投資会社の色合いを強めるソフトバンクグループが出資先の業績不振で1兆円近くの最終損失を計上、事業モデルの先行きに暗雲が立ち込める

 NHK によりますと、ソフトバンク・グループが発表した3月期の決算で今期は9615億円の赤字に転落したとのことです。

 携帯通信事業を本業にしていたソフトバンクは近年ではグループ会社へと移行し、親会社となったソフトバンク・グループは『投資会社』としての活動に力を入れています。

 業績を残すことができていれば良いのですが、“当たり” を出すことができているとは言えません。したがって、「土俵際の方へと追い込まれている状況に変化はない」と言わざるを得ないでしょう。

 

 ソフトバンクグループは、ことし3月期の決算を発表し、営業損益は、2兆円を超える黒字だった前の年から一転し、1兆3600億円余りの巨額の赤字になりました。新型コロナウイルスの感染拡大を背景にした金融市場の動揺で投資先の企業の価値が下がったためで、赤字幅は過去最大です。

 (中略)

 最終的な損益も1兆4000億円余りの黒字から、一転して9615億円の赤字になりました。

 年間の決算で営業赤字、最終赤字となるのはいずれも15年ぶりで、赤字幅は過去最大です。

 

携帯通信事業で日本国内から吸い上げた収益を投資に回すことがソフトバンクのビジネスモデル

 ソフトバンクは「携帯通信」から「資金運用」へとビジネスの中心が移行しています。前者を担っているのが『ソフトバンク』で、後者が『ソフトバンク・グループ』です。

 ソフトバンクは総務省が “電波社会主義” を継続しているため、年1兆円近くの収益を現在も上げ続けています。

 携帯通信事業に欠かせない電波は「官僚の作文」で割り当てられるため、支出は最小限で済みます。「オークション」だったら、そうは行かないでしょう。研究開発は他社にタダ乗りし、設備投資はサボタージュすれば、収益を最大化できます。

 新規参入があれば困ったことになりますが、日本ではその心配はありません。だったら、「ソフトバンクが日本国内で稼いで来た資金を投資に回した方が収益が上がる」と考えるのは当然です。

 毎年1兆円近くの収益が上がってくるのですから、投資先のどれかが化ければ大成功です。「第2・第3のアリババ」を探し求める “オーナー兼創業者” を止めることができる人物はまずいないと言えるでしょう。

 

孫正義氏が『投資会社の運営者』として結果を残せないことが痛手

 ソフトバンク・グループが苦境に立たされているのはトップの孫正義氏が『投資会社の運営責任者』として才覚があるとは言えないからでしょう。

 ソフトバンクが上げた収益を「国内携帯通信事業に再投資する」よりも「国内外を問わずに投資する」とした方が収益が見込めます。携帯通信事業で国内3位が確定しているのですから、別事業に目を向けるのは当然です。

 ただ、投資先の選別という投資会社の腕が問われる部分でソフトバンク・グループは失敗続きです。これは痛手と言わざるを得ません。

 投資先を「孫社長の肝煎り」で決定すれば、損益に対する責任は “決定を下したトップ” が取る必要があります。

 実務者に任せることができずに自らが判断を下したことによる業績が思わしくないのですから、何らかの方針転換をする必要があると言えるでしょう。

 

投資会社としての先行きは思わしくないが、携帯通信会社が法人税を払っていれば良いだろう

 ソフトバンクによる投資で “当たり” だったのは『アリババ』ぐらいで、それも「大当たり」でした。ただ、アリババ以外の企業に対する投資で “当たり” と呼べる対象はないと言わざるを得ない状況でしょう。

 半導体の『アーム(ARM)』やアメリカの携帯通信会社『スプリント』に多額の投資をしたものの、「ソフトバンク買収後に業績を成長させた」との評判は聞こえて来ません。また、ユニコーン企業に対する投資についても同様です。

 これらに対する投資が「一定の成果」を上げているなら、ソフトバンク・グループの決算や株主総会において “実績” が誇らしげに何度も発表されることでしょう。

 「ソフトバンクGには伸びる企業を見分ける目がある」と宣伝し、『ビジョン・ファンド』への投資を募る発言が繰り返されているはずです。また、マスコミの孫正義社長の業績に対する称賛は今以上のものになっていると考えられます。

 しかし、そうした報道がないのですから、投資会社としてのソフトバンク・グループは微妙と言わざるを得ません。巨額の赤字計上を理由にした節税へと動くことは容易に想像できます

 

 そのためソフトバンク・Gから法人税を得ることは今後はまず無理でしょう。したがって、国内の携帯通信会社であるソフトバンクから法人税をがっちり確保することが国税局の至上命令となります。

 この部分には「血眼になるだけの価値がある」と言えるのではないでしょうか。