与党陣営が韓国・総選挙で6割の議席を獲得し、“新型コロナを封じ込めたムン・ジェイン大統領” にさらなる追い風を与える

 NHK によりますと、4月15日に投開票が行われた韓国の総選挙で与党が6割の議席を獲得する圧勝に終わったとのことです。

 「議席の6割」は法案を通す上で重要であり、ムン・ジェイン大統領の意向に沿った法案が議会を通過しやすくなります。また、4月初旬に懸念された新型コロナウイルスの感染急拡大も起きておらず、「ムン大統領の政権運営基盤は磐石になった」と言えるでしょう。

 

 韓国の国会議員を選ぶ総選挙は、15日に投票が行われ、開票作業は16日午前、終了しました。

 公共放送のKBSによりますと、300議席のうち、ムン・ジェイン政権を支える革新系の与党「共に民主党」などが過半数を上回る180議席、保守系の最大野党「未来統合党」などが選挙前より議席を減らし103議席となりました。

 (中略)

 革新系の「ハンギョレ新聞」は「政府のウイルス対策が国際社会で評価され、与党は国政運営の主導権を確保した。ムン大統領も国政課題を速やかに推進できるようになった」と伝えています。

 

(一院制の)韓国では「政党間の立場に違いのある法案は “6割” の賛意がないと提案できない」という法律がある

 韓国政治で重要となるのは「議会過半数」ではありません。なぜなら、「与野党間で差異のある法案は5分の3以上の議員が賛成しないと上程できない」とする『国会先進化法』が存在するからです。

 つまり、「与党が総選挙で過半数の議席を獲得するだけでは不十分」という状況でした。

 この法案が存在しているため、議会に提出される法案は『与野党が合意できる(中途半端な)内容』にならざるを得ない状況が続いていたのです。

 しかし、今回の総選挙でムン・ジェイン大統領が率いる与党会派は定数300の議会で180議席(= 5分の3)を “単独で” 獲得。他政党に遠慮することなく法案を提出することが可能になりました。

 採決では確実に勝てる状況の上、他党と協議する必要のない『独自法案』を上程できるのですから、ムン・ジェイン大統領の政治色が色濃く現れた政権運営が加速することは間違いないと言えるでしょう。

 

今後は「世界で最も上手く新型コロナウイルスの感染拡大に対応した韓国」を全面に押し出すだろう

 具体的にどうなるかと言いますと、「これからは韓国の時代」というプロパガンダが積極的に発信されると予想されます。

 その根底にあるのは「世界で最も上手く新型コロナウイルスの感染拡大に対処した韓国」という韓国政府のプロパガンダです。これが効いているから、総選挙で与党が “圧勝” したのです。

 したがって、親韓派などを中心に「韓国を持ち上げる論調」を様々な場所で見聞きすることになるでしょう。ただ、韓国の手法が他国から称賛されるかは不透明です。

  • テグ(大邱)での医療崩壊
    • 『PCR 検査』を闇雲に実施し、軽症者が病床を埋めてしまう
    • “厳戒令” を出す形での強制ロックダウン
    • 徴兵制だったため、「軍医の大量投入」で瓦解は回避
  • 韓国国内での感染者の追跡
    • 「800万台の監視カメラ」と「GPS アプリ」で全国民を監視
    • 感染者のプライバシーを二の次にして情報を一方的に公開

 韓国が「新型コロナウイルスでの感染者や死者数を上手く抑えた」という『結果』は評価されるでしょうが、結果を得るために用いた『手段』や『方法』まで評価されるかは別問題です。

 特に、個人の権利を重要視する傾向にある欧米社会で「高い評価」が得られるかは不透明です。手法としては “軍事国家” や “独裁国家” が採っているものだからです。そのため、韓国が期待する評価が得られずに屈折するシナリオも日本政府は用意しておく必要があるでしょう。

 

ムン・ジェイン大統領は『原則論』を貫くと予想されるため、日本政府(の対応)は現状どおり「無視」で十分

 総選挙の結果を受け、ムン・ジェイン大統領は「これまでの政策方針が支持された」と判断するでしょう。つまり、外交方針についても「従来どおりの対応」が基本となるはずですから、「大きな変更はない」と考えられます。

 韓国側が出方を変えないのですから、日本政府の対応も「現状維持」で十分です。

 『偉大な国・韓国』を全面に押し出すことが濃厚となっているため、日本政府がすべきは「韓国からの要望を門前払いにすること」です。

 経済的な “命綱” である『通貨スワップ』の締結を韓国は求めてくるでしょう。しかし、締結するメリットは日本側には一切ありません。韓国には「通貨が安定する」というメリットはありますが、日本は「国内の製造業が立ち行かなくなる」というデメリットを背負うことになるからです。

 「日韓両国の友好関係は大事」と考える外務省や「産業構造が似ているので日韓両国は上手く分担すべき」と考える経産省の役人が懐柔されて、日本経済に足かせを付ける論調を展開することでしょう。

 韓国は日本が配慮を示す必要のない国なのですから、「諸外国と同じ基準で扱う」という原則を貫き続けることが今後の日韓関係にとって重要と言えるのではないでしょうか。