イタリア:大統領が反 EU の経済大臣就任を拒絶し、政権発足への見通しが悪化

 『5つ星運動』と『同盟』の連立で政権発足に向けた歩みを進めていたイタリアが立ち止まる事態となりました。

 NHK によりますと、新首相に指名されたコンテ氏が提出した閣僚候補に対し、マッタレッラ大統領が拒否権を発動。コンテ氏は組閣を断念したとのことです。

 大統領は「暫定政権の樹立」を指示しましたが、こちらは議会の信任を得られない可能性が極めて高く、政権発足が遠のく事態になったと言えるでしょう。

 

 イタリアで、新たな首相に指名されたジュゼッペ・コンテ氏が提示した閣僚候補が、任命権限を持つ大統領によって拒否されました。

 (中略)

 テレビ演説を行ったマッタレッラ大統領は「イタリアをユーロから離脱させることは、イタリアのためにEUを改革することとは大きく違う」と説明しました。コンテ氏は首相を辞退する意向を示し、イタリアでは再び、政権発足の見通しがたたない事態となっています。

 こうした事態に対し、「五つ星運動」と「同盟」は激しく反発し、議会選挙をやり直すよう求めるなど、イタリアでは政治の混乱が続いています。

 イタリアは新首相候補が閣僚名簿を大統領に提出。大統領から任命されることで政権が発足するという制度が採用されています。

 今回、マッタレッラ大統領は「パオロ・サボナ元産業相を経財相に起用する」という案に拒否権を発動。これにより、コンテ氏は組閣を断念するという決断をしたのです。

 

イタリア大統領は「議員による間接選挙」で選出される

 イタリアの大統領は「上下両院の議員と各州の代表による間接選挙」で選出されます。人気は7年で現大統領のセルジョ・マッタレッラ氏は2015年に選出されています。

 マッタレッラ大統領はレンツィ首相(中道左派・親 EU)の時に選出された大統領なのです。

 “親 EU の立場” を採る大統領が「EU 懐疑派であるパオロ・サボナ氏の経財相就任」に拒否権を発動したと言えるでしょう。ただ、総選挙で勝利したのは『親 EU の政党』ではなく、『EU 懐疑派』であることを忘れてはありません。

 つまり、選挙結果を大統領が否定したのですから、EU 懐疑派が多数派を占める議会が大統領が樹立を促す暫定政権に協力する見通しは極めて低いと言えるでしょう。

 

コッタレッリ氏による暫定政権が予算編成を組むことは絶望的

 マッタレッラ大統領はカルロ・コッタレッリ氏に暫定政権の新首相候補として閣僚名簿を提出するよう指示しました。

 おそらく、親 EU の人選となるでしょう。大統領はコッタレッリ氏が提出した閣僚名簿を承認するでしょうが、『5つ星運動』や『同盟』が過半数以上を抑える議会がコッタレッリ政権を不信任とすることは確実です。

 選挙に勝利した政党による組閣は承認されず、選挙で大きく議席を減らした政党が政権にいた際に選出された大統領の息がかかった政権が樹立されようとしている。イタリアではこのような事態が生じ、政治混乱となっているのです。

 大義名分は「直近の総選挙で勝利した」側が保有していることは明らかです。そのため、暫定政権が予算編成をしようとするほど議会から大きな反発を招く結果となるでしょう。

 

 政治の空白が生じることは国内に大きな影響を与える要因にになります。また、国際化が進んだ現代においては周辺国を含む諸外国にも悪影響が出ることになりますので、ゴタゴタは避けるべきなのです。

 「ゴタゴタ劇」や「政党間の駆け引き」を期待するのはそれを記事にすることで収益を得ているマスコミぐらいです。政治の停滞は経済に影響しやすいことを自覚し、“回転ドア” と揶揄され、首相がコロコロ変わっていた時代の日本政府を反面教師とする必要があると言えるのではないでしょうか。