原子力規制委員会が「テロ対処施設遅延なら運転停止」と決定したことに、“上級国民” の左派メディアが喝采を送る

 原子力規制委員会が「テロ対策用の施設の設置が遅延なら運転停止を命じる」と決めたと NHK が報じています。

 この方針に対し、立憲主義を掲げる界隈から批判の声が出ていないことは致命的と言わざるを得ないでしょう。“後出しじゃんけん” による法の遡り適用だからです。

 また、規制委員会も当初の方針を反故にしていますし、電力会社は委員に対し、民事の損害賠償請求で責任を問う必要があると言えるでしょう。

 

 再稼働している原子力発電所でテロ対策の施設が期限までに設置できない見通しになっていることについて、原子力規制委員会は、期限の延長は認めず、間に合わなかった原発は原則として運転の停止を命じることを決めました。

 (中略)

 更田豊志委員長は「基準を満たしていない状態になった施設の運転を看過することはできない」と述べました。

 また更田委員長は24日の定例会見で「工事に対する見通しが甘かったし、規制当局への出方も甘かった。何とかなると思われたとしたら大間違いだ」と述べ、期限が迫る中で間に合わないと訴え始めた事業者の姿勢を厳しく批判しました。

 

「規制委員会を信じた電力会社がバカ」との態度を鮮明にした更田豊志委員長

 まず、原子力規制委員会が暴走していることは事実です。なぜなら、「原発廃止」に向けた “後出しじゃんけん” を連発しているからです。

 「特重施設(= 特定重大事故等対処施設)の設置が期限内に確認できない場合、どう対応するのか」との質問は規定が作られた当時から寄せられていたことが資料(PDF)から確認できます。

画像:特重施設に係る考え方

 規制委員会の方針は「期限が近づいた頃に事業者に対しその時点の状況を確認した上で、委員会として必要な措置を講じる」でした。ところが、いざ期日が近づくと、規制委員会は態度を180度豹変させたのです。

 個別の進捗状況を確認することもなく、委員会として必要な措置を講じることもなく、「何とかなると思われたとしたら大間違いだ」と委員長が発言したのです。要するに、「規制委員会を信じた電力会社が馬鹿であり、自業自得だ」と言っていることと同じです。

 規制を行う権限を持つ人物として、原子力規制委員会の委員全員が不適格者であることは明らかです。このような規制委員会に国民生活を直撃するエネルギー政策の重要部分を “丸投げ” している安倍政権も同罪と言わざるを得ないでしょう。

 

正直に「期日までに間に合わない」と申告した者を “脅す” とどうなるかを考えなければならない

 次に、「期日までに間に合いそうにない」と正直に申告した者を恫喝することで得られるものはありません。今回の件では「期日に間に合わないなら、こちらが適切な措置を講じる」と事前に宣言しているからです。

 しかし、規制委員会は「期日を守れないなら、処罰を与える」と手のひらを返しました

 そうなると、“期日を守るため” に「過重労働」や「雑な仕事」という形に流れるリスクが急上昇します。これは悪影響を生み出すだけの悪手です。

 「建設を進めているが、間に合いそうにない」との申告なら、申告内容の真偽を確認することが肝心です。その上で、「期日の延期」や「計画の見直し提言」など規制当局による “適切な措置” を採ることが常道です。

 処分を行うのは「建設する気もない」との姿勢が見えた時に限定しなければ、巨額の経済損失を引き起こすだけの馬鹿げた行政規制となってしまうでしょう。

 

燃料が装填されたままで原発の運転を止めたところで、テロ対策には何の意味もない

 原子力発電事業が『国策・民営』であるにもかかわらず、政治が介入に消極的であることが規制委員会の “暴走” を招いています。今回のテロ対策はその典型例と言えるでしょう。

 原発の燃料は装填されたままですから、「テロ事件によって生じる損害」は特重施設の存在の有無に関係ありません。燃料は施設内にあるため、運転を止める意味がないのです。

 また、原発だけ「想定外」が免責されないことは不適切です。この基準を適用するなら、「地下鉄サリン」「9.11」「3.11 の大津波」「ニュージーランドやスリランカのテロ」などの事件・事故はいずれも『想定内』として責任を取らなければならないからです。

 「100% 安全とは言い切れない」、「想定外は許されない」という “言いがかり” が容認されていることが問題なのです。

 環境破壊をいう目に見える実害を放置しておきながら、原子力発電にだけは過剰な規制を遡り適用している実態を批判できない時点で「終わっている」のです。経済に悪影響を与えるだけの規制を平気で原子力規制委員会が行っている状況で是正できないのですから、経済情勢の悪化を避けることは困難と言わざるを得ないでしょう。

 

 電力会社は原発事業が潰されても、火力発電などだけに専念すれば事業存続は可能です。規制当局が暴走する原発は政府から頼まれてもやらないでしょう。

 国会議員は月100万円の文書通信費が支給されているため、電気代の上昇など誤差の範囲です。また、平均年収1000万円超のマスコミにも「電気代の安い原発」を肯定的に捉えるメリットがないのです。

 要するに、反原発運動は “上級国民” による「お遊び」なのです。原発がゼロになって困るのは電力消費者や大量の電力を必要とする製造業などの需要家でしょう。「弱者のため」と発言している政党・政治家・マスコミが口先だけで、行動が伴っていないことを如実に示している事例だと言えるのではないでしょうか。