ホルムズ海峡で緊張が高まるのは「中東の石油資源」にエネルギー源を依存する日本経済にとってマイナスである
NHK によりますと、海運会社で作る『日本船主協会』の内藤会長が「ホルムズ海峡での緊張が運航コスト増を招いた結果、エネルギー価格に影響が出る恐れがある」との認識を示したとのことです。
この発言は脅しではなく、現状を述べたに過ぎません。ホルムズ海峡ではタンカーが攻撃されただけでなく、アメリカ軍の無人偵察機が撃墜される事件も起きているのです。
安全保障という点でも対応を考える必要がある事案だと言えるでしょう。
中東のホルムズ海峡付近で日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃され、アメリカとイランの間で緊張が高まっています。これについて、海運会社でつくる「日本船主協会」の内藤忠顕会長は、運航にかかるコストが増え、今後エネルギーの価格などに影響が出る可能性もあるという認識を示しました。
(中略)
事件の影響については「危険を避けるため速度を上げて通過することで燃費が悪くなったり、船員の組合から割増賃金の要請が出たりして、運航にかかるコストが増加している」と述べました。
“狙われるリスク” が増加すれば、割増手当が要求されるのは自然なこと
ホルムズ海峡を通過中の船舶が実際に攻撃されたのですから、乗組員が「危険手当の割増」を要求するのは自然なことと言えるでしょう。また、「燃費」より「危険地域を速やかに抜け出すこと」に重点を置くようになるのも当然の行為です。
その結果、発注者が負担する運航コストが増加するのです。
中東から石油資源を日本に輸送するための運航コストが増加すれば、それはエネルギー価格に上乗せされます。エネルギー価格の上昇は日本経済を失速させる要因になり得るため、このような事態を避けるための動きは経済政策という点で重要と言えるでしょう。
中東の湾岸諸国から石油資源(= 原油や LNG)を購入しているのは日本だけではない
一部には「ホルムズ海峡が閉鎖されても日本経済への影響は限定的」と楽観的な意見があります。しかし、これは誤りと言わざるを得ません。
確かに、日本の主要発電源となっている LNG はホムルズ海峡を通過する必要のないインドネシアやオーストラリアから輸入しています。
そのため、「中東産の石油資源を入手するハードルが上がっても、他の地域から購入すれば良い」と考える人が一定の割合でいるのでしょう。ただ、中東産の石油資源を購入しているのは日本だけではないという現実を見据えなければなりません。
日本の近隣諸国(= 中国、台湾、韓国など)は “日本と同様の” エネルギー調達先であるとの認識を持つ必要があります。
要するに、日本の近隣諸国との間で「湾岸諸国以外からの石油資源の調達競争」を強いられるリスクがあるのです。高値でふっかけられるのが目に見えているのですから、このような事態に陥らないように外交で結果を残す必要があることは明らかと言えるでしょう。
「発電手法の多様化」も安全保障の1つになる
日本では原発再稼働に否定的なメディアや野党が「再生可能エネルギーの普及」を訴えていますが、彼らが導入を求める太陽光や風力は「石油資源を用いた火力発電によるバックアップ体制」が必要不可欠です。
これは火力発電によるバックアップがなければ、電力需要と電力供給のバランスを維持することはできないからです。バランスが崩れるとブラックアウト(= 大規模停電)が発生するのですから、原油価格が高値を付けることは経済にマイナス影響を及ぼすことになります。
マイナス分を軽減するには「原発再稼働」が効果的です。理由は「原発で発電した分だけ火力発電用の燃料が不要になるから」です。つまり、購入のニーズが減少するのですから、市場では “買い手” が有利になる(= 原油価格が下がる)のです。
『原発の即時全廃』を打ち出したところで、市場で必要とされている電力量は変わりません。原発が減らされた分だけ「火力発電に依存せざるを得ない割合」が増加するのですから、売り手である産油国は笑いが止まらない状況が起きていると言えるでしょう。
エネルギー価格の上昇は日常生活にコスト増という形で影響が生じます。それを防ぐために政治に対し「外交によるホルムズ海峡での緊張緩和」と「原発再稼働による原油価格引き下げ」の2つを要求すべきです。
「石油資源の確保」を重要と認識しているかが問われている案件と言えるのではないでしょうか。