訪欧中のトランプ大統領、昨年に続き NATO 加盟国に国防費の倍増を強く要求する

 読売新聞によりますと、NATO 首脳会議に出席するために訪欧中のトランプ大統領が加盟国に対し、「国防費の増額」を強く要求したとのことです。

 これは1年前にも同じことをしており、驚くことはないと言えるでしょう。NATO の事務方はトランプ大統領の要求に理解を示しており、加盟国の首脳や EU のスタンスが問われているだけだからです。

 

 トランプ米大統領は11日、ブリュッセルで開かれている北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、加盟国が国内総生産(GDP)の2%を国防費に充てる共通目標について、4%に倍増するよう求めた。

 (中略)

 NATO加盟国の国防費負担(対GDP比)は、2018年の推定値でトップの米国でも3・50%にすぎず、「4%目標」は極めて高い水準だ。トランプ氏には、18年推定値で1・24%にとどまるドイツなどへの強い不満があるとみられる。

 NATO は “国際的な公共財” という位置づけであり、負担についても公平であることが要求されます。

 活動に要する費用は「加盟国が GDP の 2% を拠出する」と決めたのですから、守ることが必要最低限と言えるでしょう。しかし、ドイツやフランスなど EU で大きな存在感を示している国は 1% 台前半しか負担していないのです。

 これでは絶対値とパーセンテージの両方で最大の拠出国であるアメリカが文句を言うのは当然のことなのです。

 

「対 GDP 比 2% の国防費」を支出することに難色を示し続けるヨーロッパ主要国

 トランプ大統領が掲げた『4% 目標』に引っ張られがちですが、重要なのは「NATO の規約で掲げられた対 GDP 比 2% の目標をほとんどの国が達成していない」という点です。

 これは昨年2月にトランプ大統領が渡欧した際にも指摘されており、EU が「国防費の支出増大」に反対したという経緯があります。

 現状、ヨーロッパの主要国は NATO の制度に “タダ乗り” できているのです。定められた予算額の半分ほどしか拠出せずに済む状態が黙認され、最大の拠出国であるアメリカからの批判もありませんでした。

 ところが、トランプ大統領が「以前に決めた(= 国防費を対 GDP 比で 2% にするという)約束を守れ」と指摘。それにより、オイシイ思いができなくなり、方針転換を余儀なくされただけなのです。

 

EU 主要国に「『4% 目標』は非現実的」と批判する資格はない

 NATO 首脳会談では「2024年までに対 GDP 比で 2%」という具体的な目標が定められました。

 ただ、国防費は “現状で 2% でなければならない” ものなのです。そのため、「目標が達成されるかは不透明である」と言わざるを得ないでしょう。

 会談後にトランプ大統領は『4% 目標』を要求し、ヨーロッパ諸国に対する強い不満を示しています。

 トランプ大統領の指摘に「非現実的な数値目標」と反論したいところですが、2% の目標を達成していない国に反論を行う資格はありません。もし、反論しようものなら、「いつ 2% の目標を達成するのかの期限を明確に示せ」と真正面から批判を受けてしまうからです。

 『公約不履行』という “政治家のとしての失態” を指摘・批判される訳ですから、よほどの厚顔無恥で選挙を気にしない政治家しか言及しないことでしょう。

 

 国防のために費やすべき予算を同盟国に押し付け、浮いた分の予算を別項目に割り当てる姿勢は反感を招いて当然です。EU 主要国のほとんどはそのような行動をしている訳ですから、トランプ大統領が厳しい姿勢で接することになるのです。

 NATO の国防費問題はアメリカ側に何の非もないため、ドイツなどヨーロッパの主要国が誠意を見せなければならないと言えるのではないでしょうか。