中国・武漢での新型肺炎: 死亡率はインフルエンザ並みと見られるものの、感染力の把握は進まず封じ込めには至らず

 NHK によりますと、中国・武漢(ウーハン)で発見された新型のコロナウイルスによる肺炎の患者数は2744人、死者数は80人になったとのことです。

 数字は増えていますが、死亡率は約 3% とインフルエンザと変わりません。過度に心配する必要はないと思われますが、感染力を掴み切れていないことが封じ込めに苦心する大きな原因になっていると言えるでしょう。

 

 中国で新型のコロナウイルスの感染が拡大する中、中国の保健当局は、患者はさらに769人増えて、2744人になり、死亡した人は24人増えて80人となったと発表しました。

 (中略)

 ただ、中国の保健当局は、「ウイルスの感染力がやや強くなっているとみられる」と指摘していて、感染拡大をどこまで抑え込めるか不透明な情勢が続いています。

 

武漢市の初動対応が不味かった可能性は否定できないが、“新しい病気” への対応が遅れるのは止むを得ない

 新型のコロナウイルスによる肺炎が発生した中国ですが、武漢市の初期対応が良くなかったことはおそらく事実でしょう。しかし、これは止むを得ないことです。

 なぜなら、『肺炎患者』として病院に運び込まれた患者の発症原因が「既存のウイルス」か「未知の新型ウイルス」かは専門機関の分析結果を得るまで分からないからです。最初は「既存のウイルスによる発症」で動くのは当然ですし、それによって対応が遅れるのは仕方がないことでしょう。

 ただ、「既存型ではないかも」と認識した後に隠蔽に走っていた場合は別です。

 新型ウイルスによる新たな感染事例に直面した際の初期対応が『既存のウイルス』による事例と比較して若干の遅れが生じてしまうことは理解できます。ただ、『新型』が原因と分かった後は「想定された手続きによる対応」を迅速に行っていなければ、厳しい批判にさらされるべきです。

 この点で武漢市の当局は「自分たちの保身に走っていた可能性がある状態」なのですから、現在の状況が落ち着いた時点で初期対応の是非についても評価されるべき立場にあると言えるでしょう。

 

新型肺炎の死亡率はインフルエンザ程度で大きな心配は不要だが、感染力が掴み切れないことが不安を過ぎらせる

 現時点で中国当局から発表されている新型肺炎による死亡率はインフルエンザと同等の約 3% です。高齢者や呼吸器系に疾患を抱えている人々が肺炎が原因で亡くなっている状況ですから、予防策もインフルエンザと同じで十分」という認識で今は問題ないでしょう。

 中国の保健当局は「感染力がやや強くなっている」と言及していますが、これは中国当局が想定していた感染力を上回っていることが要因と考えられます。

 人から人への感染が起きる場合、通常は『症状の重い感染者』が感染源になります。武漢で確認された新型肺炎は『症状の軽い感染者』や『発症前の潜伏期間中の人』が感染源になっている可能性が疑われる状況であり、この点を当局が「感染力がやや強くなっている」と発言した可能性があるからです。

 この場合は “従来の隔離基準” では感染拡大を食い止めることは簡単ではありません。重症患者は隔離されているため感染源にはなりませんが、軽症患者や潜伏期間中の患者が(無自覚のうちに)感染拡大の片棒を担いでしまうためです。

 そのため、トップダウンで物事を決定できる中国であっても、封じ込め策を機能させることは簡単ではないと考えられます。

 

“パンデミック” になる可能性は低いが、中国当局が「インフルエンザ並みに患者数などを抑えている可能性」は否定できない

 パンデミックが発生していることを隠蔽するのは不可能でしょう。しかし、実際の患者数を低く発表することは(中国なら)十分に可能です。

 患者数や死者数を認めなければ、外部から正確な実数を把握する術はありません。中国からの情報発信は政府に一元化されているからです。

 マスコミの取材活動が実質的に制限されていますから、国外に該当する日本政府が正確な情報を得ることは困難です。したがって、「インフルエンザと同等の感染力があっても不思議ではない」との認識で対応策を準備しておく価値はあると言えるでしょう。

 感染症対策には「人員など予算」と「受け入れ設備」が必要不可欠ですし、対応時の基本マニュアルに沿って医療機関と行政がスムーズに連携することも重要になります。

 『鳥インフルエンザ』の発症がピークを迎えていた時期と同様の措置を着実に実施し、武漢からの帰国を希望する在留邦人の帰国時における検疫などの体制に “漏れ” が発生していないかを再確認し、必要な指示をする必要があると言えるのではないでしょうか。