「ニュースの序列決定権」という既得権益を手放したくない新聞社がネットの “アルゴリズム” を露骨に敵視する
日経新聞が「アルゴリズムがデモなどの社会の騒動を増幅している」と報じています。
ただ、この記事は “僻み” に過ぎないでしょう。なぜなら、新聞社は “自社のアルゴリズム” に従ってニュースの取捨選択をしてきたからです。ネット上のニュース配信を牛耳れない既存メディアが文句を付けていると言わざるを得ません。
交流サイト(SNS)や検索の画面に優先表示する情報を決める「アルゴリズム」がデモなどの社会の騒動を増幅している。フランスの反マクロン政権デモ、ミャンマーでのイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害といった国際ニュースになった騒動もアルゴリズムが勢いづかせた。
(中略)
世界のネット上の情報量は爆発的に増え続けており、利用者それぞれが望む情報を表示するアルゴリズムの進歩は欠かせない。米欧など世界各国の政府もアルゴリズムそのものの規制には慎重だ。
まずは特定の人々を差別する「ヘイトスピーチ」などを排除しつつ、利用者にネットの抱える負の側面を理解してもらう努力が必要なようだ。
既存メディアが「読者が求める記事」を書くことと同様に、SNS サイトも「ユーザーが求める記事」を配信することが重要になります。ただ、両者には大きな違いがあることは認識しておく必要があるでしょう。
日経新聞が批判する SNS サイトの “アルゴリズム”
日経新聞は SNS サイトで使われている “アルゴリズム” を次の理由で批判しています。
- 「グループの書き込み」や「地元ニュース」の優先表示
- フェイクニュースの流布
- エコーチェンバー現象:同意見を得て、考えがさらに傾斜する
- フィルターバブル:見たくない(≒ 興味のない)情報は遮断
ただ、これらは新聞やテレビといった既存メディアも行っていることであり、SNS サイトなどネットだけが批判される要因にはなり得ません。
新聞の東京本社が “地元” を優先した紙面作りのは当然ですし、大阪本社なら大阪がメインになるでしょう。また、誤報・捏造によるフェイクニュースは既存メディアでも流れるからです。
しかし、『既存メディア』と『SNS サイト』には大きな違いがあることは認識しておく必要があります。
既存メディアは「報道する側」がニュースの優先順位を決めれるが、SNS サイトでは「ユーザーの行動」で決まる
両者は「ニュースの優先順位における決定方法」が大きく異なります。
- 既存メディア(= 新聞やテレビ番組)
- “報道する側” が序列を決定する権限を持つ
- 新聞:一面のトップで扱うニュース
- テレビ:番組の最初に扱うニュース
- SNS サイト(= アルゴリズム)
- “ユーザーの行動” で序列が決められる
- 例:記事へのアスセス数や滞在時間から「重要度」を算出する
新聞やテレビといった既存メディアでは編集者がニュースの重要度を恣意的に決定する形態です。つまり、“メディアが重要と考えるニュース” が「重大ニュース」という(一方的な)位置付けで報じられて来たのです。
要するに、既存メディアは情報伝達経路をすべて抑えていましたので、『編集権』を悪用することで世論を煽ることが可能でした。ところが、インターネットという新たな情報伝達経路ができたことで、独占が崩れることになりました。
しかも、「アルゴリズム」という統計手法を用いてニュースの重要度を決定しているため、既存メディアが恣意的な世論を形成することが困難になったのです。出来の悪いアルゴリズムも存在しますが、それは構成力の乏しい既存メディアのネット版に過ぎません。
個人の嗜好に沿ったニュースが効率的に取捨選択されるサービスが存在するなら、そちらに人気が集まるのは当然と言えるでしょう。
「負の側面」を理解してもらう必要があるのはネットだけではない
既存メディアは「ネットの負の側面」を強調する傾向にありますが、新聞やテレビの抱える負の側面を棚にあげていることに留意する必要があります。
文字数や放送時間を理由に『報じない自由』を行使した上、誤報・捏造の指摘はほとんど黙殺するからです。積極的に誤報や捏造の指摘をするのは「左翼が被害者となった場合」に限られていることが実情です。
こうした既存メディアの “横暴さ” がネットという自由な言論空間で根拠付きで指摘がされているから、メディアへの信頼度が低下し、新聞社では販売部数の凋落に歯止めがかからない状況になっていると言えるでしょう。
情報を発信することのハードルが大きく下がった以上、既存メディアのビジネスモデルでは価値を提供できなくなっているのです。企業変革に乗り出したとしても、効果が出なければ意味がありません。
SNS サイトが特別なことをやっている訳ではないのです。既存メディアが無視してきた「読者や視聴者の声」に沿った形でニュースの優先度を決めて配信しているだけです。むしろ、私企業であるマスコミが恣意的に決めることができていた状況の方がおかしいと言えるのではないでしょうか。