水泳界のスター選手・孫楊(中国)がドーピング規定違反でスポーツ仲裁裁判所から8年の資格停止処分が下る

 NHK によりますと、水泳・自由形の金メダリストである孫楊選手(中国)が「ドーピング検査妨害」を理由にスポーツ仲裁裁判所から8年間の資格停止処分が下されたとのことです。

 孫選手は控訴の意向を示していますが、世間からの風当たりは強いままでしょう。なぜなら、「検体容器を物理的に破壊してドーピング検査を逃れたから」です。したがって、2度目であることを加味した厳罰が下るのは当然と言えるはずです。

 

 孫選手はおととし9月に中国の自宅で行われたドーピング検査の際、採取した血液が入った容器を壊して検査を妨害した疑いが持たれていました。

 国際水泳連盟はドーピングの規程違反にはあたらないとして警告の処分にとどめましたが、WADA=世界アンチ・ドーピング機構はこの処分が不十分だとして孫選手を2年から8年の資格停止処分にするよう求めてCASに提訴しました。

 CASは聴聞会を開き、孫選手本人や関係者、それに専門家から聞き取りなどを行った結果、WADAの訴えを支持して規程違反があったと認めました。

 そのうえで孫選手のドーピングの規程違反が2014年に続き2回目であることを重く見て、8年間の資格停止処分とする裁定を下しました。

 

メディアが報じた “スクープ” が発端

 孫楊選手の「ドーピング妨害」が発覚したのはオーストラリア紙などがスクープを報じたからです。

 ただ、国際水泳連盟(FINA)は孫楊選手を擁護。「規定違反ではない」との理由で警告の処分に留めていました。これは「ドーピング検査員の資格」など、検査を行う上での “落ち度” があったことに対して最大限の配慮をしたからでしょう。

 なぜなら、孫楊選手は中国で絶大な人気を誇る水泳選手です。FINA が主催する世界水泳に優良スポンサーを呼び込んでくれる数少ない選手ですから、連盟が「強引な幕引き」に走るのは想定されることです。

 したがって、ドーピング検査を妨害した孫楊選手への処分とともに、ドーピング検査を否定する姿勢に理解を示した国際水泳連盟にも処分を下す必要があると言えるでしょう。

 

“ドーピング検査の手順” に問題があったなら、検体を採取させた上で『被害者カード』を振りかざした反撃をすべきだった

 孫楊選手側は「検査に問題があった」と主張していますが、これは検査を妨害して良い根拠にはなりません。もし、検査員や手順に問題があったなら、『検体』から得られたデータの信憑性が失われることになります。

 つまり、陽性・陰性の結果に関係なく、孫楊選手はドーピング検査機関(≒ WADA)を批判することが可能だったのです。

 「検査員や手順に問題がある」と判明したなら、その証拠を抑えた上で検査結果が出る前に『告発』すれば良かったのです。そうしていれば、ドーピング検査機関の信用度は地に落ちていたでしょう。

 しかし、孫楊選手は『検査用の血液が入った検体』を破壊し、ドーピング検査を妨害しました。これは「陽性反応が出ると踏んでいるから、検体そのものを破壊する行為に及んだ」と批判する根拠を与えてしまうものです。

 そのため、孫楊選手の行為は完全に誤ったものと言わざるを得ないでしょう。

 

「8年間の資格停止処分」という厳罰が下された理由は2度目のドーピングに該当するから

 CAS (= スポーツ仲裁裁判所)は孫楊選手に対して「8年間の資格停止処分」を下しました。かなり重い処分ですが、理由は「2度目のドーピング違反」と認定された状況だからです。

 孫楊選手は2014年にドーピング違反による処分が下された立場であり、今回の「ドーピング検査妨害」は「2度目のドーピング違反」と同じ意味を持ちます。そのため、「8年間の資格停止処分」という厳罰が下されたのでしょう。

 判決に対して控訴することは可能ですが、「判決を覆す根拠」が新たにあるとは考えにくい状況です。「資格停止処分の期間が8年から4年に軽減されること」があったとしても、「処分撤回」までは難しいと言わざるを得ません。

 選手本人・関係者・専門家などからの聞き取りを行う公聴会を開いた上での判断ですから、決定内容は受け入れられるべきでしょう。

 また、孫楊選手のドーピング検査妨害に理解を示す判断を下した FINA 上層部の責任も問われる必要があります。国際組織が認定した “スター選手” にだけ特別対応があることは不公平だからです。この点に対する批判は強まるべきと言えるのではないでしょうか。