AFP 通信、「生石灰で青緑に染まった湖がインスタ映えスポットとしてロシアで人気」と化学的に起こり得ないデマを流す

 AFP 通信が「ロシアで人気のインスタ映え湖、青緑色の正体は発電所廃棄物の生石灰」との記事を掲載しています。

 しかし、これはデマです。なぜなら、生石灰を水で希釈することは化学的にできないからです。校閲の時点で記事の内容を訂正することができなかったことは問題と言わざるを得ないでしょう。

 

■ AFP 通信が報じた内容

 AFP 通信が報じた記事の内容は次のとおりです。

画像:AFP通信が報じた記事

 ノボシビルスク(Novosibirsk)にあるシベリア発電会社(Siberian Generating Company)の灰処分地となっている湖は地元の「モルディブ」とニックネームが付けられ、ビキニ姿の女性やパドルボーダー、カップルなどが楽園での休暇を楽しむかのように写真撮影にいそしんでいる。

 だが、シベリア発電会社の広報担当者はAFPの取材に対し、鮮やかな色は浅い湖の水で希釈された酸化カルシウム(生石灰)によるものだと説明。湖は「有毒ではない」が、「灰処分地(湖)の底は粘土質なので、落ちたら出るのが大変だ」と述べた。

 記事には「化学的な間違い」が含まれており、これを指摘できなかった校閲のレベルは問題と言わざるを得ません。高校または中学校で学習する化学の知識で間違いを指摘できるからです。

 

■ 事実

1:生石灰を水に希釈することはできない

 生石灰とは酸化カルシウム(= CaO)のことであり、水と激しく反応して発熱するという性質があります。

 化学式: CaO + H2O → Ca(OH)2

 Ca(OH)2 は水酸化カルシウム(= 消石灰)です。つまり、「生石灰を水で希釈する」ということは不可能です。この点を見落としている時点で「校閲として問題がある」と言わざるを得ないでしょう。

 

2: "calcium salts" を誤読したことが間違いの原因と考えられる

 AFP 通信が報じた記事はガーディアン紙も報じています。その中で言及されている "calcium salts" を間違った認識で記事にしたことが恥をさらす原因になったと言えるでしょう。

 But despite warnings that the artificial pond contains dangerous calcium salts and other metal oxides, it has remained a popular site for selfies, wedding parties and scantily clad photoshoots.

 "calcium salts" は「カルシウム塩」と呼ばれるグループの名称で、構成イオンとしてカルシウムイオンが含まれていることが要件になります。(塩化カルシウムや炭酸カルシウムが代表例)

 なぜ、該当の湖に「危険なカルシウム塩」や「金属酸化物」が含まれているかと言いますと、「石炭火力発電所の灰処分地」だからです。石炭には “不純物” が含まれていますし、これらは灰として処理されます。

 水溶液が青に染まるのは「銅イオンが溶けている場合」が代表例です。消石灰(= 水酸化カルシウム)で作った石灰水に息を吹きかけると二酸化炭素で一時的に白濁することはあっても、カルシウムイオンでは青色の水溶液を作ることはできません。

 AFP 通信の記事は内容に問題があると言わざるを得ないのではないでしょうか。