ヘイトクライムの自作自演容疑で逮捕・起訴された黒人俳優、検察が保釈金と社会奉仕活動を理由に起訴を取り下げる
「白人に襲撃された」との虚偽通報で警察に逮捕されたアメリカ人俳優の起訴を検察が取り下げたと CNN が報じています。
検察が起訴を取り下げた理由は「保釈金の没収と社会奉仕活動を行ったから」としていますが、シカゴ市長は「起訴の取り下げは不当」と批判しています。
犯罪被害を自作自演する人物が出てくると、“本当の犯罪被害者” に支援の手が差し伸べられるリスクが高くなってしまうのです。「売名行為」が黙認される現状は大きな問題と言わざるを得ないでしょう。
スモレットさんは、知人2人に依頼して自分を襲撃させ、警察に虚偽の通報をしたとして2月に逮捕され、16件の重罪で起訴されていた。
シカゴのラーム・エマヌエル市長はCNNの取材に対し、スモレットさんが憎悪犯罪の被害者を演じて自分の俳優としてのキャリアを宣伝しようとしたと主張。有名人でなければ対応は違っていたはずだと述べ、起訴取り下げは不当だと訴えている。
これに対して検察側は、スモレットさんが保釈金を全額没収され、社会奉仕活動も行っていることから、起訴を取り下げることにしたと説明した。
スモレットさんは保釈金1万ドルを没収されることに同意し、23日と25日に計16時間のボランティア活動を行っていた。
「白人に襲われた。自作自演ではない」と主張し続ける精神的な図太さが反発を招く
スモレット氏が自作自演との批判を浴びた理由は「本人の証言」と「事実関係」の間に齟齬があったからです。
- スモレット氏の主張
- シカゴ市内で “白人男性” に人種差別発言された上、暴行を加えられた
- トランプ大統領支持者の発言があった
- 襲撃犯の少なくとも1人は白人だった
- 事実
- 襲撃した犯人はナイジェリア人(= 黒人)の兄弟
- 兄弟の1人はスモレット氏の個人トレーナー
- 兄弟ともにスモレット氏が出演するドラマにエキストラ役としての出演歴がある
- 兄弟はスモレット氏の署名が入った小切手を持っていた
“顔見知りの黒人” に襲撃されたにも関わらず、「白人に襲撃された」と通報したのです。この点は事実と明らかに異なるのですから、当初の主張内容を貫き通そうとすることは逆効果です。
しかも、「自作自演ではない」と主張しているのです。「襲撃犯である知人男性2名への厳罰」を要求している様子が見えない状況では説得力に欠くと言わざるを得ないでしょう。
「保釈金1万ドル」と「2日間のボランティア活動」で売名できるなら、模倣犯が相次ぐだろう
起訴を取り下げた検察ですが、「スモレット氏は無実か」との問いに「そうは思わない」とコメントしています。
要するに、裁判に持ち込むことが「面倒」と判断したのでしょう。著名人の裁判となればメディアが注目しますし、勝つ自信がなければ、検察は不起訴という形で “逃げる” ことが可能です。
街の治安を維持するのは『警察』の仕事であり、『検察』の仕事ではありません。また、治安の責任を市民から問われるのは『市長』ですし、『検察』は「スモレット氏の売名行為」を咎めることで得られるリターンは極めて少ないのです。
ですから、「スモレット氏に重大な犯罪歴がないこと」を理由に “事実上の司法取引” をしたのでしょう。模倣犯が続出したところで「きっかけを作った検察の判断」が批判されることは皆無と考えられるからです。
治安維持を担う立場にある人物が “狼少年” に批判的になるのは当然のこと
シカゴ警察やシカゴ市長が検察の決定に不満を表明しているのは “狼少年” の事例が起きることが容易に想定できるからでしょう。
「自作自演のヘイトクライム被害」の申告が許されるなら、模倣犯が出るのは防ぎようがありません。しかも、ヘイトクライム被害を申告する模倣犯が出るほど、「シカゴのイメージが悪化する」という “余計なおまけ” が付いてくるのです。
また、検察が正当な根拠を示さずに起訴を取り下げたことで、警察がヘイトクライム捜査に消極的になる恐れがあります。これは「無駄骨を折ることになる可能性が高い仕事」を積極的に引き受ける人はいないことが理由です。
それにより、被害を実際に受けた人が通報を躊躇するようにもなるでしょうし、通報者が「自作自演では?」との疑いの目で見られることもなるでしょう。だから、最前線や現場責任者から検察の判断に対する批判が公然と出たのです。
行き過ぎた “ポリコレ” に歯止めをかけるどころか、“お墨付き” を与えるようでは問題は過激化と一途をたどることになるでしょう。事態を重く受け止め、反面教師とする必要があると言えるのではないでしょうか。