ソフトバンク傘下スプリントの株価が続落、アメリカ10州の司法当局がTモバイルとの合併阻止に向けた訴訟に市場が嫌気

 日経新聞によりますと、ソフトバンク傘下のアメリカ携帯通信会社スプリントの株価が続落しているとのことです。

 理由は「アメリカ10州の司法当局が合併阻止の訴訟を起こしたから」というものです。ニューヨーク州やカリフォルニア州が「低所得者らを保護するため」との理由で提訴に踏み切っており、逆風が強まっていると言わざるを得ないでしょう。

 

 米ニューヨーク州など10の自治体が11日、ソフトバンクグループ(SBG)の子会社で米携帯通信4位のスプリントと同3位のTモバイルUSの合併を差し止めるよう米裁判所に提訴した。携帯大手の合併は消費者の不利益につながると主張している。

 (中略)

 米企業の合併は司法省が競争法の観点から主体的に審査を行うが、州の司法長官も差し止めを求める独立権限をもつ。

 州当局による提訴を受け、11日の米株式市場でスプリント株は前日比6%安で引けた。Tモバイル株も同2%下落した。

 

連邦通信委員会は “条件付き” で両社の合併を承認する流れ

 ソフトバンクにとっての追い風は「連邦通信委員会が合併承認の意向を示していること」でしょう。

 「プリペイド携帯事業の分離」や「地方での通信網の整備」が条件として付随していますが、資金投下を必要とする通信網の整備は “お得意” のサボタージュで何とでもできるからです。

 「通信網の整備は採算性の高いエリアから順次行っている」と主張すれば、当局が経営方針に口出しすることは事実上不可能です。そのため、後から何とでも理由付けができる条件など「存在しないも同然」です。

 したがって、司法省にゴーサインを出させれば、ソフトバンクの思惑に沿った結果が得られると言えるでしょう。

 

「州の司法当局から横槍が入る」というハプニング

 ただ、思わぬところから横槍が入りました。“州の司法当局” が合併差し止めを求めて訴訟を起こしたのです。

 司法省もスプリントとTモバイルの合併に対する審査を行います。こちらは「競争法の観点から懸念が示されている」との状況であり、どちらに転ぶのかは不透明な情勢でした。

 それがニューヨークやカリフォルニアといった「リベラルの牙城」とも言える州の司法当局から「消費者の不利益につながる」との理由で提訴されてしまったのです。

 しかも、記者会見で「低所得者らを保護するため」と宣言しており、収益力強化を目的とした合併を目指すスプリントとTモバイルにとっては面倒な案件が増えることになったと言わざるを得ないでしょう。

 

「訴訟を起こされた以上、合併承認が遅れることは避けられない」との認識で対応策を講じる必要がある

 州の司法当局が合併阻止を求めて訴訟に踏み切ったのですから、「合併承認は当初の予定よりも遅れる」との認識で経営戦略を練り直す必要があるでしょう。

 裁判所が門前払いをしてくれれば、ソフトバンクなどにとっては理想的ですが、その可能性は低いと考えられます。「サービス提供者の絶対数が減少する」ため、市場ではサービス提供事業者の影響力が増すことは明らかです。

 市場の独占や寡占に直結する企業合併は消費者にとってマイナス面が大きくなります。携帯電話が「現代社会の必需品」となっている状況では合併承認がスムーズに得ることは年々難しくなっていると考える必要があります。

 場合によっては「合併不承認」という結果もあり得ることです。「合併しないとやっていけない」との “泣き落とし戦術” は「低所得者の保護が重要」との反論の前には無力だと考えられます。

 

 単体でも「一定の業績」を残している企業が「さらなる成長」を求めた経営統合でない限り、規制がある業界での合併は認められない可能性が高いと言えるのではないでしょうか。