日米首脳会談を踏まえ、安倍首相とイランの最高指導者や大統領との会談が現実味を帯びる

 5月27日に行われた日米首脳会談の結果を踏まえ、安倍首相が来月中旬にイランを訪問する形で最終調整に入っていると NHK が伝えています。

 アメリカとイランの両国間は緊張が高まっていますし、仲介に名乗りを上げることは “日本の国益” にもプラスに作用させることは可能です。ただし、深い入りは禁物です。

 「日本が用意する『対話チャンネル』を活用し、偶発的な衝突による開戦を回避して欲しい」との姿勢で両国に呼びかけることが重要と言えるでしょう。

 

 アメリカのトランプ政権は、イランの脅威が差し迫っていると主張して、これまでに中東に原子力空母や爆撃機の部隊などを派遣したのに対し、反発を強めるイランとの間で緊張が高まっています。

 安倍総理大臣は、27日行われたアメリカのトランプ大統領との日米首脳会談で、日本がイランとの間で伝統的な友好関係を維持していることも踏まえ、仲介役を担う考えを重ねて伝えたのに対し、トランプ大統領は賛同する考えを示し「タイミングは早いほうがよい」と述べたということです。

 これを受けて、安倍総理大臣は来月中旬、イランを訪問し、ロウハニ大統領に加え、イランの最高指導者のハメネイ師とも会談する方向で最終調整に入りました。

 

アメリカとイランは緊張関係が続き、危険な状況にある

 トランプ政権が誕生してから、アメリカとイランの関係は良好ではありません。これはユダヤ系がイランに対する強硬姿勢を要求しており、そうした政策が実行されているため、緊張が極めて高くなっているという理由が存在するからです。

 アメリカは中東に原子力空母や爆撃機部隊を新たに派遣。一方のイランは「ホルムズ海峡の閉鎖も辞さない」と反発を強めています。日本にとって問題なのは「この2カ国が戦闘を始めてしまうと日本にも少なからず影響が出る」という点です。

  • 対イラン戦争で “泥沼” となると、米軍の極東での活動に支障が出る
  • 「ホルムズ海峡の閉鎖」で中東からの原油供給が途絶える

 上述の『最悪の事態』を回避することができるかは重要です。「日本の国益」に大きく影響が出ることは明らかなのですから、イランの指導部と良好な関係にある安倍首相が “仲介” に乗り出すことは重要と言えるでしょう。

 

重要なのは「目標をどこに設定するか」

 仲介の際に重要となるのは「目標設定」です。アメリカとイランによる交渉結果の内容にまで踏み込めば、日本の国益を最大化できるチャンスはあるでしょう。しかし、両国の板挟みになるリスクがあるため、自重する必要があります。

 したがって、「偶発的な衝突による戦争勃発を防ぐための『対話チャンネル』を日本が1つ責任を持って用意する」という方針に留めるべきと言えるでしょう。

 これまでアメリカとイランの仲介役は EU が基本的に担って来ました。ただ、アメリカと EU の関係が好ましくない状況に陥っている以上、別の『対話チャンネル』を準備しておく意味は大いにあります。

 日本とイランの二国間関係は悪くはありません。比較的良好な関係ですから、アメリカとイランの両国が対話による緊張緩和を模索するための舞台を用意する役目は積極的に担う価値はあると言えるはずです。

 

6月下旬に大阪で行われる G20 を前に、イラン情勢を好転させられるかが注目点

 日本の外交日程ですが、6月下旬に大阪で G20 が予定されてます。安倍首相のイラン訪問は6月中旬で日程が組まれるとのことですから、「良い成果を持ち帰れるか」が注目点です。

 1度の会談で「結果」が出ることはないでしょう。それでも、「イランがアメリカとの対話に前向き」と現地で安倍首相が発表できれば、十分な成果となります。

 また、G20 の場で「緊張緩和」を世界に向けて改めて発表することで、アメリカとイランによる偶発的な開戦を遠ざける要因になると期待できます。

 国連総会でイランのロウハニ大統領と会談を毎年続けて来た安倍首相が良い “橋渡し” をすることができるかが注目点と言えるのではないでしょうか。