メニコン、温室効果ガスの主要発生源である「牛のげっぷ(に含まれるメタンガス)」を半分以下にする飼料を開発

 日経新聞によりますと、コンタクトレンズを主力商品とするメニコンが「牛によるメタンガスの排出量を半分以下に抑える飼料を開発した」とのことです。

 牛のげっぷは温室効果ガスの主要発生源です。温暖化を抑制するためには「何らかの解決策」が求められていましたから、解決策が提示されたことは大きな前進です。

 「どのぐらいの頻度で飼料を与える必要があるのか」や「事業の採算性があるのか」などのハードルを乗り越えることができると、実用化は本格化することになると言えるでしょう。

 

 コンタクトレンズ大手のメニコンは牛のメタンガス排出量を削減する飼料を開発した。コーヒー豆の搾りかすを、メニコンがコンタクトレンズの洗浄液などを開発する過程で発見した酵素を活用し発酵させることで飼料化する。畜産由来の温暖化ガスを減らす技術として、事業性を確認したうえで実用化を目指す。

 メニコンが開発した飼料を与えると、牛のげっぷに含まれているメタンガスを5~7割削減することができる。

 

“牛のげっぷ” は地球温暖化の大きな要因

 あまり有名ではありませんが、牛のげっぷに含まれるメタンガスは温暖化の大きな要因です。二酸化炭素が代表例ですが、メタンやフロンガスも温室効果ガスであると気象庁が紹介しています

  • 人為起源の温室効果ガスの総排出量に占める割合
    • 二酸化炭素(化石燃料由来): 65.2%
    • 二酸化炭素(森林減少や土地利用の変化等): 10.8%
    • メタン: 15.8% (100%)
      • 消化管内発酵: 3.79% (24.0%)
      • 石油からの漏出: 2.56% (16.2%)
      • 天然ガスからの漏出: 2.42% (15.3%)
      • 固形廃棄物の処分: 2.42% (15.3%)
      • その他: 4.61% (29.2%)
    • 一酸化二窒素: 6.2%
    • フロン類など: 2.0%

 ここに世界のメタン排出量ごとの数値を求めると、家畜(主に牛)が “げっぷ(やオナラ)” で排出している温室効果ガスは「世界全体の 4% 弱」であることが分かります。

 このような事実があるから、「肉食を止めよう」と訴える『ビーガン』と『環境保護団体』(の中でも過激派同士)が共同キャンペーンを展開する動機になっているのです。

 

“げっぷ(やオナラ)” で排出される『消化管内発酵によるメタンガス』の 5〜7 割を抑制することの効果は大きい

 メニコンが開発した飼料は「牛のげっぷに含まれているメタンガスを5~7割削減することが可能」というものです。発表どおりの効果が期待できるなら、世界全体での温室効果ガス排出量の 1% 強を削減できる画期的なものと言えるでしょう。

 もちろん、そのためにはいくつかのハードルをクリアすることが条件です。

  1. 発表どおりの効果は一般的に得られるものであるか
  2. 飼料をどのぐらいの量と頻度を与える必要があるのか
  3. 飼料価格はどのぐらいで採算性が出るのか

 まずは「『新飼料』を与えることによる効果」を実証する必要があります。『新飼料』を与える以外の手間が増えると敬遠されますし、量や頻度もネックになり得るでしょう。

 「メタンの排出量は抑えられるが、肉牛や乳牛の質が低下してしまう」では敬遠される要因になってしまう恐れがあるからです。価格帯については「温室効果ガス対策」という名目で政府が支援する “抜け道” があります。

 「再生可能エネルギーの普及促進」の名目で “割高な買取金額” を強制的に導入したのですから、この部分は政治的な判断次第で何とでもなると言えるでしょう。

 

『安全で衛生的な家畜の肉製品』で市場を席巻する意味はある

 「温室効果ガスの主要排出源になっているなら、畜産業は縮小に向かうべき」という考え方を持つ人も増えるでしょう。これは『(植物由来の)代替肉』という選択肢もあるからです。

 しかし、代替肉はまだ発展途上の段階であり、効果が得られるかは不透明です。もし、政治的な運動を使って畜産業を強制的に縮小させると、“野生肉” へのニーズが増えることは避けられません

 そうなると、衛生的とは言えない動物を(加熱不十分などの状態で)食することになり、その動物が保有している菌やウイルスに人間が感染してしまうリスクが上昇することが現実的に考えられます。

 エボラ出血熱や新型コロナウイルスもおそらく「家畜ではない野生動物の肉(または内臓など)を加熱不十分の状態で食べたこと」が発生源でしょう。“食した本人だけ” で被害が止まれば無視することも可能ですが、世界中で交通網が発達してしまった現代ではそれが致命的な代償を支払うことになってしまいます。

 そのため、まずは「畜産業」で “ジビエ” の大部分を駆逐し、動物が保有する菌やウイルスに人間が感染するリスクを下げる仕組みを作るべきです。『代替肉』の出番はその後でしょう。

 

 現実世界で直面することになった課題に対し、研究・開発力に基づく解決策が提示されることは大いに歓迎すべきです。効果が認められるのであれば、多少の補助金を投入して世界中に普及を促す意味もあるでしょう。

 メニコンが開発した飼料によって潮目が変わったと言えるような状況が作り出されるかが注目点と言えるのではないでしょうか。