「カルロス・ゴーン前会長が自身の結婚披露宴の費用を会社資金から流用していた」とルノーが発表、ゴーン氏の妻の見解を聞きたいところだ

 ルノーがゴーン前会長が在任中の2016年にフランス・ベルサイユ宮殿の敷地内で開かれた自身の結婚披露宴の費用を会社から流用していたことが判明したと発表したと NHK が報じています。

 日産を “私物化” していたゴーン前会長がルノーの資金にも手を付けていたことが発覚したに過ぎません。用心深い性格であるなら、マネーロンダリングの手法を用いて私腹を肥やすという危ない橋を渡ることは自重していたことでしょう。

 

 ゴーン前会長は、ルノーの会長兼CEO=最高経営責任者だった2016年10月、フランスのベルサイユ宮殿の敷地内にあるトリアノン宮殿でキャロル夫人との結婚披露宴を開き、その豪華さで話題になりました。

 これに関連して、ルノーは7日、社内調査の結果、ベルサイユ宮殿側にルノーが支援事業として拠出した資金のうち、5万ユーロ(日本円で625万円)が結婚披露宴の費用としてゴーン前会長の個人的な利益に流用されていたことが分かったと発表しました。

 (中略)

 ルノーは引き続き調査を進めたうえで、司法当局に報告するとしています。

 

フランス政府の対応が後手に回った感は否定できない

 カルロス・ゴーン前会長が金融証券取引法違反で逮捕されてから、日本の捜査当局の手法を批判する声は出ていました。その代表例がフランス政府であり、「人権」を訴える日本の一部リベラル派と言えるでしょう。

 拘留を批判し、「推定無罪」を根拠に擁護する論調もありました。

 しかし、当初から “本丸” は別にあるとの見立てがあり、捜査によって統括会社経由やマネーロンダリングを用いた闇報酬の存在も浮上。日本では報じられなかったものの、フランスの一般庶民からは不満が出ている状況でした。

 その中で、フランス政府はゴーン氏の後任選びを要請。2019年1月末にジャン=ドミニク・スナール氏が新会長に就任し、2月上旬にゴーン前会長の私的流用がルノーから発表されたのです。

 これはルノーの社内調査で「ゴーン会長の不正流用あり」と判明したから、会長交代が起きたのでしょう。新会長就任から2週間も経過していないのですから、新会長による調査指示の結果とは時間的に考えにくいことだからです。

 

資金流用による利益を得ていた立場だったことに光が当たったゴーン氏の妻は見解を表明すべきだ

 また、フランス政府とともに自らの見解を表明すべきなのはゴーン前会長の妻、キャロル・ゴーン氏でしょう。なぜなら、国際人権団体に日本政府に対する圧力をかけるよう書簡を送っていたからです。

 書簡でキャロルさんは、「ヒューマン・ライツ・ウォッチには夫の事件に光を当ててもらい、(中略)公判前勾留と尋問が行われるこの厳格で過酷な司法制度を変えるよう、日本政府に圧力をかけてほしい」と訴えた。

 マスコミはキャロル・ゴーン氏に対し、「事件に光が当たった結果、あなたも私的流用による恩恵を受けていたことが判明したが?」と質問し、見解を表明させるべきでしょう。

 キャロル・ゴーン氏が沈黙を貫こうとすれば、「なぜ答えられないのか」と追い打ちをかけることができます。苦しい生活を強いられているフランスの一般庶民を味方に付ける上でも、自らの権力を背景に不正を働いた人物を批判することはマスコミの責務と言えるはずです。

 

国際人権団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』にも、“踏み絵” を迫るべきだ

 また、『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』には「私的流用で利益を得た人物から『日本政府に圧力をかけて欲しい』との書簡を受けた件にどう対処するのか」と “踏み絵” を迫る必要があります。

 問い詰めるべき内容は「自国民によって定められた法律に基づく法治国家が運用される権利があるか」です。

 キャロル・ゴーン氏が主張しているのは「日本人によって定められた法律に基づく厳格な司法制度の運用下に置かれている “外国人の” ゴーン氏を救うために圧力をかけて欲しい」というものです。

 これは容疑者の立場に関係なく一律に対処するという日本の司法制度を否定する主張です。「西洋人の人権のために日本の権利は制限されるべき」と考えているのかの見解は出させるべきだと言えるでしょう。

 ただ、キャロル・ゴーン氏の立場がシロではなく、クロに限りなく近いグレーであることから、『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』は本件から静かにフェードアウトすることでしょう。火中の栗を拾うだけの価値はないからです。

 

 日産およびルノーの両社において、ゴーン氏の子飼い幹部は一掃へと向かうことでしょう。日産の北米事業で大きな損失を出したにも関わらず、中国事業や CPO に横滑りしていたホセ・ムニョス氏が辞職したことも呼び水となるはずです。

 アライアンスがどのような形で収束するのかは見通しが出ることも少し先になると言えるのではないでしょうか。