報道ステーション、朝日新聞が過去に流した「東北電力の送電線には空容量がある」とのデマを放送する
テレビ朝日の『報道ステーション』が12月18日の放送で「送電線には空容量があるのに大手電力会社が接続を拒み、再生エネの普及を阻んでいる」と主張しています。しかし、これは過去に朝日新聞が主張したデマと同じであり、フェイクニュースに基づく偏向報道と言えるでしょう。
■ 『報道ステーション』が報じた内容
『報道ステーション』は12月18日の放送で以下のように報じました。
再生エネの普及に電力会社の壁が立ちふさがっている。電力会社は、送電線の空き容量を公表しているが、軒並み“ゼロ”という数字が並ぶ。空きが全くないということだが、本当に空きがないのか、検証したところ驚く結果となった。
番組では京都大学の安井陽特任教授が「東北電力の送電線は 2〜20% ほどしか使用されていない」と主張。朝日新聞が10月に取り上げた主張を『報道ステーション』も取り上げ、「再生可能エネルギーの普及を大手電力会社が阻害している」と批判したのです。
ですが、この主張は事実を無視した非常に悪質なものなっているため、注意が必要です。
■ 事実
1:日本の送電線は「電力の安定供給」を最優先するために使用されている
まず、日本の電力行政は「電気があることが当たり前」という状態を維持することを最優先としています。その司令塔となっているのが『電力広域的運営推進機関』です。
なお、目的は以下の3点が列挙されています。
- 電力の安定供給の確保
- 電気料金の最大限の抑制
- 電気利用の選択肢や企業の事業機会の拡大
つまり、平時・緊急時を問わず需要と供給のバランスを保つことを最優先課題としているのです。これは「再生可能エネルギーの普及は優先事項ではない」という意味であり、『報道ステーション』や朝日新聞は “出発点” から間違っているのです。
2:「送電線に流せる電気の最大量」から算出した利用率には意味がない
朝日新聞がデマを流した際に指摘したことですが、「送電線に流せる電気の最大量から算出した利用率」には何の意味もありません。なぜなら、送電線には以下の制約条件が存在するからです。
- 熱容量
- 系統安定度:送電線の1回線が故障や変電所の片母線が故障した場合でも、発電機の安定運転の維持ができるか
- 電圧安定性:万一の故障を想定した場合でも、電圧の変動を限度範囲内に維持できるか
- 周波数維持:電力系統が分断されても、それぞれの系統が周波数を維持できるか
制約条件は『一般社団法人・電気共同研究会』が公開(PDF)しています。上記4項目から求められる各限界値のうち、最小の値が “運用容量” (=現実に送電線で送ることができる上限)となるのです。
3:電気を貯めておくことはできないため、需要のピークを前提にした送電網が必須となる
電気は貯めておくことができないエネルギーです。そのため、需要と供給のバランスを保ち続けることができなければ、送電網がダウンする事態を招くことになるのです。
当然、送電線は「需要のピーク」を前提にした作りになっています。また、電力需要は1日の中でも大きな変動があり、季節によっても需要量が異なっていることは知っておく必要があります。
つまり、安井陽特任教授の「2〜20% しか送電線が使われていない」という主張は無意味なものです。ピーク時でなければ、利用率は落ち込みます。また、『系統安定度』の観点から、「需要のピーク時」に設備障害が生じた場合にも電力の安定供給が継続できるような状態で運用されているのです。
4:「電圧安定」と「周波数維持」も電力の安定供給には欠かせない
電力を安定供給しようとすれば、電圧をさせて周波数を維持することが必須となります。これができなければ、送電網がダウンしてしまう(=大停電が発生する)からです。
大手電力会社に求められているのは「需要変動分に対し、太陽光や風力の出力変動分を含めてバランスを取り続ける」というものです。電力会社がカバーできる範囲には限界がありますし、再生可能エネルギーを優先することは技術的にも法的にも無理なことなのです。
『報道ステーション』が番組で放送した内容は事実を無視し、自らの主張を扇動するためのものだったと言えるでしょう。訂正をする必要があると言えるのではないでしょうか。