「領土問題を抱える日露両国が共同経済活動の具現化することで合意」したことが安倍総理訪露の成果

 NHK によりますと、ロシアを訪問していた安倍総理が北方領土での共同経済活動の具体化するための調査団を派遣することでプーチン大統領と合意したとのことです。

画像:北方4島での共同経済活動が前進

 領土問題を抱える両国が武力を背景にした解決策ではなく、経済協力による解決を目指すことは評価されるべき点でしょう。具体化するために前進したことは適切に評価しなければならないことだと言えるはずです。

 

 ロシアを訪れていた安倍総理大臣は、プーチン大統領との日ロ首脳会談で、再び開催への調整が進められている米朝首脳会談の成功に向け、開催を後押ししていくことで一致しました。また、北方四島での共同経済活動の具体化に向けて、ことし夏に事業者を中心とした調査団を派遣することで合意しました。

 経済的な結びつきが強化されることで、両国間の問題が解決されるなら朗報と言えるでしょう。なぜなら、軍事力を背景にした解決策より問題が平和的に解決されると期待できるからです。

 とは言え、「共同で経済活動を実施する」と宣言するだけでは意味がありません。候補となっている5つの事業を実施した場合に期待した効果が得られるかを事前に検証する必要があるからです。

 

北方4島で検討されている共同経済活動プロジェクト

 「北方4島における共同経済活動」として検討されているのは以下の5つであると発表されています。

  1. 海産物の共同増養殖プロジェクト
  2. 温室野菜栽培プロジェクト
  3. 島の特性に応じたツアーの開発
  4. 風力発電の導入
  5. ゴミの減容対策

 “旅行ツアー” 以外の4項目はいずれも『環境アセスメント』が必須です。

 養殖を行うにしても、場所・対象の海産物・物流網の整備などの確認が不可欠です。風力発電にしても、「渡り鳥の飛来ルート」を避けた上で一定の風量が継続してある場所を選定しなければなりません。

 「該当プロジェクトに適した場所」が存在しなければ、「どういう法体系に基づく共同経済活動を行うか」を議論したところで徒労に終わることになってしまうのです。

 

「北朝鮮との早急な対話による合意」を求める界隈ほど、「ロシアとの対話で前のめりになるな」と主張

 日露関係で奇妙なのは『対話重視派』がブレーキを踏むことでしょう。朝日新聞が社説で言及するように、北朝鮮とは『対話による即時妥結』を要求する人々が「ロシアとの対話で前のめりになるな」と要求しているのです。

 これは奇妙なことだと言わざるを得ません。

 「相手が裏切った場合を考慮すべき」と主張するのであれば、その主張の矛先は対北朝鮮に反映すべきです。なぜなら、朝日新聞のような『対話主張派』の希望を北朝鮮はことごとく裏切ってきたからです。

 “盗人に追い銭” をする必要はありませんし、すぐに再チャンスを与える必要もないのです。「北朝鮮の裏切り行為」を反面教師とし、ロシアとの共同経済活動に活かせば良いことです。

 北朝鮮に再チャンスを与えるのはロシアとの北方4島での共同経済活動が落ち着いてからで十分だと考えられます。

 

再生エネ界隈から「ロシアとの共同経済活動には大きなチャンスがある」との声が出ない不思議

 北方4島での共同経済活動で見落とすべきではない点は「風力発電の導入」という再生可能エネルギー界隈にとっての大規模案件が存在していることです。

 新たな発電事業がプロジェクトとして立ち上がることが発表済みですが、どのような法律が適応されるのかは未定です。つまり、風力発電事業者の利益が最も大きくなる法体系が適用されるように陳情できる余地が残されているのです。

 しかし、「北方4島での風力発電は魅力的」との声は聞こえてきません。これでは「風力発電も FIT (全量固定買取制度)に依存している」と言わざるを得ません。

 温室野菜栽培は「温室」を作るために電気または燃料が不可欠なことは明確です。エネルギー源を自給自足できなら、理想的であり、北方4島にはそのチャンスがあることを再エネ業界はもっと強く認識すべきと言えるでしょう。

 

 両者が「『対話』を基に共同経済活動を推進する」と合意しても、成果が生まれるまで時間を要するのです。“前のめり” との指摘は誤りと言えるでしょう。対話で両国関係が良い状態で維持されつつあることは評価すべきと言えるのではないでしょうか。