IOC が東京五輪のマラソンと競歩の札幌開催を決定、競技開催費用の新規負担という問題に直面する

 NHK によりますと、IOC が東京オリンピックのマラソンと競歩の競技会場を札幌に変更したことでコース設定のために組織委員会が現地視察を行う予定であるとのことです。

 問題となるのは「コース設定」よりも「競技開催費の捻出」でしょう。なぜなら、必要額が不明であることに加え、誰が負担するかが全く決まっていないからです。

 IOC が変更を決定した事項に日本側が追加負担をする責務はありませんし、IOC に出させることが筋と言えるでしょう。

 

 札幌への移転が決まった東京オリンピックのマラソンと競歩の会場について、大会組織委員会は、コースの承認を目指すIOC理事会までおよそ1か月しかないため、早急に準備態勢を整え、費用も節約するため施設の整備や運営は効率化を図りたいとしています。組織委員会は、3日、現地で視察を行う予定です。

 (中略)

 新たな費用の負担についても東京都が負担しないこと以外は決まっておらず、組織委員会は、急きょ決まった会場変更で安全で確実な大会運営に向けて対応を迫られています。

 

「真夏の8月開催」を維持している時点で “アスリート・ファースト” ではない

 IOC はマラソンと競歩の会場を東京から札幌に変更した理由を「選手のため」としています。これはカタール・ドーハで行われた世界陸上で途中棄権が続出したことが決定打になったと言えるでしょう。

 なぜなら、暑さが懸念される中で同様の問題が再発した場合、IOC や国際陸連の責任問題になるからです。したがって、IOC や国際陸連の上層部の保身のために会場変更が強行されたに過ぎません。

 本当に「アスリート・ファースト」を考えているなら、(北半球では)暑さの厳しい8月をオリンピックの開催期間にはしないはずです。

 “商業オリンピック” となる前の『10月開催』であれば、酷暑による問題は発生することもなかったでしょう。この点から意図的に目を背けている時点で IOC の語る変更理由は詭弁に過ぎないのです。

 

開催地の変更を強行した IOC が「変更に伴う追加費用」を全額負担すべき

 次に、競技開催予定地として全く準備をしていなかった札幌市での開催を IOC が決定したのですから、競技の準備や開催費用はすべて IOC が負担しなければならないのは当然のことです。

 「巨額の開催費」に懸念を呈する IOC が自らの決定で「開催地にさらなる負担」を強いる結果となっているのです。この部分を容認・黙認すべきではありませんし、(今後のためにも)苦言を呈しておく必要があるでしょう。

 IOC の “ちゃぶ台返し” を容認すると、まともに会場施設を準備することがバカを見ることになってしまいます。

 普段は開催されていない時期に競技の開催を求めて準備を強いたにも関わらず、土壇場になって「競技環境に懸念がある」との理由で撤回した挙句に、代替開催のための費用負担を要求しようとしているのです。

 『悪しき前例』になることは火を見るよりも明らかなのですから、“IOC が承認した開催地” を後になって変更するなら、「新たに必要となる費用は全額 IOC の負担であることが大前提」としなければならないでしょう。

 

マラソン大会の発足を考えている大迫傑選手には「費用の内訳」を知る絶好の機会

 マラソンと競歩の会場が札幌に変更されたことを活かせる立場にいるのは大迫傑選手でしょう。なぜなら、アスリートが賞金を得られる競争力のあるマラソン大会の発足を宣言しているからです。

 要するに、全くのゼロの状態からマラソン大会を作り出すために必要不可欠な動きを知ることができるという千載一遇の機会に恵まれているのです。

  • コース設定に必要なプロセス
  • 大会運営に不可欠なボランティアなどの確保
  • 選手・関係者用の宿泊施設

 おそらく、上述の部分についてはマスコミが報道で頻繁に取り上げてくれることでしょう。マラソン大会を開催する上ではいずれも欠かせない項目ですし、どのぐらいの金額が必要となるのかは “主催者” になる意向を示している大迫選手が知っていても損はないはずです。

 大迫選手が主催する大会の場合は「警察が交通整理に協力してくれる可能性がゼロに近い」ため、別途で費用がかかることが濃厚ですが、大会の準備・運営費の概算を把握することは十分に可能と考えられます。ゴタゴタ劇の最中に知識を蓄えておく価値はあるでしょう。

 

 資金面で揉めることが確実な東京オリンピックのマラソンおよび競歩の札幌開催がどのようなプロセスを経て実施されることになるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。