「電力会社は再エネ FIT 事業者の収益低下を招く出力制御ではなく、収益が確保できる送電網の増強をすべき」と日経新聞が主張する

 日経新聞が「電力会社による出力制御が再生可能エネルギー普及の妨げになっている」との記事を書いています。

 ただ、内容が「再生エネ礼賛」の “提灯記事” となっており、主張は「再生可能エネ業界への我田引水」になっています。「業界が儲けるための送電網整備を大手電力会社が積極的に行うべき」との要求は論外と言わざるを得ないでしょう。

 

 東京電力ホールディングスが再生可能エネルギーなどの新規発電を対象に、千葉県内で出力制御を検討している。1日から発電事業者に検討に着手すると通知するが、事業者には収益低下につながるとの懸念が広がる。

 (中略)

 東京理科大学の橘川武郎教授は「まず送電線を増強し、その過程で出力制御が発生するのは仕方ないことだが、出力制御を前提とする今回のような考え方は疑問だ」と東電の姿勢を批判する。

 送電線の空き不足は九州など需要が少ない地域で再生エネが急拡大した際に表面化した。最近は神奈川から東京などへ送る送電線も容量不足に陥っている。今回の東電の検討は全国に広がりやすい問題だ。

 

送電網は「電力の安定供給のため」であり、「再エネ FIT 事業者のため」にあるのではない

 日経新聞は「まず送電線を増強すべき」と主張する大学教授の声を使っていますが、目的が歪んでいることが問題です。

 なぜなら、送電網は「電力の安定供給」が目的であり、「再生可能エネ事業者の収益を最大化させること」が目的ではないからです。しかし、再生エネ業界は “我田引水” を論調を展開し、メディアも忖度する有様です。

 FIT (= 全量固定買取制度)で「高い買取価格」が設定された発電手法の電力を優先的に供給するメリットがあるのは発電事業者だけです。

 電力消費者は「高い電力料金」を強いられますし、供給義務がある大手電力会社は「再生可能エネ事業者の尻拭い」をさせられているのです。持たなければならない負担を他者に転嫁する再生エネ事業者を持ち上げる主張の記事は論外だと言わざるを得ないでしょう。

 

再生可能エネ事業者が自前で送電線を設置すれば問題は解決される

 再生エネ界隈に批判的な意見が止む気配がないのは「発電事業に必要なコスト負担を他者に転嫁しようとしているから」でしょう。

 送電線の増強要求が典型的です。既存の送電網は大手電力会社が自前の資本で「電力の安定供給」のために整備したもので、再生可能エネルギーの普及のために設計したものではありません。

 そもそも、再生可能エネルギーは FIT を利用して “ぼろ儲け” ができるのです。ただ、そのためには「発電した電気を供給するための送電線が使えること」が大前提です。

 しかし、「FIT 対象電源のために送電線を開けることは既存電力会社にとって何のメリットもない」という現実があります。

 送電線の利用可能容量には限界があることを無視し、送電線の増強費用を担わない再生可能エネの発電事業者が「電力会社が送電網に接続させてくれない」と不満を述べるのは “言いがかり” 以外の何物でもないことを認識しなければなりません。

 

 儲けの確保が保障されている再生可能エネ界隈の “提灯記事” を「弱者の味方」を名乗るメディアが書くことは致命的です。我田引水ぶりは批判の対象となるべきですし、それに忖度するマスコミも同様に批判を向ける必要があると言えるのではないでしょうか。