台風による淡路島での風車倒壊事故、国も有識者とともに事故調査に乗り出す

 読売新聞によりますと、台風20号の影響で倒壊した淡路島の風力発電用風車に対する事故調査を経産省も実施したとのことです。

 原因が特定されない状況では同様の事故が起きる可能性が残された状態が続くことになります。台風21号が似た経路を通過する恐れがあるだけに、設置者だけではなく、国も調査に乗り出す意味は大きいと言えるでしょう。

 

 近畿を縦断した台風20号の強風を受けて北淡震災記念公園(兵庫県淡路市小倉)の風力発電用風車(重さ101トン、支柱の高さ37メートル)が倒れた事故で、経済産業省は31日、有識者とともに現地調査を行った。事故調査は設置者である淡路市が基本的に行うが、風車倒壊という大事故に対する社会的影響などを考慮し、国として速やかに事故状況を把握する必要があるとして実施した。

 (中略)

 経産省の説明によると、この日は事故現場を確認して写真を撮ったり、市などから話を聞いたりして基礎データを収集した。今後は根元部分のコンクリートを東京へ持ち帰るなどして、石原教授、安達名誉教授らと協議しながら事故原因の分析をしていくとしている。

 

「耐えられるはずの風速で倒壊した」という現実

 淡路島で起きた風車倒壊事故ですが、「この日の調査では設計構造上の欠陥は見つからなかった」と読売新聞は報じています。

 これは “現時点での話” であり、結論ではありません。『設計構造』を策定するための前提条件に “抜け” が生じている可能性も残されているのですから、根本的な部分を含めた調査が必要と言えるでしょう。

 「風向きを始め、特定の条件をすべて満たしている場合は風速〇メートルまでは耐えられる」と「いかなる状況でも、風速〇メートルまでは耐えられる」には雲泥の差があるからです。

 

「問題の切り分け」と「原因の究明」には時間を要するだろう

 風力発電用風車が倒壊したという結果は誰の目にも明らかです。ただ、倒壊した原因が究明されるにはある程度の時間を要することになるでしょう。

 なぜなら、「設計構造上、耐えられるはずの風速で倒壊したのか」という問題に対する答えを根拠と共に示さなければならないからです。

  • 設計や構造に問題はなかったのか
    → 前提条件で見落としはなかったのか
  • 設計指示書どおりに建設されていたのか
  • ある程度の経年劣化が起きた現状でも設計値で示された基準を満たしていたか

 設計や建設に問題がなくても、経年劣化は発生します。屋外施設は “野ざらし” なのですから、運用されていない施設ほど劣化が一気に進むリスクがあると言えるでしょう。

 こうした様々な要因を1つずつ洗い出し、淡路島での風車倒壊事故に影響を及ぼしているかを確認していなければならないからです。そのため、倒壊の原因が特定されるまでには一定の時間を要することを理解しなければなりません。

 

『エコ』や『環境』を前面に押し出せば、建設・建築基準が甘くなることはあってはならない

 『エコ』や『環境』という言葉を前面に出すことで、他の建設・建築物より基準が甘くなっている現状があります。特に、太陽光発電のパネル設置がその代表例と言えるでしょう。

 緩い基準を適用すると、設置者は “儲け” を得ることができます。しかし、リスクと損失は設置場所になった周辺住民を中心に被ることになるのです。

 「環境に配慮した〜」という枕詞で語られているとの理由で、規制が骨抜けにされるようなことはあってはなりません。

 一部の活動家が熱心に啓蒙活動をしている状況ですが、そうした界隈が “悪者” として攻撃している業界や施設と同じ基準に基づく規制を再生可能エネ界隈にも設けるべきと言えるでしょう。

 

 今回、淡路島で起きた風力発電用風車の倒壊事故を機に、規制に手心が加えられていないかを確認する必要があると言えるのではないでしょうか。