共同通信、「安倍首相が『気候行動サミット』での演説要望を国連から断られた」と多数の矛盾が含まれた記事を配信

 共同通信が11月29日付で「安倍首相、国連演説を断られる」とのタイトルの記事を配信しています。

 演説希望が断られることは起こり得ますが、記事の内容は「あり得ない」ことです。配信記事の内容が「共同通信の願望記事」となっている上、菅官房長官が記者会見で否定していることから「デマ記事」と言えるでしょう。

 

■ 共同通信が報じた問題の記事

 共同通信が11月29日付で報じた記事の内容は以下のとおりです。

画像:共同通信が報じた記事

 深刻さを増す地球温暖化に対処するため9月に米ニューヨークの国連本部で開かれた「気候行動サミット」で、日本政府が安倍晋三首相の演説を要望したが国連側から断られていたことが28日、分かった。二酸化炭素(CO2)の排出が特に多い石炭火力発電の推進方針が支障になったという。主催したグテレス国連事務総長は開催に先立ち「美しい演説ではなく具体的な計画」を用意するよう求めていた。

 記事の内容に複数の矛盾が含まれており、その部分を見過ごす編集委員の能力には疑問符が付きます。これでは「安倍政権の足を引っ張る目的の偏向記事」と批判せざるを得ないでしょう。

 

■ 事実

1: 菅官房長官が共同通信の報道内容を否定

 共同通信の報じた内容は菅官房長官が29日の記者会見で否定したことをロイター通信が報じています。

 報道によると、石炭火力発電の推進方針が支障になり、国連側が演説を断ったという。官房長官は「国連側から発言要請があったが、日程の都合上、参加できなかった」と説明した。

 国連が「共同通信の報道どおりの理由」で国家首脳のメンツを潰すことは外交的にあり得ないでしょう。なぜなら、様々な形での “報復” を懸念しなければならないからです。

 この部分にまで頭が回っていないことは報道機関として致命的と言わざるを得ないからです。

 

2: 活動費の資金難に陥っている国連が内政干渉に該当する行為をするのかという疑問

 まず、「どの発電方法を採用するのか」は当事国が決めることです。日本では野党やマスコミが『反原発キャンペーン』を展開しているため、ベースロード電源として石炭火力発電を推進せざるを得ない事情があります。

 石炭火力発電は最新型であっても温室効果ガスである二酸化炭素を排出します。

 この点を批判する権利は誰にでもありますが、他国の政策に注文を付けることは内政干渉です。共同通信の伝えた報道が事実なら、国連は「『気候行動サミット』で演説したいなら、石炭火力発電を止めろ」という内政干渉になります。

 資金難に陥っている国連が日本のように分担金を遅れることなく支払う国のメンツを潰すような真似はしないでしょう。なぜなら、メンツを潰すと「(国連の関係機関が期待する)再生可能エネルギーへの国家予算の投入を見送る」という形で “報復” される恐れがあるからです。

 太陽光や風力など再生エネはいずれも高額な全量固定買取制度(= FIT)によって支えられている『補助金産業』です。これを潰されるような愚行をする可能性は低いと言えるでしょう。

 

3: グレタ・トゥンベリは演説で『具体的な計画』に言及していない

 次に、国連のグテーレス事務総長は「具体的な計画を用意するように」と述べたとのことですが、これはブーメランになる発言です。

 なぜなら、環境保護団体のスポークスマンとして活動するグレタ・トゥンベリは「温室効果ガスの排出削減に対する具体的な計画に言及したことはない」からです。

 過去に『具体的な計画』についての質問されたグレタは「大人が考えろ」と “逆ギレ” しています。『美しい演説』が “関の山” であるグレタ・トゥンベリを持ち上げている時点で、「『具体的な計画』がない人物に演説させている」と批判されることになります。

 グレタにも『具体的な計画』を要求していなければ、苦しくなるのは国連です。環境保護団体は「温室効果ガスを排出しない安価な原子力発電」に否定的ですから、代替方法を提案する責務があります。

 こうした矛盾を無視した憶測記事を書いているのですから、共同通信の責任は重いと言えるのではないでしょうか。