お家騒動が勃発したヴィッセル神戸、暗黒期の阪神タイガースを彷彿させる迷走ぶりで『バルサ化』が座礁し始める
外国人選手枠が変更となったことで大型補強に踏み切ったヴィッセル神戸ですが、リージョ監督が電撃退任し、“お家騒動” が勃発しています。
きな臭くなり始めたのは「サンペール選手の加入」でしょう。チームが掲げる『バルサ化』には欠かせない選手ですが、ヴィッセル神戸の既存システムにそのまま入れたことによる弊害が強く出てしまう結果となりました。
この点を修正できなかったことが決定的だったと言えるでしょう。
ヴィッセル神戸が抱えている弱点
まず、ヴィッセル神戸はフォーメーション上の弱点を抱えていていました。ヴィッセルは “左サイドの守備陣” が “右サイドの守備陣” と比べて極端に脆弱なのです。
左サイド | 右サイド | |
---|---|---|
MF | A・イニエスタ | 山口 螢 |
アンカー | S・サンペール | |
DF | 初瀬 亮 | 西 大伍 |
大崎 玲央 | ダンクレー |
インサイドハーフ・サイドバック・センターバックの守備力は「すべて右サイドに配置される選手の方が上」です。
これでは対戦相手に「右サイド(= ヴィッセル神戸の左サイド)でカウンターなど攻撃の起点を作って下さい」と言っていることと同じです。この問題を解決できなかったことが守備が崩壊した大きな理由と言えるでしょう。
「極端に弱いサイド」が存在することが問題である理由
ヴィッセルの「極端なまでに守備に弱い左サイド」は問題となります。なぜなら、ヴィッセル神戸は相手を自陣内に押し込むことを目的としたチームだからです。相手を敵陣内に押し込んでハーフコート・ゲームをする狙いを持ったチームは「自分たちが自陣内に戻る・押し込められること」を嫌います。
ところが、現状のヴィッセルは「左サイドの守備力が弱いため、そこで攻撃の起点を作られ、DF ラインが下げられてしまう」という問題が起きているのです。
左 MF のイニエスタ選手は攻撃に比重を置いているため、背後にスペースが発生します。これは獲得時から想定されたことであり、守備のタスクを担う周囲の選手がカバーしなければなりません。
しかし、左サイドバックの初瀬選手は21歳と若く、“潰し屋” としては途上段階です。センターバックの大崎選手は足下の技術はありますが、絶対的なスピードが不足しています。
大崎選手の前(= イニエスタ選手の背後かつサンペール選手の脇)でボールを引き出し、そこから DF の裏にボールを出せば、ヴィッセルの守備陣は下がるしか選択肢がなくなります。そうなると、ヴィッセルのゲームモデルは瓦解してしまうのです。対策を講じる必要があったと言えるでしょう。
『バルサ化』を目指すなら、大崎選手とダンクレー選手のポジションチェンジを試すべきだった
守備の崩壊から “お家騒動” が起きているヴィッセル神戸ですが、「対策」が存在しなかった訳ではありません。イニエスタ選手を右サイドに配置することは非現実です。その一方で「センターバックの左右を入れ替える」という選択肢は可能の範疇と言えるでしょう。
大崎選手を右に配置すれば、右サイドバックの西選手と走力のある山口選手の2人によるカバーを受けられます。大崎選手のスピード不足を隠せるのですから、プラスになるはずです。
左サイドは対人守備に強いダンクレー選手を置くことで初瀬選手(の経験不足)をフォローできます。また、ピンチの芽を事前に摘むことができる可能性が上がるのです。この変更はチャレンジする価値はあったと思われます。
しかし、リージョ監督は修正を加えませんでした。何らかの理由があったと思われますが、この点を質問したメディアも確認できません。「失点」ばかりに目を向け、「失点の原因に対する認識」を指揮官に聞く機会を逃した記者の責任があると言えるでしょう。
不調に陥るたびに外国人助っ人を “人身御供” とし、チーム不振の責任転嫁を図るヴィッセル神戸の姿勢は暗黒期の阪神タイガースを彷彿とさせるものです。熱狂的なファンが多数いるとは言えない状況での対応としては望ましいものではないと言わざるを得ません。
「お笑いネタを提供してくれるクラブが関西にあることは歓迎できる」と言えるにしても、リーグの競争力を今以上に高める必要があるJリーグにとっては資金力のあるクラブが迷走することは避けて欲しいことだと言えるのではないでしょうか。