カルロス・ゴーン被告に「 “資金還流事件の関係者” である妻との接触が制限される」との保釈条件を付くのは当然である
特別背任に問われて追起訴された日産の前会長カルロス・ゴーン被告が4月25日に2度目の保釈がされました。
保釈の条件に「妻のキャロル夫人との接触は原則禁止」というものがあり、これに対してゴーン被告が「残酷で不必要」と批判する声明を出したとテレビ朝日が報じています。
しかし、この保釈条件は当然のものでしょう。なぜなら、ゴーン被告の妻であるキャロル氏は「事件の当事者」だからです。
25日に2度目の保釈となったゴーン被告は、「私のために戦ってくれた家族と世界中の支援者に感謝している」と声明を出しました。また、保釈の条件として妻のキャロル夫人との接触を原則禁止されたことについては「残酷で、不必要だ。私たちは深く愛し合い、妻は裁判で検察側の質問にすべて答え、何も悪い事はしていない」と強く批判しています。
家族との接触を禁じられることは「異例」との印象があるでしょう。しかし、事件の当事者であれば、この条件が付くことは妥当です。
むしろ、家族という枠組みがあれば、有罪・無罪の判断を行う裁判において特別対応を受けられる方が問題なのです。
保釈された被告が “特別背任事件の当事者” との接触を禁じられるのは当然
ゴーン被告が再逮捕された理由は「オマーン・ルートを使った特別背任」です。
刑事事件では検察側に立証責任があります。そのため、検察は基本的に保釈に対しては否定的です。これは「検察が気づいていない決定的な証拠を “保釈された被告” が隠蔽できる可能性があるから」です。
例えば、余罪の隠蔽です。複数の犯罪が芋づる式に発覚すれば、それだけ裁判官の心象は悪くなります。ですが、追起訴される前に証拠を消すことができれば、その件で罪に問われるリスクを回避できるです。
証拠固めをする必要のある側が保釈に消極的なのは当然と言えるでしょう。
ゴーン被告は「日産の資金を私的流用した容疑」がかけられており、妻のキャロル氏は「ゴーン被告が私的流用した資金を受け取った会社の代表」という “事件の当事者” です。自由に接触できる方が問題なのです。
「証拠隠滅の恐れはあるが、保釈を認める」との決定を下した東京地裁の決定は異様
保釈条件に文句を言っているゴーン被告ですが、そもそも「保釈が認められたこと」が異様です。なぜなら、「証拠隠滅の恐れがあるが、保釈請求を認める」との決定を東京地裁が下しているからです。
逮捕・起訴された被告が証拠隠滅の可能性がある状況下で保釈されれば、公判を維持することが困難になるでしょう。
検察が提示した証拠の信憑性を下げることが可能だからです。証拠そのものを隠蔽できますし、関係者と口裏を合わせたり、被害者に圧力をかけることもできます。
これらの懸念事項が起きないなら、保釈は認められるべきです。しかし、その可能性がある・実際に行動として起こしている場合は保釈を認めるべきではありません。
ゴーン被告の場合は「関係者との接触」を平気で行っているのですから、そもそも保釈は認められるべきではないと言わざるを得ないでしょう。
「悪いことをしていない」なら、営業費用として堂々と計上できる
ゴーン被告は「何も悪いことはしていない」と主張しています。しかし、これは詭弁に過ぎません。
「問題ない」のであれば、サウジアラビア・ルートで用いられた送金スキームは使われないでしょう。営業費用として堂々と資金を動かすことができるからです。
ただ、実態はペーパーカンパニーへの迂回ルートでした。法律に触れる認識があるから、正規の送金ルートを使わなかったに過ぎません。正当な支払いなら、仲介者を挟む必要はありません。手数料の支出額が膨らむだけだからです。
送金記録が検察に抑えられていれば、ペーパーカンパニーの代表を勤めていたキャロル氏も特別背任事件の共犯として罪に問われるべきでしょう。“コソ泥” は黙認するのではなく、他の犯罪と同様に厳罰を下す必要があると言えるのではないでしょうか。