社が横並びで軽い対応に終始しているのですから、「何か裏があるのだろう」と読者・視聴者に不信感を抱かせる大きな要因となるのです。

 不祥事を起こした企業や省庁が「普通に謝罪をしただけ」ではマスコミは許さないでしょう。『正義』を掲げ、トップの首を取るための論調で記事を掲載し、攻撃的になるはずです。

 しかし、身内(=マスコミの不祥事)は「再発防止に向けた社員教育を徹底する」とコメントを発表するだけでトップや上層部は何も責任を取らないのです。

 その証拠に、財務省次官(当時)のセクハラ疑惑が持ち上がった際に発覚した「テレビ朝日社内でのセクハラ問題および情報漏洩問題」でテレ朝の上層部は何も対処していません。自浄作用をマスコミに要求したところで能力不足なのですから、効果が現れることを期待しても、徒労に終わることでしょう。

 

「マスコミに渡した情報は目的外利用され、勝手に公表される」との認識で対応を行うべき

 インターネットが一般社会に広く普及したことで誰もが情報発信者になることができるようになりました。それにより、“マスコミのデタラメさ” も周知される結果となっています。

 「マスコミがデタラメなのは昔から」と語る関係者もいますが、一般人にとって重要なのは「“デタラメな姿勢” が目に余るマスコミへの対応をどうするか」という点に尽きるでしょう。

  • 編集権を理由に「取材対象者の発言内容」をマスコミの都合に合わせて改変する
  • 取材で得た情報を第三者に漏洩する
  • 誤報や捏造との指摘は基本的に無視

 このような報道体制が根付いていますし、多くの場合で一般人は泣き寝入りを強いられているのです。

 まず、マスコミは「事実を伝えることより、自分たちが入手した “ネタ” でどれだけ金儲けするか」という点に執着しているという認識を持たなければなりません。

 そのため、対処策は「マスコミに渡す情報は世間に公表できる範囲内に留め、ネット上でも同時に公表しておく」という手法が有効と言えるでしょう。オフレコを無視するマスコミ対策にもなります。“取材対象者の公式見解” が存在していれば、ネット民がファクトチェックに乗り出してくれるでしょう。

 

 マスコミは身内に大甘ですし、外部からの批判など気にもしないでしょう。「取材」という形で協力を要請された際は自衛策を講じた上で最小限のやりとりに留めるという対処が不可欠であると言えるのではないでしょうか。