吉本興業が宮迫博之らに謹慎処分を下したことでテレビ局が出演部分の編集を開始、コンプライアンス意識が軽薄なことが浮き彫りに
「振り込め詐欺グループからの金銭授受が明らかになった」との理由で吉本興業が芸人の宮迫博之氏ら11名の所属タレントに対して謹慎処分を下しました。
これを受け、在京キー局が該当タレントが出演している番組の再編集に追われていると朝日新聞が報じています。しかし、この対応は遅いと言わざるを得ないでしょう。
なぜなら、コンプライアンス的な問題が浮上した時点で「出演自粛要請」を出したり、所属先である吉本興業に「潔白であるとの保証をせよ」と迫ることができたからです。テレビ局が再編集に追われているのは自業自得と言えるでしょう。
吉本興業が振り込め詐欺グループの宴会に参加し金銭を受け取っていたとして、所属するタレント11人を謹慎処分にしたのを受け、NHKや在京キー局は24日、該当するタレントが出演する番組の放送を取りやめたり、出演部分をカットしたりするなど、対応を発表した
(中略)
宮迫さんが「アメトーーク!」に、田村さんが「ロンドンハーツ」にレギュラー出演しているテレビ朝日は、今後の出演は見合わせ、収録済みの分についても「対応を慎重に検討している」とする。
芸人と所属契約書を交わさない吉本興業は「反社排除」をどう担保しているのかの説明責任がある
吉本興業は所属タレントや芸人と契約書を交わさない事務所だと言われています。法的には口約束でも有効になるため、契約書は義務ではありません。
しかし、言った・言ってないの「水掛け論」が発生するリスクがあるため、ほとんどの芸能事務所は契約書で内容を明示しているはずです。
ただ、マネジメント契約を締結するのであれば、『反社排除の誓約書』を提出させることが一般的です。これは「反社会勢力との関係はありません」と誓約することで、法令を遵守している担保となるからです。
ところが、吉本興業は所属タレントや芸人とは契約書を交わしていません。これでは『反射排除の誓約書』を提出させている可能性は低く、反社会勢力との関係性を排除することはできません。
コンプライアンス遵守を訴えたところで、「遵守されていること」を保証する根拠がないのです。吉本興業は「なぜ所属タレントや芸人がコンプライアンスを遵守していると言えるのか」という根拠を示し、説明する責務があると言えるでしょう。
「ノーギャラ」と言い張るも「実は金銭を授受してました」では現状維持は容認されない
疑惑が持ち上がった際に「ノーギャラだった」と言い張った芸人は自らの評判を下げる結果となりました。実際には金銭を授受しており、虚偽の説明をして保身に走っていたからです。
また、「金銭を受け取っていない」とワイドショーなどで擁護していた芸人などについては訓告処分を下す必要があります。
疑惑を持たれた芸人が「問題なし」と否定し、所属事務所も追従。ワイドショーで同じ所属事務所の芸人が矮小化に向けたコメントを発することで問題の収束化を急いだのです。
具体的な対応策が何ら施されない中で問題は解決とはならないでしょう。
コンプライアンスを理由に出演見合わせを迫らなかったテレビ局が右往左往するのは自業自得
吉本興業が宮迫博之氏らの謹慎処分を正式に発表したことで、出演番組を抱えるテレビ局が右往左往する事態となっています。しかし、自業自得と言わざるを得ません。
なぜなら、疑惑が持ち上がった時点で「出演見合わせ」というカードを切ることができたからです。
- コンプライアンスを理由に「疑惑が出ている芸人の番組出演見合わせ」を吉本興業に要請
- 吉本興業が「該当の芸人は問題ない」と保証するなら、出演を継続
- 問題が発覚すれば、「2」を根拠に吉本興業に対して損害賠償を請求
要するに、どのテレビ局も「番組再編集などのリスクがあるから出演を見合わせさせて欲しい」と要請できたのです。もし、吉本興業が出演自粛要請に難色を示すようなら、「コンプライアンス上の問題がないことを吉本興業が担保せよ」と迫れることが可能でした。
つまり、テレビ局は自らに火の粉が降りかかること回避できる状況にあったのです。しかし、どの放送局も沈静化すると読み、コンプライアンスを軽視したことが裏目に出てしまう結果となりました。危機管理の判断を誤り、それによって大慌てで編集作業をする結果になってしまいました。
「通常の営業活動という認識だった」が芸人自身の評価が最も損なわれない弁解ですが、所属事務所の評判に傷が付くことは避けられません。それを吉本興業が嫌ったから、支離滅裂な対応となり、事態がより悪化しただけなのです。
世間一般の企業と比較してコンプライアンスの意識が甘いテレビ局と芸能事務所が “少し痛い目を見ただけ” です。自業自得であり、世間からの厳しい目にしばらくの間はさらされることになると言えるのではないでしょうか。