国連のグテーレス事務総長、「赤字250億円で現金が枯渇しそうだ」と加盟国に分担金の上乗せを求めるも取り合われず

 AFP 通信によりますと、2019年9月末に2億3000万ドル(≒ 250億円)の赤字を抱えた国連のグテーレス事務総長が「活動資金の枯渇による問題」を加盟国に訴えているとのことです。

 しかし、加盟国が分担金の上乗せ要請に応じることはないでしょう。なぜなら、国連は組織が肥大化しすぎたことで高コスト体質となっているからです。したがって、コストカットの断行に向けた圧力が強くなることが予想されます。

 

 グテレス氏は「2019年の通常予算に基づく活動に必要となる総額のうち、加盟諸国は70%しか納付していない。これにより、国連は9月末に2億3000万ドルの現金不足に陥り、このままでは流動性準備金も今月末までに使い果たす恐れがある」と明かした。

 その上で同氏はコスト削減のため、会合や会議を延期し、サービスを縮小する、同時に出張は必要最低限に抑え、省エネ対策を実施することを提案した。

 ある関係者が匿名で述べたところによると、グテレス氏は今年に入り、国連の現金不足の問題に対応するため、加盟諸国に分担金の上乗せを要請したものの、了承は得られなかったという。

 

昨年から「分担金の不払いによる財政難」を訴えていたため、資金枯渇に陥ることは驚きではない

 国連が「加盟国からの分担金が支払われないこと」を理由に厳しい財政状況に置かれていたことは昨年から分かっていたことです。

 この問題に対し、グテーレス事務総長は「分担金の上乗せ」を要請したものの了承は得られませんでした。これは当然の結果と言えるでしょう。なぜなら、『分担金を支払済である加盟国』が上乗せ要請に応じると、“国連にタダ乗りする加盟国” を認めることになるからです。

 だから、追加の分担金を上乗せする国が現れなかったのです。

 したがって、国連が採れる現実的な収支改善策は「徹底したコスト削減」しか残されていません。国連は肥大化の一途をたどり、高コストな組織体質と化していますので、『聖域なきコスト削減策』を断行することで加盟国からの信頼を得る必要があると言えるでしょう。

 

「人権関係の補助機関」や「複数国言語に渡る公用語」を廃止するだけで大きなコスト削減効果が得られる

 国連が存続している理由は「第三次世界大戦を勃発させないため」であり、人権啓発などはメインではありません。ただ、世界的規模の組織であることが官僚化と肥大化を招き、現在の財政難を引き起こす原因となりました。

 『国連人権理事会』や『難民高等弁務官事務所』などは補助機関ですから、国連の看板を使っているに過ぎません。

 なぜなら、人権や教育に関する価値観は加盟国によって異なるため、国連が統一された基準を押し付けると反発を招くだけだからです。現実を無視した理想論を進めようとしたために予算が浪費される点は見直す必要があると言えるでしょう。

 また、国連で使用される公用語が6ヶ国語に及んでいることもコストが増加する要因です。これは「公式発言や公文書を6ヶ国語のいずれにおいても可能とする責務があるため、そのための人件費がかさむ」からです。

 このような “聖域” に対して何もを手をつけない組織から「運営資金が枯渇しているから、分担金を上乗せして欲しい」と言われたところで相手にする加盟国はないでしょう。なぜなら、「加盟国の国民に還元することが最優先である国家予算を回す」という決断をする必要があるからです。

 

「当事者として責任を持たない高コスト体質の国際組織」が加盟国から嫌われるのは当たり前

 国連が加盟国から嫌われるのは「『難民問題』の対処を先進国に押し付けた姿勢」が典型例です。

 国連は「難民を受け入れるべき」と主張しますが、受け入れに要する費用は “受け入れ国” が全負担することが前提です。国連は要請するだけで、難民の受け入れで生じる諸問題に対する責任は全く負わない立場なのです。

 その上、高コスト体質の官僚組織でもある訳ですから、資金不足を訴えたところで「無駄を省け」と返されるだけです。肥大化した組織を切ることができない時点で、行く末は決まっているも同然と言わざるを得ないでしょう。

 グテーレス事務総長は「温暖化を否定する者に隠れ家はない」との意見広告を世界中に出しましたが、このような経済効果を無視した行動に予算を投じるから、活動資金が枯渇する事態を招くことになるのです。

 加盟国に “高額な再生可能エネ” への支出を要求しておきながら、「国連の分担金も上乗せして欲しい」は喧嘩を売っていることと同じです。要請は加盟国から無視され、国連の財政状況はさらに苦しくなるだけと言えるのではないでしょうか。