マクロン大統領、デモ隊による暴動を沈静化するために「燃料税の引き上げ1年間の凍結」を発表する

 NHK によりますと、フランスで「燃料税の引き上げ」に端を発したデモ活動が活発化し、暴動にまで発展したことを受けたマクロン大統領が「燃料税の引き上げの1年凍結」を表明したとのことです。

 デモ活動などの “反発” を受けて政策転換を行ったのではなく、暴動などでデモ活動が過激化したことによる方針転換は最悪と言えるでしょう。放火や器物損壊に手を染めたデモ隊も、非現実的な政策を推し進めようとしたマクロン大統領も「敗者」と言えるはずです。

 

 フランスでは、マクロン政権が地球温暖化対策として来月から予定していた燃料税の引き上げに抗議するデモが全国に広がりました。とりわけ首都パリでは1日、デモ隊が暴徒化して130人以上がけがをし、観光名所の凱旋門の一部が破壊されるなど、深刻な被害が出ています。

 こうした中、5日夜、テレビ番組に出演したドルジ環境相は、燃料税の引き上げについて、「今晩、マクロン大統領と電話で話し、2019年は引き上げを断念することになった」と述べました。

 マクロン政権の掲げた「環境保護政策(= 燃料税の引き上げによる温室効果ガス削減)」が不評を買うことは事前に分かり切っていたことです。

 労働者の生活を直撃することは明らかだったのですから、その反発を抑えるだけの “見返り” を実質的に何も提示できませんでした。その火種が暴動という形で大きなマイナス面が出たことは大きいと言えるでしょう。

 

『代わりの選択肢』がまだ存在しない状況で「燃料税の引き上げ」は悪手以外の何物でもない

 マクロン大統領が「地球温暖化対策」に乗り出すことは間違いではありません。これは首都パリでは大気汚染が冬の風物詩と化しているからです。

 大気汚染の主な原因は「車両の排気ガス」であることが明らかであり、「車両の使用自粛を促す」という意味では「燃料税の引き上げ」は合理的な政策と言えるでしょう。

 しかし、燃料費が増加することを意味しているのですから、コスト増を回避できる手立てが予め用意されていなければ猛反発を招くことになります。

 「都市部に通勤で車両を使う人」を対象にする形が採用されていれば、黄色のベストを着用する労働者は大きな影響を被らなかったことでしょう。全員が対象となった「燃料税の引き上げ」は間違いと言わざるを得ないでしょう。

 

「デモ活動をする権利」はあるが、暴動が発生した時点で “正当性” は大きく損なわれる

 「燃料税の引き上げ反対」を訴えてデモ活動を起こした労働者も勝者とは言い難い状況です。

 確かに、「燃料税の引き上げ」は一時的に「延期」されました。成果を得たように見えますが、延期であって「撤回」ではないのです。そのため、時間を置いた後で「燃料税の引き上げ」が実施される可能性は残されているのです。

 また、マクロン大統領が掲げる “他の政策” にも反対する群衆がデモ活動に加わったこともあり、暴動にまで発展してしまいました。

 放火や器物損壊まで起きているのですから、「民主的」と呼ぶに値する抗議活動ではありません。無関係な一般市民に損害を与える抗議活動が世間一般から支持されることはない訳ですから、長い目で見れば、マイナス面が大きくなると言えるでしょう。

 

過激なデモ活動に “忖度” して、政策がトップダウンで変更されることは問題

 マクロン大統領のデモ活動への対応にも問題があったことを指摘しておく必要があるでしょう。なぜなら、労働者が「気に入らない政策は過激なデモ活動で撤回させられる」と学習する恐れがあるからです。

 また、それ以上に議会という民主主義の意思決定機構が無視されたことが致命的なのです。

 民主主義は議会を通して政策が承認されることが本流です。しかし、デモ活動に政治が “忖度” する形で政治が動いてしまうと、一部の国民が訴える意見が “非正規ルート” で採用されるという『密室政治』と同じことが起きてしまうことになります。

 これは明らかに由々しき事態と言わざるを得ません。もし、デモ隊が訴えている内容が正しいと考えるのであれば、それを議会で承認することが必須です。反発や批判を避けるためにトップが “配慮” を示すことは民主主義における意思決定方法として問題があると言えるでしょう。

 

フランス・パリでの暴動を称賛する日本共産党は絶望的にセンスがない

 ところが、共産党副委員長・山下芳生参院議員はパリでの暴動を称賛するツイートをしています。

画像:山下芳生参院議員(日本共産党副委員長)のツイート

 「生活と権利を守るために民衆が立ち上がった」と称賛していますが、これは致命的な主張です。なぜなら、デモ隊によって “『生活』と『権利』が損なわれた民衆” の存在を消し去っているからです。

 放火・略奪・器物損壊などの犯罪行為による被害者が発生していたにも関わらず、見て見ぬ振りをして、デモ隊の活動を褒め称えているのです。これは絶望的にセンスがないと言わざるを得ないでしょう。

 「自分たちや支持者が暴動による被害を受けることはない」と確信しているから、犯罪行為を讃えるようなことができるのでしょう。少なくとも、フランス・パリで発生した暴動に理解を示す言動をしている個人や団体は『弱者』の味方になることはないと認識しておく必要があると言えるのではないでしょうか。