バティスタのドーピング問題、「『A検体』に陽性反応が出た事実」を伏せたままで選手の起用が継続できることも大問題だ
プロ野球・広島カープで主軸打者として活躍するサビエル・バティスタ選手が6月初旬のドーピング検査で陽性反応が出たことが発覚し、大きな騒動となっています。
ただ、この問題は「疑惑が生じた選手への対応」という点で情報公開が問われることになるでしょう。
なぜなら、広島カープは「バティスタ選手にドーピング陽性反応が出たこと」を7月上旬の時点で知っていましたし、その状況下でバティスタ選手を起用し続けていたからです。
NPBによると、バティスタは6月初旬にドーピング検査を受け、A検体で陽性反応が出た。球団が希望したB検体の検査結果も前日(16日)午後9時に判明したが、結果は変わらず、離脱が決まった。
(中略)
同本部長は薬物の種類やバティスタ本人の主張については、「全て結果が出た時にお話しします」と、詳細を明かさなかった。
NPB によるドーピング検査の流れ
NPB が行うドーピング検査の流れは以下のものであることが公式ウェブサイト上で紹介されています。
- 対象の選手から『検体』を採取する
- 『検体』を『A検体』と予備の『B検体』に分割し、『A検体』を分析機関に調査を依頼
- 『A検体』に陽性反応が出た場合は NPB に通知され、NPB から球団代表に結果が通告される
- 選手は結果を球団から知らされる
- 選手側は「弁明」と「『B検体』の検査希望」を行う権利を持つ
- 『B検体』からも陽性が出た(または『B検体』の検査をしなかった)場合は「陽性認定」が決定
- 選手は「弁明」の機会が与えられる
- NPB が制裁内容を決定
- 制裁内容に不満がある場合は上告が可能
バティスタ選手の場合は「6月初旬」に『検体』を採取されていますから、7月上旬の時点で『A検体』の検査結果が陽性であることは所属球団(= 広島カープ)には通告されているはずです。
カープは『A検体』で陽性反応が出た後も『B判定』の結果が出るまでの約1ヶ月に渡ってバティスタ選手を “シロ” という立場で起用し続けました。これは制度的にアンフェアであり、改善の余地があると言えるでしょう。
クライマックスシリーズ直前で「『A検体』の陽性反応」が発覚した場合、日本シリーズ終了まで問題は公表されない
ドーピング問題への対処が難しい理由の1つは「検査結果がその場で示されない」ということです。専門の検査機関で検体を調査する必要があるため、結果が出るまでに1ヶ月ほどの時間を要するのです。
ただ、この “ギャップ” が存在することを認識した上で情報公開をしないと大スキャンダルの原因になることを認識しておく必要があるでしょう。なぜなら、以下のケースが実際に起こり得るからです。
- 9月上旬:ドーピング検査を実施
- 10月上旬:『A検体』で陽性反応
- 選手 or 球団が『B検体』の検査を要求
- この時点では非公表
- 10月中旬以降: クライマックスシリーズと日本シリーズで “疑惑の選手” も活躍し、所属チームが日本一に輝く
- 11月上旬: 『B検体』でも陽性反応が示され、ドーピングが公表される
要するに、ペナント最終盤で発覚したドーピングはシーズン終了時まで(世間一般に対して)隠し通すことが可能なのです。ファンに対する裏切りにも該当する行為であり、『A検体』に陽性反応が出た時点で NPB 側は公表すべきだと言えるでしょう。
選手と球団には「疑わしきは罰せず」の姿勢を打ち出し、『B検体』の結果が出るまで選手起用は継続できる
仮に NPB から「某選手の『A検体』に陽性反応が出た」と通告されても、所属球団は「疑わしきは罰せず」との姿勢を示し、当該選手の起用を継続することは可能です。
予備の『B検体』から陽性反応が出るまでは「陽性認定」は下されず、NPB が制裁内容を論議することもないのです。
これは疑惑が持たれた選手の対戦相手からすれば不公平と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、所属球団は「選手が勝手にやったこと」と逃げられる上、“疑惑の選手” が貢献した勝利を剥奪されることはないからです。
したがって、NPB は「『A検体』に陽性反応が出た時点」で世間に公表し、同時に「選手および所属球団には弁明と『予備検体(= B検体)』の再検査を行う権利を有している」と宣言すべきでしょう。
“疑惑がかけられた選手” を起用するか、自主的に出場停止にするのかは選手本人の意向を踏まえて所属球団が決定すれば良いことです。
『B検体』の検査を依頼しておきながら、「陽性反応は驚き」との姿勢は問題です。このような無責任な姿勢を取れないようにルールを変更する必要があるはずです。
ちなみに、バティスタ選手は『A検体』の陽性反応が広島カープに通告されていた時期である7月3日に出場登録を抹消されています。カープはこの点に対する説明も避けられないでしょう。
ドーピング陽性反応が示された場合の対応は NPB を含めて現行制度を見直す必要があると言えるのではないでしょうか。