夏の高校野球の中止が決定、新型コロナウイルス感染拡大による影響で生じた問題を解決する見通しを立てることはできず
高野連などが8月10日から予定されていた夏の全国高校野球の中止を決めたと NHK が報道しています。
例年よりも日程が厳しくなるため、通常開催は困難な状況にあります。また、感染のリスクはゼロにはできません。高野連や朝日新聞など主催者が世間からの批判の矢面に立つ覚悟がなければ、開催は難しいでしょう。
高野連などは、ことし8月10日から甲子園球場で予定していた夏の全国高校野球の開催について協議するため、20日午後、オンラインで運営委員会と高野連の理事会を開き、大会の中止を決めました。
高野連は、中止の理由として、地方大会を開催することが難しいことを挙げています。
具体的には、感染リスクを完全になくすことはできないこと、休校や部活動の休止が長期に及ぶため練習が十分ではなく選手のけがが予想されること、それに、夏休みを短縮する動きがある中、地方大会の開催は学業の支障になりかねないことなどとしています。
開催をするには様々なハードルを乗り越える必要がある
夏の全国高校野球選手権を開催することは可能ですが、そのためには乗り越えなければならないハードルは数多く存在します。
- 感染リスクを完全になくすことはできない
- 休校・部活動の休止による練習不足からの怪我の恐れ
- 夏休みの短縮による学業への支障
- 審判員の確保が困難
厄介なのは「全国大会に出場するチームの学業への支障」です。ほとんどのチームは地方大会で敗退しますが、勝ち残るチームほど学業に対する支障が生じるリスクが高くなります。
学生の本分は「学業」ですから、高校野球だけを特別扱いにすることは困難です。そのため、主催者が『正面突破』を決断するだけの “気骨” を見せることができないのであれば、大会中止は止むを得ないと言えるでしょう。
球児のリスクはゼロに等しいが、高野連・指導者・保護者など周囲のリスクが高い
新型コロナウイルスは「高齢者や基礎疾患を持つ人ほど重症化しやすい」という特徴があります。つまり、“プレーをする球児” には新型コロナのリスクはゼロに等しい状況なのです。
そのため、選手にとって「開催」を拒むものはないと言えるでしょう。
しかし、一方でリスクが高い属性の人々も大会には関わっています。高野連の役員、各校の指導者、生徒の保護者や後援会の人々は「高リスク」に入っている可能性が捨て切れません。
大会中の感染リスクを下げるには「高リスクの人々を選手から遠ざけること」が効果的です。
ただ、感染のリスクを「ゼロ」にすることはできません。「ゼロに近づける」ことを目標にし、それを論理的に説明した上で納得した人々だけで大会を運営する形が『現実的な解決策』になります。
審判員と球場運営スタッフの感染リスクを下げることは難しく、割に合わないほどのコスト負担も必要となる
主催者の朝日新聞や高野連は「選手」や「学業」に焦点を当てていますが、最もネックになるのは「審判員の確保」でしょう。
高校野球の公式戦の審判員はボランティアで、本業を別に持っている人がほとんどです。大会主催者と審判員の間には雇用契約はありませんし、開催時期を動かしてしまうと審判団を結成できない事態に陥ってしまうリスクがあるのです。
しかも、2020年夏の大会は「感染症対策」が世間的に要求されることは不可避となっており、これを審判員や運営スタッフにまで適用すると多額の運営費が “追加で” 必要となります。
「試合前のロッカールーム」や「審判員の控え室」はおそらく『三密』が揃っているでしょう。夏の暑い時期に「外気を入れる」とは考えにくく、『暑さ対策』と『三密対策』を両立させることが大会主催者の課題になることは確定的です。
この課題に対する解決案を現実的な予算内で主催者が各地方大会に向けた練習が本格的に始まるまでに提示できれば、夏の甲子園は開催が可能です。しかし、主催者で大きな影響力を持つ朝日新聞は「提言が苦手」ですから、今大会は断念をせざるを得ないのではないでしょうか。