ウォーレン・バフェット氏、「大半の新聞は広告費減少で生き残れない」とインタビューに語る

 投資の神様としてメディアに紹介されるウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイの CEO)がヤフー・ファイナンスのインタビューに「大半の新聞は広告費の減少で生き残れない」と述べたとブルームバーグが報じています。

 アメリカ国内での話ですが、日本の新聞各社を取り巻く環境も同じと言えるでしょう。そのため、「広告費減少」への対応策は日本の新聞社も考える必要があると言えるはずです。

 

 The decline of advertising gradually turned the newspaper industry "from monopoly to franchise to competitive," the billionaire chief executive officer of Berkshire Hathaway Inc. said in an interview with Yahoo Finance. And now most newspapers are "toast."

 (中略)

 Readers sought out newspapers when they were packed with ads about bargains, jobs and apartments, Buffett said. But Craigslist and other sites have taken over that role.

 By 2016, the newspaper industry's ad revenue was nearly a third of what it was a decade before, falling to $18 billion from $49 billion, according to Pew Research Center.

 バフェット氏が述べた概要は以下のとおりです。

  • 広告の減少で新聞業界は「独占からフランチャイズに、そして競争に」なった
  • 現在、多くの新聞が “終わっている”
  • 読者はバーゲン・求人・住居の広告を見ていたが、その役割はクレイグリストに取られた
  • 2016年までの10年で広告費が490億ドルから180億ドルに減少

 「広告を出す動機が減少し、それにより業界をして終わった」と言っているのです。この分析は的を得ている部分もありますし、否定することは難しいと言えるはずです。

 

「地方紙は “記事” だけでは勝負できない」という現実

 アメリカは国土が広い上、州ごとにルールが異なります。そのため、全国紙に該当する新聞は USA TODAY ぐらいで、一般紙に位置づけられる新聞は「地方紙」が担っています。

 地方紙に全国ニュースを取材する記者を配置する体力はありませんし、記事の質だけで経営基盤を維持することは不可能です。

 これが通用していた理由は「新聞やテレビしかメディアが存在しなかった」ためです。つまり、情報を独占できる立場にあったため、ビジネスとして成り立っていたのです。

 ところが、インターネットの発達で “新たな情報の伝達経路” ができると、読者が分散します。専門性に特化したサイトが誕生すると、新聞のような「表面的な情報を幅広く伝える媒体」は苦境に立たされることになります。

 新聞広告が出稿されている理由は「新聞の読者が企業にとっての消費者予備軍だから」がほとんどです。その絶対数が減少すれば、広告の質と量が減るのは当然の成り行きと言えるでしょう。

 

スマホで「クーポン発行」や「バイト探し」が当たり前になった日本も状況は同じ

 バフェット氏はクレイグリストのようなサイトが地方紙を苦境に追い込んだと分析しています。日本では馴染みのないクレイグリストですが、アメリカ発の『地域コミュニティーサイト』でバーゲン・求人・住居情報などを取り扱う巨大サイトです。

 日本では “ひとまとめ” になったウェブサイトは存在しませんが、「お得なバーゲン情報」「求人情報」「住宅情報」のそれぞれに特化したサイトは存在します。

 リクルートなどはそうしたサイトの存在をテレビ CM という形で宣伝し続けているのですから、デジタル・ネイティヴに該当する若い世代はインターネットを利用して情報を直接入手することでしょう。

 つまり、新聞はスルーされているのです。新聞業界が凋落するのは自然な成り行きですし、高齢者を対象にした日本の新聞社が以前と同じビジネスモデルで収益を確保し続けることは不可能と言えるのです。

 

国有地を安価で払い下げられた日本の大手新聞社は「不動産収入」で形だけは生き残るだろう

 日本では新聞を含めた出版業界全体が不況に陥っており、記事の内容が高齢化したことで新たな読者を獲得することが困難になっています。

 ただ、日本の大手新聞社は「国有地を安価で払い下げられた」という恩恵を有しており、『不動産収入』という形で何とか延命を図ることはできるでしょう。しかし、現状維持は極めて難しく、人件費の削減は避けられません。

 まずは記者の給与が高すぎますし、電力会社など “一般並み” に引き下げるだけで大幅な経費削減を見込むことができます。その上で、「角度を付けた記事」を書く記者や編集者を排除すべきでしょう。

 偏向記事を平気で世に送り出している新聞社が「公平・中立である」と主張すれば、読者に呆れられます。「マスコミが都合の良い情報を独占的かつ一方的に選り好みをして発信できなくなった」ことを受け入れ、ビジネスモデルを変えることができないメディアが凋落するのは当然です。

 

 “驕り” が強く現れている新聞社が部数減少による経営難に苦しんでいても、誰も助け船を出そうとはしないでしょう。広告の出稿数は「人気投票」です。

 新聞以外の選択肢が誕生すれば、相対的に人気は低下するのです。その現実を直視し、他との差別化に成功することが「最も効果的な生き残り策」と言えるのではないでしょうか。