法に違反する「演説妨害」を取り締まらない当局に「選挙ヘイトの取り締まり通知」を出す警察庁の姿勢は論外

 共同通信によりますと、参院法務委員会で「選挙運動に名を借りたヘイトスピーチは刑事事件として取り上げるよう通知した」と警察庁が明かしたとのことです。

 『演説の妨害』という法で明記されたケースですら、満足に取り締まれないのです。今回の警察庁からの “通知” は与党系候補などが韓国に対する批判を「ヘイト」と認定し、選挙活動を萎縮させる以外の効果は生まないと言えるでしょう。

 なぜなら、「日本に対するヘイト」が取り締まれるケースは絶望的に低いからです。

 

 警察庁の田中勝也審議官は9日、参院法務委員会で、選挙運動に名を借りたヘイトスピーチに対し、差別発言の中で虚偽の宣伝などがあれば、刑事事件として取り上げるよう各都道府県警に通知したと明らかにした。

 警察庁の通知は3月28日付。警察庁が選挙に特化したヘイト取り締まりの通知を出したのは初めて。

 通知された内容は以下のものとのことです。

  1. 選挙運動だからといって不当な差別的言動の違法性が否定されることはない
  2. 差別的言動の中で虚偽事項の公表や選挙の自由妨害など刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処する
  3. 各地の法務局など関係省庁と連携する

 「刑事事件として訴追されるかも」という “恐怖” で言論を萎縮させる効果はあると言えるでしょう。なぜなら、ヘイトの明確な定義が存在していないため、「ヘイトスピーチだ」と騒ぐことで対象者の社会的地位を陥れることが可能だからです。

 

『福島に対する原発デマ』は「差別的言動かつ虚偽事項の公表」に該当するが、取り締まられたことはない

 警察庁の選挙ヘイトに対する通知が限定的と主張できる根拠は「福島に対する原発デマ」が刑事事件として取り締まられたケースが皆無と言える状況だからです。

 「放射能で汚染され、人が生活することができない土地」など、様々なデマがマスコミを通して現在も発信されています。しかし、刑事事件として発信者が罪に問われたでしょうか。

 そのようなケースは皆無と言わざるを得ません。それどころか、原発デマを流す人物が参院選に出馬する有様なのです。おそらく、該当の人物は参院選の候補者として、演説中に “福島に対する差別的言動” を行い、その中で “虚偽事実の公表” をすると予想されます。

 「子供の体調に異変がじわりと出ている」、「被爆の影響がこれから生まれてくる子供たちに出るかもしれない」とのデマを述べても、現時点では罪に問われていないのです。この状況なのですから、『選挙ヘイト』への通知による効果は期待できないと言わざるを得ないでしょう。

 

公選法225条に違反する演説妨害の取り締まりにさえ極めて消極的な警察に何が期待できるのか

 次に、警察は公職選挙法第225条で保証されている「選挙の自由」を妨害する行為に対する取り締まりに消極的なのです。それが如実に現れたのは2017年夏に行われた東京都議会選のことでしょう。

 安倍首相が自民党候補の応援演説を行った際、一部の集団が「帰れ」などのコールを起こし、「こんな人たちに敗けるわけにはいかない」と演説する一幕がありました。

 演説を妨害する行為は公選法225条で違法と定められており、これは警察が取り締まられなければならない行為です。しかし、マスコミがこの違法行為を行った集団を擁護する論調で足並みを揃えた報道を行ったこともあり、警察は取り締まりを躊躇したのです。

 “解釈の余地が必要のない演説妨害” に対する取り締まりすら満足にできない警察当局が “恣意的な解釈が可能なヘイトスピーチ” を刑事事件として主体的に訴追することなど「無謀な要求」と言わざるを得ないのです。

 

左派系メディアが「選挙ヘイトだ」と騒いだ案件だけが取り締まりの対象になるだろう

 結局、今回の警察庁による『選挙ヘイト』に関する通達は “左派界隈がヘイトと認定して大騒ぎした案件” のみが規制対象となる可能性が大です。

 なぜなら、左派系候補や支持者による選挙期間中の狼藉は野放し状態だからです。したがって、選挙運動の名を借りて「日本に対するヘイトスピーチ」や「福島に対するヘイトスピーチ」を行ったとしても、訴追されるリスクはゼロと言えるでしょう。

 逆に、韓国や在日に対する批判は「ヘイト」と決め付けられ、『選挙ヘイト』と認定される恐れがあります。「外国人が日本の生活保護を受けるのはおかしい」や「なぜ、犯罪歴を持つ在日が国外退去にならないのか」といった演説などがアウトと主張する声が出てくると考えられるからです。

 「韓国にとって都合の悪い批判」を行わせないために『ヘイト』を理由に用いようとしている人物・界隈に忖度するのではなく、まずは演説妨害などの明らかな違法行為を与野党に関係なく、“同じ基準” で取り締まることが警察当局に求められていると言えるのではないでしょうか。