「倒壊防止機能の電源オフ」が原因との見立てが出た淡路島の風車倒壊事故、『全電源喪失による再発』を防ぐ対策は不可避だ

 2018年8月に近畿・四国地方を縦断して大きな被害をもたらした台風20号の影響で、兵庫県・淡路島の発電用風車が倒壊するという事故がありました。

画像:台風20号の影響で倒れた風力発電用の風車(日本テレビより)

 NHK によりますと、倒壊の原因は「倒壊防止機能の電源が切られていたことが要因」とのことです。電源が切られていたことは “人的ミス” ですが、台風時の停電という “不可抗力” でも同じ事故が起きることになります。

 そのため、原発と同様に「電源喪失」を念頭に置いた『再発防止策』が運用されることは不可避だと言えるでしょう。

 

 去年8月の台風20号では兵庫県淡路市の「北淡震災記念公園」にあった高さおよそ40mの発電用の風車が基礎部分から折れて倒れました。

 風車を管理する淡路市が専門家などに依頼し、原因について調査を進めた結果、台風による強風で風車の回転数が限度を超えたために、その力に耐えきれずに倒壊したとみられることがわかりました。

 風車の羽根は強風の場合、倒壊を防ぐために角度を調整するなどして回転数を抑えますが、今回の事故ではその機能が作動しなかったということです。

 この風車はおととしの落雷で故障し発電できなくなっていて、事故の半年以上前に担当者が認識不足から電源を切ったために、倒壊を防ぐ機能が働かなくなっていたということです。

 

事故原因は「人的ミス」だが、「『不可抗力』でも同様の事故は起きる」との認識は必要

 淡路島で発生した発電用風車倒壊事故は「人的ミス」が原因です。ただ、見落としてはならないのは「人的ミスがなかったとしても、同じ事故は起きる可能性がある」という点です。

  • 倒壊防止機能が作動していれば、事故は発生しなかった可能性がある
  • 該当の風車は発電能力を喪失済
  • 淡路島の事故では機能は作動していなかった
    • 理由は「電源が切られていた」ため
    • 停電時は「電源オフ」と同じ状況になるのでは?

 強風時には「風車の回転数を抑えるため」に羽の角度を調整し、『回転数の限界値』に達しないようにします。これをしないと、風力に耐え切れずに風車が倒壊してしまうからです。

 本来は電力を用いて『羽の角度』を調整するのですが、風車への “電力供給” が行われずに限界値を越え、倒壊してしまったのです。そのため、全電源喪失に陥る時間をゼロにすることが風力発電事業者に要求されることだと言えるでしょう。

 

風力発電事業者にも原発と同様に『全電源喪失』に備えた対処策を義務づけるべきだ

 この発電用風車倒壊事故に対する再発防止策は極めてシンプルです。なぜなら、原因が「発電用風車への電源供給の喪失」と明確であることから、対策が自然と定まるからです。

 再発防止策は原発の同様に「全電源喪失時に備えて複数のバックアップ電源を用意すること」になります。

  1. 当該風車で発電する
    → 発電装置が故障するとアウト
  2. 送電線を使い、外部から電力供給を受ける
    → 台風時は送電線が切れて停電する確率が高い
  3. 非常用のディーゼル電源を敷地内に設置

 上述した再発防止策は “現実的な要求” であり、風力発電事業者に「できない」と文句を言う筋合いはありません。「(金銭的な儲けが少なくなるから)できない」という事業者は現れるでしょうが、それは倒壊のリスクを周辺住民に押し付けているだけです。

 そのような輩が主張する「エコ」は単なる「エゴ」に過ぎないと言わざるを得ないでしょう。

 

事業者が『再発防止策』に乗り気でないなら、「倒壊防止機能が働かない場合の耐えられる風速」を明記することを条件とすべきだ

 淡路島で倒壊した発電用風車は「風速60メートルまで耐えられる設計」と説明されていたのですが、実際にはそれを下回る風速で倒れることになりました。つまり、以下のことが言えるでしょう。

  • 倒壊防止機能(要・電源)が働けば、風速60メートルまで耐えられる
  • 倒壊防止機能なしだと、“台風並の風速” で倒壊する恐れあり

 表記されている数値を満たすための “必須条件” があるにも関わらず、そのことを無視することは『不当な表示』に該当するものと言えるでしょう。表示内容を満たす企業努力はされているべきものですが、それが不鮮明な状況なのです。

 「十分な安全体制が採られた上で運用されていること」を証明するのは事業者側の責務であり、要求事項は無理筋なものではないはずです。原発に要求されている『非常用電源の確保』は風力を含む他の発電手法にも求められるべきでしょう。

 淡路島での発電用の風車倒壊事故はこのことを示していると言えるのではないでしょうか。