リバプール移籍が決定した南野拓実に期待されること

 サッカー日本代表の南野拓実選手が昨年度のヨーロッパ王者であるリバプールに2020年1月に移籍することがクラブから発表されました。

 名門クラブからのオファーを受けること自体が快挙ですが、広告塔ではなく実力が評価されての移籍には大きな価値があると言えるでしょう。ここではリバプールが南野選手に期待していることについて言及したいと思います。

 

「強力3トップの控え」という立場を受け入れてスタートできる選手を欲していたリバプール

 まず、リバプールには「強力3トップの控えを務めることができる選手を欲している」という事情がありました。

表:リバプールの前線
主力 控え
右サイド サラー シャチリ
中央 フィルミーノ (未定)
左サイド マネ オリギ

 リバプールの前線はサラー、フィルミーノ、マネの3選手が強力な3トップを形成して得点を量産しています。これらの3選手で全選手を戦い抜けるのなら良いのですが、過密日程を乗り切るのは不可能であり、彼らを休ませられる実力者が必要不可欠です。

 チームにはシャチリ選手やオリギ選手という実力者もいるのですが、両選手には「欧州選手権に出場する自国代表に選出されるために出場機会を求めて移籍する恐れ」があります。

 だから、前線の2列目なら左右どちらでも計算ができる南野選手に白羽の矢が立つことになったのです。

 

なぜ、南野なのか

 なぜ、リバプールが南野選手を獲得したのかと言いますと複数の理由が存在します。

 1つは「チームの序列を乱すプレースタイルの選手ではないこと」です。リバプールの FW 陣は主力3選手が絶対的な1番手であり、彼らの得点機をお膳立てできる選手が求められている状況にあります。

 南野選手が所属するザルツブルクにはホーランド選手やファン・ヒチャン選手もビッグクラブから注目される存在ですが、彼らは「得点」で価値を高めた選手です。彼らを入れると決定機を自ら活かす方向に走るため、レギュラー格の3選手が不満を覚えてチームの歯車が噛み合わなくなる可能性があるのです。

 一方で南野選手は「アシスト」や「チャンスメイク」で評価を高めて来た選手であり、そうした仕事がリバプールででも期待していると言えるでしょう。

 もう1つは「アジア市場での期待」です。リバプールは世界屈指のクラブチームですが、レアル・マドリードやバルセロナと比較すると知名度の点で少し劣る状況にあります。日本人の南野選手を獲得することでアジア市場への露出が増えることが期待できるのです。

 移籍金が高騰する前に「チームが求める実力」と「ビジネス面での期待値」を持った選手を獲得したリバプールの動きは合理的と言えるでしょう。

 

「3トップの一角として起用された際に周囲と良い連携を示すこと」が求められる

 南野選手がリバプールで期待される “最初の仕事” は「3トップの一角に入り、良い連携を示してチャンスメイクをすること」になるでしょう。

 シュートチャンスがある場合はシュートすべきですが、その頻度は多くはないでしょう。むしろ、「中盤からボールを引き出す仕事」や「ラストパスを供給する仕事」などの “リンクマン” としての仕事がメインになるはずです。

 中央だけでなく、左右どちらのサイドでも仕事ができることをリバプールとのチャンピオンズリーグで示しました。南野選手の実力は対戦相手だったリバプールが最も理解している訳ですから、チームへの適応に苦しむ可能性は低いと考えられます。

 リバプールはプレミアリーグとチャンピオンズリーグのタイトルを2つとも獲得できる実力があるだけに、そのような世界屈指のクラブで南野選手が実力をどれだけ発揮できるのかが大きな注目点と言えるのではないでしょうか。