スプリントとTモバイルの合併計画が頓挫?司法省が「承認する公算は低い」との見解を伝えたと WSJ が報じる
ウォール・ストリート・ジャーナルによりますと、ソフトバンク傘下のスプリントがTモバイルと合併する計画に対し、司法省が承認される公算は低いと伝えていたとのことです。
携帯電話会社の数が少なくなるため、通常の合併計画でも承認が得られるかは不透明と言えるでしょう。今回はファーウェイ社(中国)との関係性が懸念事項となっており、この部分が逆風を強める形になっていると考えられます。
ソフトバンクグループ傘下の米携帯電話サービス大手スプリントとTモバイルUSの合併計画を巡り、米司法省のスタッフは、現在の枠組みでは承認される公算は小さいと両社に伝えた。260億ドル(約2兆9000億円)規模の合併計画の行方に不透明感が生じている。関係筋が明らかにした。
公式発表ではなく、「審査の現状が水面下で匂わされた」という状況ですから、事実である保証はありません。しかし、合併承認の公算が大きいとは考えにくい状況です。
ただ、真偽不明の情報であるとは言え、マスコミにニュースとして報じられることはソフトバンクにはマイナスと言わざるを得ないでしょう。
司法省は独禁法関連での懸念を示している
司法省の実務担当者が懸念をしているのは「独禁法関連」でしょう。スプリントとTモバイルが合併すると、アメリカの携帯電話サービス会社の数は3に減少します。
「合併で資金を費やした “Tモバイル主導の新会社” が経営効率を保つことができるか」は懸念事項ですし、携帯会社の数が減少することは消費者の不利益に直結します。そのため、事業計画そのものが懸念点となっているのです。
とは言え、承認審査の結論は出ていません。司法省のスタッフが感じていると報じられている懸念が「結論」に反映されるかは不明と言えるでしょう。この部分はソフトバンク側の「希望」になるはずです。
ファーウェイ問題による影響を受けているため、一筋縄とは行かないだろう
合併承認についての審査は現在進行形であり、スプリントもTモバイルも「報道の内容」を否定するでしょう。しかし、逆風が吹いていることは事実です。
携帯会社の数が「4から3に減少すること」は大きな懸念材料ですし、「3社の内、1社は中国と深い関係にある」と見られているのです。
これでは携帯会社の数は実質的に「2」です。これでは承認が低くなることは止むを得ません。電波帯をオークションで獲得しているとは言え、競合他社が少なくなるほど合併は一筋縄では行かないと思われます。
仮に「合併は承認できない」との結論が当局から出た場合、ソフトバンクはどうするのか
注目なのはスプリントを保有するソフトバンクの出方でしょう。表向きは「スプリントをTモバイルに売却することで合意した」との姿勢を貫いていますが、これが “ご破算” になる可能性は現実にあるのです。
「その可能性は低い」と市場に判断されていれば、合併承認に懸念との報道で株価の下落も限定的になるはずです。ただ、現状は「承認が却下されることはあり得る」との見方を感じさせる下落幅を記録しており、先行きの不安を払拭することはできていません。
業界4位から上り調子のTモバイルは「成長の速度が緩まる」で(合併不承認による)影響は食い止めることはできるでしょう。
しかし、業界3位から4位に転落した立場のスプリントは厳しい逆風にさらされることになってしまいます。「業績を大きく上向かせる経営戦略」が見当たらず、「合併」でスケールメリットを追い求めている実情ですから、行き詰まりが深刻になると予想されるからです。
ソフトバンクが実行中の “スプリント撤退戦” が計画通りに進むのかが注目点と言えるのではないでしょうか。