ディズニーの動画配信サービス、初日で1000万人の登録者を獲得する好スタートを切る
日経新聞によりますと、ウォルト・ディズニーが12日に始めた動画配信サービスが初日だけで登録者数1000万人を突破したとのことです。
市場の予想が「2019年末までに800万人の登録者」でしたから、好スタートを切ったと言えるでしょう。ただ、ディズニーの主力収入源はテレビなどの有料配信であり、減収分をカバーできるかが注目点になるはずです。
米国の動画配信市場をめぐる競争が新たな段階に入った。ウォルト・ディズニーが12日に始めたサービスは初日だけで登録者数1千万人を突破した。アップルも今月から独自の配信サービスを始め、ネットフリックスの「1強」から戦国時代へ突入する。配信プラットフォームを握る企業が増えるなか、コンテンツ制作企業との間の力関係にも変化が見られる。
ディズニーが13日に動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」の登録者数を公表すると同社の株価は前日に比べ7%強上昇して過去最高値を更新した。数カ月前からキャンペーンを展開していたとはいえ、「2019年末までに800万人」という市場予想を上回る好調な滑り出しだ。
ディズニーが動画配信王者・ネットフリックスの追い上げを開始
動画配信サービスでトップに立っているのは「ネットフリックス(Netflix)」でしょう。1億6000万人の有料会員を抱え、マーケット・リーダーの地位にあるからです。
ただ、王者ネットフリックスは盤石とは言えない状況にあります。その理由は「配信するコンテンツ(=作品)の獲得が難しくなっているから」です。
動画配信サービスを利用する動機は「見たい作品があるかどうか」です。
人気のコンテンツを持つメディアは「自前の動画配信サービス」があるなら、ネットフリックスに配信ライセンスを与える必要はありません。また、「ネットフリックスよりも良い条件を提示する動画配信サービス」があるなら、そちらにライセンスを与えることでしょう。
つまり、動画配信サービス事業者が “独占的に扱うことができる人気コンテンツ” を保持していないと、顧客を繋ぎ止めることが難しくなるという現実があるのです。
この点で人気映画やドラマのコンテンツを豊富に揃えるディズニーには「基盤を持ち合わせている」という強みがあります。これをどれだけ活かせるかがポイントになると言えるでしょう。
「『テレビの有料放送事業』に匹敵する利益を『ネットの動画配信事業』で稼げるか」が課題
ディズニーが抱える独自の課題は「テレビの有料放送事業が減収・減益になること」です。テレビとネットの双方で有料会員になる人は例外的ですし、多くの人は「より安価なネット配信」を選択することが予想されます。
つまり、ディズニーの “稼ぎ頭” である「テレビ事業(= ライセンス収入)の顧客」が「動画配信事業(= ディズニー・プラス)の顧客」に乗り換えると予想されるため、この部分をカバーすることが経営的な課題になると言えるでしょう。
テレビ事業の減収予想は経営的なダメージですが、これは「アメリカ国内のテレビ事業」です。したがって、「アメリカ国内のテレビ事業」のマイナス分を「世界全体での動画配信サービス」でカバーすることが目標になります。
ディズニーは様々なコンテンツを有している訳ですから、売り込み方次第でカバーすることは十分に可能と言えるでしょう。
『Eテレ』のようなコンテンツがあるなら、『ディズニー+』の会員になりたいと思う顧客も多いのでは?
動画配信サービスの有料会員になる大きな理由は「日常的に視聴するコンテンツがあるか」でしょう。解約も自由にできる訳ですから、目ぼしいコンテンツがないなら、顧客離れも目立つ形になるはずです。
この点を踏まえると、『Eテレ』の立ち位置を掴めるかがポイントになると思われます。
NHK のEテレ(= 旧・教育テレビ)は対象顧客が独特です。政治イデオロギーに偏った内容が大きな批判を招いていますが、『幼児向け番組』の内容は親世代から感謝の言葉とともに高く評価されています。
つまり、この部分がディズニーにとっての “金脈” になる可能性があります。ディズニーが保有するコンテンツは「(子供を含めた)家族向け」ですから、『Eテレ』が放送するコンテンツと重複する部分もあるでしょう。
日本では「英語教育」が小学校から導入されており、「英語に触れる機会を与えたい」という親は一定数の存在があるはずです。
ただ、子供に無理やり勉強させようと反発されるだけですから、それなら「ディズニーの映画を英語版で見ること」を求めた方が自然と英語に触れる機会を作れることでしょう。コンテンツを持つディズニーが自らの強みをどのように活かすのかが大きな注目点と言えるのではないでしょうか。