“新型コロナの死亡率” の優等生である『ドイツや韓国の数値』が日本と変わらなくなったことを称賛するメディアは報じない

 新型コロナウイルスへの対応を伝えるマスコミの一部は「全陽性反応者に占める死者の割合を『死亡率』」を積極的に取り上げ、その数値に低い韓国やドイツの対応を称賛しています。

 しかし、『死亡率』の低さを誇れるのは「3月中旬までがピーク」です。なぜなら、4月以降の数値は日本と遜色がないからです。しかも、新型コロナウイルスによる死者の絶対数は日本が圧倒的に少ないのですから、マスコミなどの誘導は悪質と言わざるを得ないでしょう。

 

 新型コロナウイルス感染拡大の中、ヨーロッパで死亡率が突出して低いドイツの現状について、現地在住の日本人医師が NNN の取材に答えました。

 (中略)

 ドイツの首都ベルリン在住の岡本真希医師が勤務する病院では、先月前半から緊急ではない手術を延期し、病院全体の稼働率を 50% 以下に下げていると言います。新型ウイルスの感染患者を受け入れるためで、集中治療室は常にベットを空けている状態です。

 こうした対応で生じる損失について、ドイツ政府が、日本円にして3300億円以上を補償に充てると発表したことも態勢整備の追い風となり、死者の抑え込みにつながっているといいます。

 

ドイツの現状

 日本テレビは「ドイツは(新型コロナウイルスによる)死者を抑え込めている」と主張していますが、事実であるかは個々が判断すれば良いことです。

表: ドイツにおける新型コロナウイルスの陽性反応者
日付 肺炎症状 入院 死亡率
3月26日
PDF
2%
(429 / 26,563)
10%
(2,664 / 26,563)
0.5%
(198 / 36,508)
27日
PDF
2%
(519 / 30,822)
11%
(3,245 / 30,822)
0.6%
(253 / 42,288)
28日
PDF
2%
(626 / 35,346)
11%
(3,906 / 35,346)
0.7%
(325 / 48,584)
29日
PDF
2%
(685 / 38,195)
11%
(4,338 / 38,195)
0.7%
(389 / 52,547)
30日
PDF
2%
(771 / 41,444)
12%
(4,904 / 41,444)
0.8%
(455 / 57,298)
31日
PDF
2%
(867 / 44,775)
13%
(5,623 / 44,775)
0.9%
(583 / 61,913)
4月1日
PDF
2%
(992 / 49,176)
13%
(6.382 / 49,176)
1.1%
(732 / 67,366)
2日
PDF
2%
(1,132 / 54,034)
13%
(7,216 / 54,034)
1.2%
(872 / 73,522)
3日
PDF
2%
(1,250 / 58,779)
14%
(8,055 / 58,779)
1.3%
(1,017 / 79,696)
4日
PDF
2%
(1,376 / 63,593)
14%
(8,803 / 63,593)
1.3%
(1,158 / 85,778)
5日
PDF
2%
(1,509 / 68,012)
14%
(9,550 / 68,012)
1.5%
(1,342 / 91,714)
6日
PDF
2%
(1,580 / 70,940)
14%
(10,050 / 70,940)
1.5%
(1,434 / 95,391)
7日
PDF
2%
(1,673 / 74,018)
14%
(10,726 / 74,018)
1.6%
(1,607 / 99,225)

 ドイツでの新型コロナウイルス感染者数はロベルト・コッホ研究所が発表しています。

 肺炎症状者や入院患者に対する言及が始まったのは3月26日の発表分から。肺炎症状のある患者数は全体の 2% で推移していますが、入院患者と死亡者の割合が増加しています。

 この状況を「低く抑えられている」と表現することは適切とは言えないでしょう。

 

(一部の)マスコミが好んで使用する『死亡率』は目くらまし

 『PCR 検査の全陽性反応者に占める死者の割合(= 死亡率)』は日本政府の対応を批判する上での “格好の数値データ” でした。なぜなら、下図に示す歴然たる差があったからです。

画像:新型コロナウイルスによる死亡率の推移

 3月中旬頃、マスコミが積極的に取り上げていた『死亡率』で日本は 3.5% 前後韓国は 1% 前半で、ドイツは 0.2% ほどでした。こうした数値が出る理由は自明でしたが、政権批判をしたいマスコミは触れなかったのでしょう。

  • 日本
    • 『PCR 検査』を「重症者を見つける目的」で実施
    • 検査数が少ないため、全体の陽性反応者も少数
    • 3月23日時点で陽性者1057名・死者41名(死亡率 = 3.88%)
  • ドイツや韓国
    • 『PCR 検査』を「感染者を見つける目的」で実施
    • 検査数が多くなり、陽性反応者の絶対数も大きくなる
    • 3月23日時点の数値
      • ドイツ: 陽性者22672名・死者86名(死亡率 = 0.38%)
      • 韓国: 陽性者8961名・死者111名(死亡率 = 1.24%)

 ただ、「『死亡率』の低さ」を追求する路線は韓国やドイツでも長くは続きませんでした。なぜなら、死亡率の数値を維持するためには「陽性反応者」と「死亡者」を “同じ割合” で推移させなければならないからです。

 それは不可能な要求であり、結果として『PCR 検査』をスクリーニング目的での活用を訴える検査積極推進派が拠り所にしていた『死亡率』は無意味な指標と化してしまったのです。

 

ロックダウン(= 都市封鎖)で新規陽性反応者のペースは減少するが、死者が減少する保証はない

 日本とドイツ(や韓国)との間に大きな差があった『死亡率』が「2% 前後で収束」しているようになったのは以下の理由があるからでしょう。

  • 日本
    • 検査基準は従来のまま
    • 市中での感染が拡大し、陽性反応者数が増加
    • 死者の発生度合いに変化は少ないため、結果的に死亡率は減少
  • ドイツや韓国
    • 韓国: 検査基準を日本と同様に限定
    • ドイツ: ロックダウンを敢行
    • 陽性反応者の発見ペースが低下するため、死亡率の分母が小さくなる
      → 死亡率は上昇

 どの国も現状では目的に違いはあれど、「感染者の絶対数を下げる」という防疫政策を実行しています。そのため、『死亡率』は “特定の数値” に収束する傾向が見られるのは自然なことと言えるでしょう。

 そうなると、本当に注目する必要があるのは「人口あたりの新型コロナウイルスによる死者数」です。

 

『人口100万人あたりの新型コロナウイルスによる死者数』で見ると、日本や韓国などのアジア勢が奮闘中

 では死者の絶対値が反映される『人口100万人あたりの新型コロナウイルスによる死者数』がどのように推移しているかと言いますと、次のようになります。

画像:人口100万人あたりの新型コロナウイルスによる死亡者の推移

 4月7日発表の数値で日本は 0.63 人、韓国は 3.74 人と健闘しています。一方でドイツは 19.3 人とヨーロッパの中では良い数値ですが、称賛できる範囲内にいるとは言えない状況でしょう。

 3月27日の時点でドイツは韓国の数値を逆転しています。韓国は医療崩壊を起こしたテグ(大邱)の数値が含まれていますから、“病床に空きがある” との自慢が出るドイツで死亡者の発生ペースが加速し続けている現状は好ましくありません。

 「死亡率」ではなく「死者数」が最小である方が社会にとっては好ましいと言えるのではないでしょうか。