「受け手に事実を正確に伝達する」という “本来の役割” を忘れたメディアが凋落するのは当然のこと
朝日新聞が「アメリカの地方紙がファンドに買収され、窮状に陥っている」と報じています。
ただ、これは “報道機関に期待されている本来の役割” を地方紙が果たせないことが原因でしょう。それにより、受け手が『本来の役割を担う別の報道機関』を選択した結果、地方紙の経営状況が軒並み悪化の一途を辿ることになったのです。
米国の民主主義を支えてきた地方紙が大きく傷ついている。新聞社の経営を握った投資ファンドが過酷なリストラを強行しているからだ。ジャーナリズムの理念を顧みず、もうけを最大限吸い上げようとの姿勢に反発し、地方紙記者らが自社の惨状を訴え始めた。(デンバー = 鵜飼啓)
まず、読者が報道機関に求めているのは「事実を正確に伝達すること」です。
それができていれば、急激な凋落に見舞われることはありません。ところが、メディア関係者は「権力の監視が役割」と主張しており、受け手側(=読者や視聴者)の要望と乖離が生じている状況です。
これが先進国で起きている既存メディアが凋落する一因となっているのです。
報道の主役は『新聞業界』から『ネット業界』へ
投資ファンドがリストラを敢行する理由は「新聞業界の経営が悪化しているから」です。その根拠はアメリカ労働省・統計局が発表している雇用人数の推移から読み取れるからです。
2001年の時点で、新聞業界に従事する人々の数は40万人を超えていました。それが2016年には17万人台と半分以下に減少しています。
その一方で、ネットやウェブポータル関係に従事する人々は2016年で20万人超。“主役” が完全に入れ替わっているのです。その現実から目を背けるべきではないと言えるでしょう。
「調査報道」は経営に余裕があるメディアによる “娯楽”
メディア関係者は「調査報道」に異常なまでの誇りを持っています。確かに、調査報道はニーズが消滅することがない分野と言えるでしょう。
しかし、経営的にはそれほど重要度は高くありません。「現場で働く記者たりの強烈なエゴを満たすための “ご褒美”」という位置づけ程度のものなのです。
もし、「調査報道」で収益を出せるなら、『調査報道専門のメディア企業』が存在するでしょう。
そうした企業で世間一般に知られる存在は見当たりません。これが現実です。現状は「日々、事実を正確に伝達することで得ていた収益(の一部)を調査報道の費用に回し、一部の記者がそれを使って活動している」のです。
そのため、何らかの理由で歯車が狂い始めると、マスコミ全体に影響が生じることになりました。
「事実を正確に伝えることに興味を持たない新聞」がシェアを落とすのは当然
新聞の読者は「事実が正確に伝えられている」との理由で購読しているのです。「公平・中立的な視点から客観的に情報が整理されているから、講読料を支払っている」に過ぎません。
情報伝達を新聞やテレビといった既存メディアが実質的に独占していた時は偏った内容で報じても、読者・視聴者は離れなかったでしょう。
しかし、インターネットという代替手段が一般化したため、“事実を正確に伝えない新聞” は敬遠されるようになったのです。
インターネットを使えば、報道機関の公式ウェブサイトにアクセスできる訳ですし、専門家が公表している見解を確認することも可能です。しかも、速報性はどこでも同じという強みもあります。“多様性” と “速報性” を併せ持つネットに対抗することは簡単なことではないと言えるでしょう。
「日々、事実を正確に伝え続けている」から、『定期購読収入』と『広告収入』を新聞は手にしているのです。
「事実を正確に伝えること」を疎かにすれば、読者が他媒体に流出し、メディアは収入減に見舞われるのは当然の結果と言えるでしょう。ファンドの買収があるのは「リストラ策で業績回復が可能」と判断されているからでしょう。
買収されるだけまだマシと言えるのではないでしょうか。