新型コロナの恐怖を煽ったことで子供たちが予防接種を受けられない悪影響が懸念される本末転倒の事態が現実味を帯び始める

 WHO や UNICEF が「新型コロナウイルスの感染拡大によって定期的な予防接種を行えない子供達に影響が生じる」との懸念を示していると NHK が報じています。

 印象が芳しくない国際団体の警鐘ではありますが、これは日本国内でも既に発生している問題です。

 子供を持つ親が新型コロナに恐怖を感じることは理解できるものの、予防接種ができないことによって生じる子供たちへの影響は新型コロナに感染した場合よりも大きいです。

 したがって、緊急事態宣言が解除された地域に住む保護者の方は「予防接種の予約」をすべきと言えるでしょう。

 

 WHO=世界保健機関とユニセフ=国連児童基金は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、定期的な予防接種を行えず8000万人の子どもたちに影響が出るとする推計を発表し、ウイルスの感染拡大を背景に、ほかの病気にかかることを防ぐ必要があると訴えました。

 

『肺炎球菌ワクチン』や『MRワクチン』の接種率が現に低下している

 新型コロナウイルスが世界中で感染拡大したことで、病院に行きたくても行けない状況が発生し、それによる弊害が生じつつあります。その代表例が予防接種が困難になったことでしょう。

 生まれてから最初に受ける小児用肺炎球菌のワクチンは生後2か月から6か月の間に3回接種することが推奨されていますが、3か月齢での初回の接種率は去年11月生まれが82%、12月生まれは77%、ことし1月生まれは74%と、それ以前に生まれた赤ちゃんと比べて10ポイント余り少なくなっていました。

 (中略)

 はしかや風疹を予防し、満1歳から接種する「MRワクチン」についても、去年12月以降に1歳の誕生日を迎えた子どもの接種率がそれ以前に比べておおむね10ポイント下がりました。

 ワクチンを接種する理由は「重症化を防ぐため」です。未接種でも感染しなければ問題は表面化しませんが、感染した場合は重い後遺症が残るなどの弊害が大き過ぎます。だから、予防接種という形が取られているのです。

 そのため、接種率が大きく下がってしまっている現状は問題視されなければならないと言えるでしょう。

 

院内感染が多発する新型コロナウイルスに恐怖を感じるのは当たり前だが、子供に対する脅威は「ワクチン未接種」の方が大きい

 マスコミが連日に渡って「新型コロナの院内感染がまた発生しました」や「新たに〇人が死亡し、これで累計でX名が亡くなりました」と報じているのですから、恐怖を覚える人が多くなるのは当たり前です。

 ただ、ワクチン接種を見送ることは子供自身と両親・保護者にとってのメリットはありません。

 理由は「肺炎球菌・はしか・風疹など予防接種の対象となっている病気を罹患した時の方が新型コロナに感染した時よりも重症化する(または重い後遺症が残る)から」です。

 新型コロナウイルスで重症化しやすいのは「高齢者」か「持病持ち」です。子供達ではありません。また、ウイルスの排出量は「症状」ではなく「年齢」に比例します。

 したがって、予防接種のために来院することを極端なほど恐れる必要はないと言えるでしょう。

 

『小児科』が予防接種を担当するのだから、予約を上手く活用して子供のリスクを下げるべき

 乳幼児は多くの時間を自宅で過ごしいますが、成長するとともに社会での集団生活をする機会が多くなります。

 集団生活などで外出する頻度が高まると、様々な菌やウイルスに接触する機会が自宅にいる時よりも増加します。これは「外から帰ったら手洗いとうがいを忘れずに」との躾をほとんどの家庭でするはずですから、感覚的にも理解しやすいでしょう。

 つまり、外出した際に本人が気づかない内に感染していることが現実的にあるのです。ちなみに麻疹(はしか)の感染力を群を抜いて高く、R0=13 です。これは新型コロナの5倍以上の数値です。

 ただ、発症を防ぐワクチンが公費で接種できるのですから、機を見計らった上で小児科を受診すべきです。

 「病院内での滞在時間を可能な限り短くする」や「共有部分に触れた後は丁寧な手洗いをする」などの自衛策を施すことで新型コロナに罹患するリスクを引き下げられる訳ですから、ゼロリスクに固執し過ぎないことがポイントになるでしょう。

 

 「新型コロナによる影響で予防接種を受けられずに重い後遺症が残った子供(とそれを嘆き悲しむ両親)」はマスコミの十八番である『お涙頂戴物語』の格好の題材となります。

 “黄色いTシャツ” がトレードマークの某チャリティー番組でスポットを当ててもらえる可能性はありますが、「子供の将来性を潰してしまった」という自責の念は生涯に渡って付いて回ります。我が子に予防接種を受けさせるために勇気を出す時が来ているのではないでしょうか。