立憲民主党の原発ゼロ政策は非現実的で、電力利用者の高額なコスト負担を要求するものだ

 朝日新聞の南彰記者が「立憲民主党の原発ゼロ法案の骨子が判明した」との記事を書いています。

 南記者の政治的立ち位置と合致する政党であるため、応援の意味合いもあるのでしょう。ただ、法案内容は “ツッコミどころ” が満載であり、パフォーマンス用の法案と呼ぶべき代物です。

 

 昨秋の衆院選で野党第1党になった立憲が公約で「原発ゼロ」法策定を掲げ、自民党との立場の違いが鮮明になった。これまで民進党が態度を明確にしなかったため進まなかった原発ゼロに向けた国会論議が、ようやく本格化する。

 骨子案では2030年までに10年と比べ、1年間の電力需要量を3割削減する省エネ目標と電力供給量に占める再生可能エネルギーの割合を4割以上にする目標を明記。原発新増設や使用済み核燃料の再処理、核燃料サイクルを全面的に禁止し、再稼働は石油が全く入ってこないような異常事態以外は認めないとした。

 

 南記者が “痛いところ” は原発ゼロを掲げて戦った国政政党が総選挙で惨敗した事実から目を背けていることです。

 有権者の支持があれば、それは「議席」として反映されているはずです。つまり、国会議論は表面上の主張にすぎず、実態は “再生可能エネルギー利権” を大きくしたいという一部の野党政治家らの我田引水に過ぎないのです。

 

1:「非常時には原発を稼働させる」という主張は “絵に描いた餅”

 立憲民主党は連合の支援が欲しい政党ですから、「原発を即時全廃する」とは宣言できないのでしょう。その立場を採ると、電力総連からの投票が完全に見込めなくなるからです。

 「非常時には原発を稼働させる」という主張は “落とし所” という意味合いが強く反映されたものと思われます。

 しかし、この主張は完全に “絵に描いた餅” となります。稼働させるのであれば、定期点検を行い、いつでも運転できる状態を維持し続けなければなりません。そのためには原発運転時と同じコストが必要になるのです。明らかに予算の無駄遣いと言えるでしょう。

 また、運転をしないのであれば、人材不足が問題となります。現状でさえ、原発運転員の経験不足が懸念されている状況なのです。「異常事態以外は原発の運転を認めない」とする立憲民主党のシナリオは非常時に最悪の事態を招くことになる可能性が高いのです。

 

2:「ホルムズ海峡が閉鎖されても、快適な生活が送れなく程度」と発言した枝野幸男

 立憲民主党の代表を務める枝野幸男氏は過去に「ホルムズ海峡が閉鎖されても、快適な生活が送れなく程度」と発言しています。

画像:石油が入ってこなくても問題ないと主張する枝野議員1

画像:石油が入ってこなくても問題ないと主張する枝野議員2

 「国民がダイレクトに命を失っていく状況ではない」と切り捨てたのです。「『集団的自衛権』は容認できない」と立憲民主党の代表としても発言していますし、エネルギー政策に対する現実から完全に目を背けていると言わざるを得ません。

 第二次世界大戦(太平洋戦争)がどういった理由で始まったのかを完全に忘れているのでしょう。あまりに残念すぎる政治家の主張となっています。

 

3:FIT のある中で再生エネの割合を増やせば、電気代は高騰する

 立憲民主党は原発に代わる発電方法として再生可能エネルギーをあげています。「再生可能エネルギーの割合を4割以上にする」としており、現実が見えていないことは明らかです。

 再生可能エネルギーは FIT (全量固定買取制度)が適用され、高額な買取値が設定されているのです。

 これは再生可能エネルギーの発電量が増えれば増えるほど、電力消費者に “再生可能エネルギー割賦金” という形で負担がのしかかってくるのです。導入時に民主党は「月にコーヒー1杯程度」と主張していましたが、現時点で倍以上の負担になっています。

 「安定した電力網の維持」よりも「再生可能エネルギーの普及」を優先せよと主張しているのです。その弊害は「電気料金の高騰」と「停電の頻発」として現れ、製造業の競争力が低下する形で一般社会も被害を受けることでしょう。

 

 立憲民主党が打ち出した『原発ゼロ法案』に基づくエネルギー政策は日本の電力インフラを破壊する狙いを持った法案と言えるでしょう。電力を使った産業のことは完全に無視し、自らの政治イデオロギーを全面に押し出したものとなっています。

 民間企業で働く多くの人は電気代が高騰することに否定的だと思われます。電気代の支払いに経営資源が使われると、給与やボーナスとしての取り分が減少することを実感しているからです。

 取り巻きの活動家の絶対数が少ないことは先の総選挙で何度も現実を突きつけられているはずです。それを理解せず、方針展開をする決断力と実行力がないから、消去法で自民党が選ばれていると言えるのではないでしょうか。