ソン・フンミンがチェルシー戦で今年3度目となる(報復行為による)一発退場、「粗暴な選手」としての評価を固める

 12月22日に行われたサッカー・プレミアリーグ第18節トッテナム対チェルシー戦で韓国代表のソン・フンミン選手がリュディガー選手への報復行為でレッドカードが提示され、今年だけで3度目の一発退場となりました。

 トッテナムを率いるモウリーニョ監督はリーグに「寛大な処置」を訴えていましたが、却下されて3試合の出場停止処分が下されています。

 「頭に血が上りやすい選手」であることは明らかですし、相手選手を骨折に追い込んだ後に見せた “良い人アピール” も化けの皮が剥がれる結果になったと言わざるを得ないでしょう。

 

ソン・フンミンがチェルシー戦で見せた愚行

 問題のシーンはトッテナム対チェルシー戦の60分すぎに発生します。チェルシーのリュディガー選手と縺れてピッチ上に倒れたソン・フンミンは以下の反応を見せます。

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 これを「接触によって倒れた際に偶然発生したプレー」と説明するのは不可能です。左足でリュディガー選手に右脇腹を意図的に蹴り上げているのですから、報復行為と判断されるのは当然です。

 報復行為は「程度に関係なくレッドカードの対象」ですから、アンソニー・テイラー主審が下した判定は許容範囲内と言わざるを得ません。そうしないと、(相手選手を傷つける)報復行為の応酬となり、競技が成立しなくなってしまうからです。

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 退場を宣告されたソン・フンミンはオーバーリアクションを見せます。2019年だけで3度目となる一発レッドですし、「自分は悪くない」と被害者アピールをする狼藉者には厳しい批判が向けられるべきでしょう。

 

モウリーニョ監督の求める温情裁定は「アンドレ・ゴメスの件」で無理筋なのは自明

 トッテナムを率いるモウリーニョ監督は「リュディガーは骨折したに違いない。(骨折していないならオーバーリアクションだから、ソン・フンミンへのレッドカードは取り消されるべきだ。)プレミアがプレミアであることを願う」と擁護し、情状酌量を求めていました。

 しかし、この主張は通る可能性はゼロと言わざるを得ないでしょう。なぜなら、第11節エバートン対トッテナム戦で「怪我の程度はジャッジに影響しない」との前例が下されているからです。

 エバートン戦でソン・フンミンはアンドレ・ゴメス選手の後方からスライディング・タックルを浴びせました。

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 このプレーが発端となり、アンドレ・ゴメス選手は右足首を脱臼骨折。シーズン絶望の重傷を負いました。主審は「怪我の深刻度」に気づいてレッドカードを提示したものの、判定に不満を覚えたトッテナムが控訴。

 リーグの裁定は「ソン・フンミンの足はアンドレ・ゴメスの足に接触していないため、レッドカードは取り消す」というものでした。要するに、「当該プレーは “引き金” であり、その結果として起きたことを理由に退場処分を科すのは不当」としたのです。

 つまり、モウリーニョ監督の求める「怪我をしなかったからセーフ」を通すには「怪我をさせたからアウト」という基準が必要です。しかし、それはエバートン戦で皮肉にもソン・フンミンが「『怪我をさせたからアウト』の判断は誤り」との裁定を勝ち取っています。

 そのため、チェルシー戦での退場による3試合の出場停止処分は避けようがなかったと言わざるを得ないでしょう。

 

“粗暴なレッドカード・コレクター” を「ナイスガイ」として売り出すトッテナムの感覚を疑わざるを得ない

 サッカーの試合で退場が起きることは珍しいことではありません。なぜなら、決定機の阻止などでレッドカードを提出されることは良くあるからです。

 ただ、退場の理由によっては批判されなければならない選手もいます。特に、ソン・フンミンのように「自らの報復行為」でレッドカードを出されるタイプの選手です。

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 ソン・フンミンは昨シーズン第37節のボーンマス戦の前半終了間際にボールロストをしてしまい、自らが責任を取る形で相手のカウンターをファールで止めました。しかし、相手チームはクイック・リスタートをしようとし、ボールを取ったレルマ選手をソン・フンミンは妨害目的で後ろから突き飛ばし、レッドカードで退場となりました。

 「クイック・リスタートの妨害」はどのチームの時間稼ぎを目的にやりますが、目的を達成するために相手選手を突き飛ばすなど前代未聞レベルの蛮行です。しかも、レッドカードを出される有様なのですから、怒りをコントロールできていない欠陥があると言わざるを得ないでしょう。

 退場者を出すと、1人少ない状態で残り時間を戦うことを強いられるため、チームにとってのメリットはありません。ソン・フンミンの場合は「1度だけ」ではなく、「今年の5月から3度目」なのです。

 アンドレ・ゴメス選手を負傷させた後に見せた「良い人アピール」で誤魔化せるレベルでないことは退場回数というデータが示しています。「ナイスガイ」と訴えたところで「すぐに報復行為に出る粗暴者」という現実を変えることは極めて難しいことでしょう。

 

 後先を考えられずに安易な報復行為に走ってしまう選手が相手チームから見れば、格好の標的です。なぜなら、挑発すれば報復して来るのですから、その瞬間を審判団に見せることで退場に追い込めるからです。

 「報復を思い止まることができない」と相手チームに認識されてしまったソン・フンミンに対する挑発はさらに増えることでしょう。ソン・フンミンは自業自得ですが、トッテナムまでダーティーなイメージが定着することは避ける必要があります。

 クラブとしてソン・フンミンにアンガー・マネジメントの受講を促すなど、メンタル面での成長を要求する必要があると言えるのではないでしょうか。